勘九郎・七之助がアウェイの明治座で躍動!歌舞伎らしい演目並べ正攻法でお客を圧倒
昼の部は、2人の父方の曽祖父.6代目菊五郎と、母方の曽祖父.5代目福助によって初演された長谷川伸の『一本刀土俵入』。家の芸として自分のものにしている。
とくに勘九郎演じる渡世人が凄い。暴力を内に秘めた怖さと、恩を忘れない律義だけでなく、絶望的な孤独の中にいることまでも感じさせる。幕が閉じた後、彼をとてつもない悲劇が待っているのだろうと想像してしまった。
勘九郎は、夜の部『鎌倉三代記/絹川村閑居の場』の佐々木高綱でも凄みを見せる。座頭としての風格と貫禄が身についてきて頼もしい。若手を育てる立場になっており、菊之助の菊五郎襲名の次は勘三郎襲名だろう。
七之助は鶴屋南北作『お染の七役』で大奮闘。冒頭から立て続けの早替わりで、観客を一気に歌舞伎の世界に引き込ませる。早替わりでは、出てきた瞬間に、別のキャラクターになっているから、見事。この役を、玉三郎から、しっかりと受け継いだ。
歌舞伎はスター主義の演劇だと再確認させたのが明治座の勘九郎・七之助であり、歌舞伎座は、歌舞伎はスター不在では成り立たない演劇だと再確認させた。
(作家・中川右介)