五木寛之 流されゆく日々
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連載10483回 新しい本が出ました <3>
(昨日のつづき) 『哲学に何ができるか』(抄)の内容紹介の続きである。廣松渉さんとの対話を一冊にまとめたこの本は、目次だけ眺めるといかにも難しそうに見えないこともない。 第二章『同時代の哲学』で…
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連載10482回 新しい本が出ました <2>
(昨日のつづき) 廣松渉との共著『哲学に何ができるか』(世界書院)の話の続きである。 この本は朝日出版社から刊行されたあと、かなりたって中公文庫に収録された。解説は笠井潔さんが書いてくれた。文…
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連載10481回 新しい本が出ました <1>
人が書いた本の紹介ばかりしていないで、自分が出した新刊のことを書いてください、と担当編集者に言われた。 ほめるにしても、けなすにしても他人の本については書きやすいのである。それが自分の本となると…
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連載10480回 最近読んだ本の中から <5>
(昨日のつづき) また台風がやってきた。日曜日には鹿児島で講演しなければならない。はたして土曜日の飛行機がちゃんと飛ぶのかどうか気がかりである。 それにしても、地震、津波、台風、豪雨と、なんと…
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連載10479回 最近読んだ本の中から <4>
(昨日のつづき) 『無葬社会』(鵜飼秀徳著/日経BP社)について再び書く。<彷徨う遺体 変わる仏教>という副題のついているこの本は、何度読んでもすこぶる刺激的だ。 団塊の世代という巨大な集団が一…
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連載10478回 最近読んだ本の中から <3>
(昨日のつづき) ふと思い出して、本棚から一冊の本を引っぱりだした。このところ評論めいた固い文章ばかり読んで、頭が乾いた感じだったので、なにか湿り気をあたえたくなってきたのだ。 こういう時には…
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連載10477回 最近読んだ本の中から <2>
(昨日のつづき) アメリカのミステリー・アクション小説を立て続けに4、5冊読んだら、頭がふやけたようになってしまった。バスタブの中でぬる目の湯につかりながら読んだせいかもしれない。 いつの頃か…
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連載10476回 最近読んだ本の中から <1>
今週、読んだ本のなかで、とびきり刺戟的だったのが『サブカルの想像力は資本主義を超えるか』(大澤真幸著/KADOKAWA刊)という長い題名の一冊だった。 根が論理的でない私には難かしすぎる本かも、…
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連載10475回 あの夏を遠く離れて <5>
(昨日のつづき) 私たちは情報はお上から配給されるものだと思っていた。自分で本当の情報を探すなどということは、スパイの仕事だと思っていた。 そして国に都合のいい情報だけを信じて、唯唯諾諾とそれ…
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連載10474回 あの夏を遠く離れて <4>
(昨日のつづき) 格差が問題になっている。もちろん経済的格差についての議論がほとんどだ。一握りの超富裕層と大多数の貧しい大衆、というのが、その図面だが、現実はそれほど単純ではないだろう。 超富…
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連載10473回 あの夏を遠く離れて <3>
(昨日のつづき) 終戦というか敗戦というか、とにかく戦争が終ったのは昭和20年の夏だった。 8月15日が終戦の日とされている。私たち中学生も、その日、ラジオ放送で天皇みずから戦いが終ったことを…
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連載10472回 あの夏を遠く離れて <2>
(昨日のつづき) 山口放送制作の『記憶の澱』というドキュメント番組についての感想の続きである。 この番組を視て、私は年来の自分の主張を、あらためて確信するところがあった。 すなわち「戦争」…
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連載10471回 あの夏を遠く離れて <1>
今年も8月がやってきた。新聞もテレビも雑誌も、ジャーナリズムがこぞって戦争特集・敗戦特集を組むシーズンである。 恒例の“戦後祭り”といった感じだ。 敗戦から七十数年もたつと、記憶も風化してく…
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連載10470回 年齢差七〇歳の対話 <5>
(昨日のつづき) 早稲田の文芸・ジャーナリズム系の学生たちとの対話では、さすがに専門的な質問もでた。なにしろ不勉強な人間なので、彼らに十分な答えを返す余裕はなかったのだが、その中では、翻訳について…
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連載10469回 年齢差七〇歳の対話 <4>
(昨日のつづき) エンターテインメントというのは、読んだり、観たりした後に、なんとなくスカッとした気分になれることが大事らしい。 毎日の生活で疲れ果てているのに、さらに厳しいリアルを突きつけら…
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連載10468回 年齢差七〇歳の対話 <3>
(昨日のつづき) 灘高生からの質問のなかで、ほう、と思ったのは、こんな質問だった。 ――さっきの「時代に対する表現者」という言葉に関係してくるかもしれませんが、かつての小説家には自殺を図った…
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連載10467回 年齢差七〇歳の対話 <2>
(昨日のつづき) 『七〇歳年下の君たちへ』の中には、灘高生たちとの対話のほかに、<「転がる石」として生きる>という第3章がはいっている。 これは早稲田の文化構想学部の学生たちとの対話である。その…
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連載10466回 年齢差七〇歳の対話 <1>
『七〇歳年下の君たちへ』という、変った題名の本を出した。 「七〇歳年下の君たち」とは一体だれのことか、と、不思議に思う読者もいるだろう。版元の新潮社のほうで頭をひねってつけた書名だが、著者本人も苦笑…
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連載10465回 百年人生の行きかた <5>
(昨日のつづき) 長く生きれば、体の衰えを感じるのは当然だ。百年人生といっても、それは医療や社会保障の成長とともに寿命が不自然にのびた結果にすぎない。 平均寿命がのびたからといって、人間の体が…
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連載10463回 百年人生の生きかた <3>
最近、健康情報のなかで最も混乱しているのは、血圧をめぐる論議だろう。 かつては上の血圧は、年齢プラス80、というのが普通だった。これだと50歳の人は130、70歳だと150あたりが普通である。 …