物価高・円安で生活が苦しい日本 増税も検討されているいま、どこに視点を置けばよいか識者に問う #税収最高なぜいま増税

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税収最高!過去最高税収を更新する中でなぜ増税?

 年収の壁の見直しや高校の授業料無償化など、国民にとってありがたい改革が進んでいる。実現が待ち遠しいところだが、その一方で防衛費を名目にした増税が行われようとしているのをご存じだろうか。

 物価高や円安により苦しい生活を余儀なくされている今、あえて増税する必要性はあるのか。また増税以外の選択肢は考えられないのか。明治天皇の玄孫(やしゃご)で、政治評論家、作家、実業家として知られる竹田恒泰氏に聞いた。

家計の視点で実施できることもあるのでは?

 2025年も食品の値上げラッシュは収まりそうにない。

 帝国データバンクの調査によると、主要な食品メーカー195社が今年1月から4月までに値上げを予定する食品は4か月連続で1000品目を超え、6000品目に達する。通年では前年の値上げ品目数、1万2520品目を上回る見通し。国民の生活は苦しくなるばかりだ。

 そんな状況下、防衛費の財源を確保するための「防衛増税」が政府・与党によって計画されている。

 法人税、所得税、たばこ税を財源とし、法人税、たばこ税は2026年4月から、所得税は2027年1月から増税が実施される方針で、2027年度以降不足する防衛予算1兆円余りを確保しようとしている。はたしてその判断は正しいといえるのだろうか。

「防衛力の強化には異論はありません。国防にお金を投じるのは不可欠だと思います。ただし、物価高や円安で国民が苦しい生活を送っている今、あえて増税しようとするのには賛同できません。防衛費を確保するための財源として、いきなり増税という手段をとるのはいかがなものか。国の財政を見直すなど、その前にやれることに目を向けて実行すべきです」(竹田恒泰氏。以下同)

 家計でいえば財政の見直しは節約にあたる。防衛費の不足に対し、まず節約して財源確保に取り組むのがセオリーと竹田氏は指摘する。

「財政の見直しで大切なのが優先順位です。国の予算の中には、重要性や緊急性の低いものも多く見られます。国防のための防衛費は重要性かつ緊急性が高く、第一に検討しなければなりません。ですから、重要性や緊急性の低い事柄に備えて確保する予算を見直すこと。これはおかしいという予算はひとつやふたつではない。優先度の低いものを見直し、浮いた予算を優先度の高い防衛費の財源に回せばいいわけです」

 財政の見直しだけでは事足りないとなったら、次に国債の発行が考えられるという。家計でいえば金融機関からの借金で補うことを指す。

安倍政権以降、防衛費を建設国債で賄うことが提唱されています。道路や橋梁などのインフラ整備に支出するように、自衛隊の施設整備費や艦船の建造費などにあてられる仕組みです。なおかつ建設国債であれば使い勝手もいい。10年、20年といったスパンで防衛費の予算を確保でき、長期的な投資効果につながります」

 国債を発行しても立ち行かなかったときは万事休す。いよいよ増税ということになるそうだ。

「こうした議論の段階を経ず、防衛費の財源だからといきなり増税を選ぶのは国民無視の横暴と言わざるを得ません。増税はあくまでも最終手段。順番が逆なわけです」

日本の税収が4年連続で史上最高値を更新していることを国民は知らない

 一方、ここに驚きのデータがある。

 弊紙が今年に行ったインターネットによる調査で、日本の税収が4年連続で史上最高値を更新しているという事実に対し、知っているか否かを問うたものだ。結果は1300余りのサンプルの約7割が「知らなかった」「詳細は知らなかった」と回答している。

「最高税収の連続は企業の好業績などを背景としています。その事実を多くの人が知らないために、防衛増税を仕方なく受け入れる流れに陥ってしまうのかもしれません。事実を認識すれば、税収増を続ける中での増税に疑問を感じるはずです」

増税のタイミングは適切なのか?

 では、今のタイミングで増税が実行された場合、国民の生活や日本経済にどのような悪影響を及ぼすのか。竹田氏は次のように予測する。

「増税というのは消費者への心理的な影響が一番大きいと思います。物価高や円安により家計のやりくりが大変で、自由に使えるお金は減っている。そこに増税となれば使えるお金をさらに減らすため、財布の紐がもっときつくなる。消費の急激な抑制を招き日本のGDPはガクンと下がるでしょう。すなわちインフレや賃上げで好転し始めている日本経済の勢いに水を差してしまう。今、増税するのは景気を冷え込ませ、一気にもとの不況に戻ることになりかねません」

 防衛財源のひとつに挙げられているたばこ税。増税のターゲットにされやすいたばこ税についても一家言を述べる。

税金は取りやすいところから取るのが通例です。たばこ税なら増税しても反対の声は少ないだろうと考えているわけです。しかし、そうした見方ができたのは過去の話になりつつあります。受動喫煙を防止する法的なルールにより、近年は各所で分煙化の徹底が見られる。たばこを吸わない非喫煙者が、自分の意志に反して受動喫煙せざるを得ない場面はあきらかに減っている。こうした環境において、たばこ税を昔と変わらず迷惑税的な意味合いで扱い、増税を正当化するのは的外れな気がしますね」

歴史から学ぶことも必ずある。

 竹田氏は明治天皇の玄孫にあたる。

 日本最古の歴史書「古事記」「日本書記」を読み解き、そこに記された税金に関するエピソードを紹介してくれた。

「第十六天皇、仁徳天皇の逸話です。仁徳天皇は庶民のことを第一に考えた慈悲深い人物でした。あるとき、高台に立って町の様子を眺めていたら、炊事の時間にもかかわらず民家から煙が上がっていないことに気づきます。庶民が生活に困窮しているのを悟った仁徳天皇は、課していた税金を3年間免除。結果、民家から炊事の煙が上がるようになって安堵したものの、道半ばと判断してさらに3年間の税免除を決めます。おかげで人々は生活を完全に立て直し、税金を納めて経済復興が成し遂げられました。その間、自らは庶民の苦悩を分かち合うべく倹約に努め、住まいの宮殿が壊れても修理せず常に雨漏りするほどだった。そんな天皇の姿を人々は知っていたのでしょう。6年経過後、誰から促されるわけでもなく天皇のもとへ出向き、傷んだ宮殿を新築したとされているんです」

 ひるがえって、現在の政治はどうだろうか。人々が生活苦にあえぐ中、増税ありきの姿勢をとるようでは、国民のことを第一に考えているとは言い難いだろう。

「40代50代のビジネスマンの方々が、一番苦しい思いをされているのではないでしょうか。日本社会を動かしているのはミドル世代です。中高年の皆さんの頑張り次第で日本経済は良くもなれば悪くもなります。税制やその他制度の改正も、ミドル世代が元気になるような適切な政策を打つべきですね」

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■協力:BATジャパン

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