全ゲノム解析で、がんや心血管系疾患、認知機能障害などの疾患に備える
日本初、6500項目の全ゲノム遺伝子検査キット「GeneLife WGS」
人生100年時代の今、日本の遺伝子検査のリーディングカンパニーであるジェネシスヘルスケアでは8月に日本初の全ゲノムシーケンシング遺伝子検査キット「GeneLife WGS」を販売開始したが、早くも話題を集めているという。その人気の秘密とはなにか。注目の遺伝子検査キットについて取材してみた。
人間のゲノム(遺伝子情報)を解読する国際プロジェクト「ヒトゲノムプロジェクト」をご存知だろうか? 30億ドルもの予算と13年の歳月を費やし、2003年に解読完了が宣言された。しかし当時の技術では解読できない部分が約8%残されていた。
今年3月、米国などのチームがこの空白部分を含めた完全解読に成功、医療の一層の進化に期待が高まっている。がんをはじめとする多くの疾病は、遺伝と環境、両方の要因が関係することが知られており、自身の遺伝子情報に潜む疾病リスクを知ることができれば、その対処もより正確になる。
「GeneLife WGS」は同社が長年培ってきた最先端の全ゲノムシーケンシング技術に基づき、約6200の疾患項目や約360の予防・ウェルネス項目など6500項目以上を解析してくれるもの。国内の自社研究所で130万人以上の累計遺伝子検査実績を誇る同社だけに安心・安全な検査キットだ。疾患項目では、ACMG(米国臨床遺伝・ゲノム学会)が被験者に結果を開示すべきであると提示した62の項目と、「ClinVar(クリンバー)」(米国国立生物工学情報センターのヒトゲノムの多様性と関連する疾患のデータベース)に登録されている6,130以上の疾患項目の解析がカバーされている。
これを使うことで利用者は遺伝子の解析結果から、胃がん、大腸がん、肺がん、膵臓がん、骨肉腫、メラノーマ、卵巣がん、前立腺がん、肝細胞がん、食道がんなどの遺伝性がん、心筋梗塞、高血圧症、家族性高コレステロール血症、動脈瘤などの心血管系疾患、更に、アルツハイマー病や認知機能障害、糖尿病、パーキンソン認知症症候群などに対する自身の罹患リスクを知ることができるのだ。
大腸がん、肺がん、胃がんなど日本人男性の65%、女性の50%が一生のうちにがんと診断されるという今、自分ががんにかかりやすい体質かどうかを知っているのと知らないのとでは大きな差になるのはいうまでもない。誰もが健康長寿を望む現代にあって、遺伝子の解析結果から様々な疾病に対する自身の健康リスクや体質を知ることができるメリットは計り知れないものがある。
検査は自宅で簡単、唾液を採取するだけ
検査の方法はいたって簡単だ。申し込むと送られてくる検査キットに同梱の採取具で唾液を採取して送るだけ。結果は検体が到着してから6~8週間でアプリ(GeneLife3.0アプリ)限定で閲覧することができ、同アプリを介してPDFをダウンロードすることも可能だ。
さらに、遺伝的な疾患リスクの結果を踏まえて提携クリニックの医療従事者とのスマホでのオンラインカウンセリング(15分間・追加でカウンセリングを受けたい場合は別途カウンセリング料が必要)を提供してくれるというのも「GeneLife WGS」ならではのサービスだ。
約15万円で安心を買うと考えれば価値がある
ちなみに価格は14万9990円(税込)。この金額を聞いて中には購入をためらってしまう人がいるかもしれないが、健康は何物にも代えがたい貴重なもの。
なかでも、がんは治療が長期にわたる場合が多く、医療費も我々が予想している以上に高額なのが現状だ。
例えばがん患者の20%を占める家族性がんは進行が速いため発見が遅れ、治療に数百万円がかかるケースがあるが、全ゲノム解析なら210項目のがんのリスクが分かる上に予防につなげられる。
一生病気と付き合って不便な生活を強いられることにもなりかねないが、そのリスクヘッジとして対策を事前に打てることを考えれば、14万9990円は自分や家族の健康に対する必要不可欠な投資といえるのではないだろうか。
多様性のある社会づくりに貢献
今回の「GeneLife WGS」発売の意義に関して同社取締役副会長(共同創業者)の佐藤バラン伊里さんは、「遺伝子を調べることによって、一人一人が持って生まれた設計図から出てくる特徴を知ることができます。そして、それが病気の早期診断につながって医師との信頼関係の軸がつくれ、あとは科学や医学を信じましょうということになります。その意味で『GeneLife WGS』は人生100年時代の今こそ必要な、医師とのコミュニケーションが図れる気づきのツールだと考えていますし、私たちがこれを開発した意義はそこにあると思っています」と説明する。
さらに、佐藤副会長は一人一人が自分の疾患リスクを知って健康づくりに役立てることもさることながら「GeneLife WGS」を通じて「多様性のある社会づくりに貢献したい」との熱き思いも強調する。
「『GeneLife WGS』が広く普及することで、これまで診断のつかない疾病で苦しんでいた人たちも遺伝子の情報を得ることで医師が踏み込んで診断できるようになり、それが治療に結びつく可能性が高くなりますし、また、遺伝子のことを多くの人が知ることで何らかの障害を生まれ持っている人がいても、それをみんなで受け入れる社会が実現できるのではないかと思っています。人種や性別、年齢は関係なく、誰もが生命を尊重する社会こそ、わが社が目指している『多様性のある社会』にほかならないのです」
目指すは「ゲノム創薬」の開発
今回「GeneLife WGS」という、まさに画期的な遺伝子検査キットを世に送り出したジェネシスヘルスケアだが、もちろんこれで満足しているわけではない。同社が目指す次のステップはゲノム情報のデータベースを活用して病気の原因になる遺伝子やその遺伝子が作るタンパク質の情報を調べ、そのタンパク質に結合する分子や抗体から作る「ゲノム創薬」の開発だ。
「高齢化社会がますます進展している日本では就業期間を長くしないと経済が回らなくなってしまいます。その中で100歳まで生きようという志が高い人は50歳でも60歳でもいいので、まずは検査を受けていただいて自分自身の健康ケアをしていただきたいですね。そして、がんや生活習慣病の延長で発症する重篤な疾患に効果のあるゲノム創薬を開発することで、1人でも多くの方を助けたいと思っています」(佐藤副会長)
同社のこれからに大いに期待できそうだ。
■外部リンク ジェネシスヘルスケア