五木寛之 流されゆく日々
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連載11453回 「新老人」のすすめ <5>
(昨日のつづき) ゴルバチョフ氏が亡くなった。 享年91というから、ほとんど私と同世代である。90の壁は越えてからが大変らしい。 ゴルビー氏とは、一度だけ会ったことがある。彼が公式に訪日し…
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連載11452回 「新老人」のすすめ <4>
(昨日のつづき) <新老人>という言葉を提案したいと思う。 かつての<新人類>と同じように、ある抵抗感を社会にあたえながら登場する新しいグループである。 それは従来の高齢者、老人のイメージと…
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連載11451回 「新老人」のすすめ <3>
(昨日のつづき) 以前、大型バイクで深夜の街を疾走する老人の話を小説に書いたことがある。 それはある意味で、当時の私の<夢>でもあった。 私は比較的早くに運転免許を返納したが、そのことを後…
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連載11450回 「新老人」のすすめ <2>
(昨日のつづき) <新人類>という語を辞書で引いてみる。 「従来なかった新しい感性や価値観を持つ若い世代を異人種のようにいう語」というのが『広辞苑』だ。「異人種のようにいう」という表現に当時の社会…
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連載11449回 「新老人」のすすめ <1>
かつて、<新人類>という言葉がもてはやされたことがあった。 たぶん1980年代後半に登場した新語だろう。これまでと全然ちがう発想と価値観をもつ新しい世代を、揶揄的にそう呼んだのが流行語として定着…
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連載11448回 事実と真実の間に <5>
(昨日のつづき) 写真は事実を写すが、必ずしも真実を写さない。写真は表現であり、アートである。 一枚の写真が国家的プロパガンダの欺瞞を鋭くあばき出すこともある。また、その反対のこともある。 …
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連載11447回 事実と真実の間に <4>
(昨日のつづき) 事実をそのまま鵜呑みにするわけにはいかない。まれに起こった例外的な事実を、常時それが発生しているかのように思い込む危険があるからだ。 写真は目下のところ、事実を伝える最大のメ…
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連載11446回 事実と真実の間に <3>
(昨日のつづき) 事実は具体的である。それに対して真実は抽象的かといえば、必ずしもそうではない。 物事には例外というものがある。偶発的におこる事件もある。それだけをとりあげて一般化するわけには…
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連載11445回 事実と真実の間に <2>
(昨日のつづき) 私が大学生だった頃、といえば1950年代の半ばである。 社会主義リアリズムから一転してスターリン批判へ、という激動の季節だった。当時の文学青年のあいだで、さかんに論議されたの…
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連載11444回 事実と真実の間に <1>
先週のこの欄に、私の記憶ちがいがあって間違った部分があった。『戦争を知らない子供たち』という往年のヒット曲を、「フォーククルセダーズ」の歌のように書いてしまったのだ。 もちろんこれは間違いで、作…
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連載11443回 戦争を知らない大人たち <5>
(昨日のつづき) 戦争といえば激しい拒否感をおぼえるのに、合戦といえば、なんとなく風情のある雅びな感じがするのはなぜだろう。 しかし、合戦とは戦争なのだ。源平の頃の合戦にはじまって、戦国時代は…
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連載11442回 戦争を知らない大人たち <4>
(昨日のつづき) 戦争。 この言葉を発音してみて、私自身それほどの違和感も、嫌悪感も、不安感もおぼえないことに驚く。 <戦>とは戦争のことである。戦争とは地図の上でのゲームではない。戦争をす…
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連載11441回 戦争を知らない大人たち <3>
(昨日のつづき) まず訂正と、お詫びをしなければならない。 昨日のこの欄で、『戦争を知らない子供たち』を、フォーク・クルセダーズのヒット曲のような書き方をしたのは、私の完全な思い違いだった。 …
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連載11440回 戦争を知らない大人たち <2>
(昨日のつづき) 『戦争を知らない子供たち』という歌が大流行した時代があった。ジローズのヒットソングである。 若い頃、その作詞をした北山修さんと、NHKで対談をしたことがあった。 北山さんは…
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連載11439回 戦争を知らない大人たち <1>
甲子園の熱闘さなかである。高校野球で、ホームランが量産される時代になったのは驚きだ。 海の向うでは大谷選手の記録から目が離せない。 そんななかで、毎年、8月になると<戦争>に関する記事がメデ…
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連載11438回 力強く歌え、短調を! <4>
(前回のつづき) 『大河の一滴』の合唱曲を聴く機会は、これまでにたびたびあった。 そのつど、最初のイントロのピアノ、そして<人はみな――>という歌い出しを聞いて、 「あ、これは駄目だ」 と…
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連載11437回 力強く歌え、短調を! <3>
(昨日のつづき) 加古隆さんの曲である『大河の一滴』は、ときおりどこかの合唱団で演奏されることがある。 客席でそれを聴いたり、録音したCDを送っていただいて拝聴したりするたびに、常に深い違和感…
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連載11436回 力強く歌え、短調を! <2>
(昨日のつづき) 五十嵐一さんは、東方文明に対して深い共感と造詣を示した学者だった。ことに音楽や歌に関する発言には、目からウロコの指摘が少くない。 かつてアーサー・キットが歌って世界的なヒット…
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連載11435回 力強く歌え、短調を! <1>
音楽家としてプロ中のプロである三枝成彰さんが連載をされている紙面に、歌の話を書くのは気恥かしいが、ふだん思っていることを少し書いてみようと思う。笑って読みとばしていただきたい。 『大河の一滴』とい…
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連載11434回 身体は世界に連動するか <5>
(昨日のつづき) 私の偏頭痛のきっかけが気圧に関係していたことについて、あらためて考える。 よく低気圧のときに具合いが悪い、という話を聞くが、それは誤解ではないかと思う。 高気圧のときに活…