五木寛之 流されゆく日々
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連載10687回 『万葉集』とわたし <5>
(昨日のつづき) 歌垣にしても、挽歌にしても、一体どんなメロディーでうたわれたのだろうか。 私は『万葉集』を、戦時中の悪用から解放して、真に私たち日本人の貴重な遺産として正しく受け継ぎたいと思…
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連載10686回 『万葉集』とわたし <4>
(昨日のつづき) 何年か前、中西進先生からおすすめを受けて、富山で『万葉集』について話をしたことがあった。越中富山は大伴家持の故地である。私も一時期、北陸に住んだことがあったが、家持については何も…
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連載10685回 『万葉集』とわたし <3>
(昨日のつづき) 戦争の時代の『万葉集』は、ある意味で国民の聖典であったと言っても間違いではないだろう。 『海ゆかば』や『み民われ』の歌だけでなく、万葉の中の代表的な歌の一つや二つは、誰でもが知…
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連載10684回 『万葉集』とわたし <2>
(昨日のつづき) 調べてみると、当時、私たちがなにげなくうたっていた歌にも、いろんな種類があったことがわかる。 NHKで放送される<国民歌謡>というのがあった。『愛国行進曲』や『暁に祈る』など…
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連載10683回 『万葉集』とわたし <1>
書店にいくと、万葉集関係の本が何冊も並んでいる。 令和という新しい元号のブームは一段落ついたようだが、それに関連する様々な資料や研究、解説などは、根強く売れているらしい。 恥ずかしながら私も…
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連載10682回 モノが捨てられない <5>
(昨日のつづき) 身辺を整理して、スッキリした暮しをしたいとは思う。しかし、それができないのは、結局、いまの雑然たるモノの集積の中にいるのが居心地がいいからではあるまいか。 捨てたい、と思うの…
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連載10680回 モノが捨てられない <3>
(昨日のつづき) 毎度おなじ話題をとりあげるので申訳ないが、捨てられないモノの筆頭が靴である。 たぶん同じような悩みを抱えていらっしゃる方も多いことだろう。 靴は私にとっては単なるファッシ…
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連載10679回 モノが捨てられない <2>
(昨日のつづき) ヨリシロというのは、<依代>とも書き、<憑代>とも書く。 一般に神や霊が乗り移るモノ、またはスピリチュアルな世界への媒体としてのモノのことをいう。巫女さんなど、あの世とこの世…
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連載10678回 モノが捨てられない <1>
断捨離というのが大流行した。最近ではアメリカを中心に、コンマリ・ブームとかが巻きおこっているらしい。これも<捨てる思想>の流れだろう。 捨てる、といっても、いろいろある。平安から鎌倉時代にかけて…
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連載10677回 どっちが本当かな? <5>
(昨日のつづき) いろんなレポートや論文などに、よく引用されるのが<統計>である。 政府の政策や官庁の施策なども、統計がその土台になっているようだ。 しかし、この統計というやつが、それほど…
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連載10676回 どっちが本当かな? <4>
(昨日のつづき) いわゆる常識というやつが次々と崩れていく。 科学は日進月歩だから当然かもしれない。しかし、子供の頃からずっと常識として信じこまされてきた事が、こんなに軽々と否定され、打ち捨て…
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連載10675回 どっちが本当かな? <3>
(昨日のつづき) 世の中がこれほど食べることに熱中している時代はなかったように思う。 もちろん私が子供の頃は、戦争の時代だから、食べる自由はあまりなかった。米は配給制だったし、砂糖などなかなか…
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連載10674回 どっちが本当かな? <2>
(昨日のつづき) 最近、いつのまにか食事の回数が減ってしまった。一日一食プラス間食といった感じである。 もう何度も繰り返し書いたと思うが、何十年も前から言い続けてきたことがある。 10代は…
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連載10673回 どっちが本当かな? <1>
歯は大事である。私の友人、知人でも、歯が丈夫な人は、おおむね元気で長生きする人が多い。 「せっせと歯磨きしてるんだが、どうも効果がなくてね」 という声をあちこちで聞く。私も歯は決して丈夫ではな…
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連載10672回 しなやかな二枚舌 <5>
(昨日のつづき) この問題をめぐって、感じないではいられないのは<他人ごとではない>という自戒の念だ。 愚かだったのは戦時中の知識人やアーチストたちばかりではなかった。私たち同時代に生きた者の…
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連載10671回 しなやかな二枚舌 <4>
(昨日のつづき) この特集の冒頭にあるように、<権力礼賛の曲を書く一方、そこに抵抗の意志を込め>ることは、はたして可能なのだろうか。 もし可能だとすれば、それはどのような形で表現されるのか。ふ…
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連載10670回 しなやかな二枚舌 <3>
(昨日のつづき) 秀逸なテレビ・ドキュメント番組『レニングラード・女神が奏でた交響曲』のなかで、旧ソ連時代にショスタコーヴィチがはたした役割りと功績について、小林氏はさらに亀山氏独自の発想である<…
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連載10668回 しなやかな二枚舌 <1>
戦時中の音楽家には、さまざまな天才たちがいた。古賀政男がそうだし、信時潔もそうだった。作詞家としての北原白秋、西條八十など多くの才能ある詩人たちもいた。 彼らの戦時中の作品を一望すると、目をおお…
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連載10667回 令和もまた右往左往 <5>
(昨日のつづき) 明日は金沢へいく。北国新聞の創刊125周年記念の講演会があるのだ。 午前中の北陸新幹線に乗るので、早く起きなければならない。昨夜、ゲラ直しで朝の8時過ぎまで起きていたので、睡…
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連載10666回 令和もまた右往左往 <4>
(昨日のつづき) きょうの日刊ゲンダイに刺戟的な記事がのっている。(6月5日発行・6日付紙面)の《長生きする読書術》というコラムだ。 これは新刊のコンパクトな紹介記事で、その時その時の旬の本を…