五木寛之 流されゆく日々
-
連載10301回 関東の寺々こぼれ話 <4>
(昨日のつづき) 『男はつらいよ』は、テレビでくり返し放映されているが、相変らず人気があるようだ。『百寺巡礼』の関東篇で柴又を訪れたときも、観光客で大にぎわいだった。 車寅次郎ことトラさんは、ホ…
-
連載10300回 関東の寺々こぼれ話 <3>
(昨日のつづき) 増上寺の話のつづきである。 浄土宗というのは、もともときわめて庶民的な宗派である。いや、あったというべきか。 比叡山というのは、天台の聖地であるというより、当時の最高の綜…
-
連載10299回 関東の寺々こぼれ話 <2>
(昨日のつづき) 私自身、正直な話、これまで浅草寺の宗派が何宗なのかよく知らなかった。 浅草寺はもともと天台系の寺である。それがどういういきさつかは知らないが、戦後独立して、<聖観音宗>となっ…
-
連載10298回 関東の寺々こぼれ話 <1>
きょうは都内のホテルで講演をすることになっている。 いま朝日放送BSで放映中の『百寺巡礼』にまつわる雑談をする予定だ。 旅行代理店のHISが各地の寺を巡るツアーを行っていて、今回が関東篇。 …
-
連載10297回 メタボが長生きの真偽 <4>
(昨日のつづき) 小肥りのほうが長生きするかどうか、まだはっきりした結論はでていないようだ。 しかし、手術とか、その他のショックに対応するためには、ある程度の体力が必要なことはわかる。メタボに…
-
連載10296回 メタボが長生きの真偽 <3>
(昨日のつづき) きょうの日刊ゲンダイの28面には、《世界中で肥満が爆発的に増加する》という11段の大きな記事がのっていた。<3人に1人が太り過ぎ>という小見出しに続いて<6つの理由>があげられて…
-
連載10295回 メタボが長生きの真偽 <2>
(昨日のつづき) こういう新聞の記事を読んで、たちまちそれまでの常識がくつがえるかといえば、そうでもない。健康情報というやつは、あえて言えば百人百説なのである。 医学界で権威とみなされるアメリ…
-
連載10294回 メタボが長生きの真偽 <1>
きょうの毎日新聞(2017・11・19)を読んでいて、気になる記事が二つあった。 一つは1面左上段の囲み記事である。〈フレイル要介護リスク2倍〉〈都調査 メタボより影響大〉と、見出しもかなり大き…
-
連載10293回 「マサカの時代」の行方 <5>
(昨日のつづき) 私たち旧世代は、さまざまな「マサカ」を体験してきた。年表や資料で知っているのとはちがう。実体験と研究の差は、決定的に異なるのだ。 歴史を学ぶことは大事だ。人は過去を知ることで…
-
連載10292回 「マサカの時代」の行方 <4>
(昨日のつづき) 中国が北朝鮮に使節を派遣するという。大会の後に事後報告使を送るのがきまりになっていたそうだから、別に驚くことではない。 しかし、なんとなく周囲の期待は、トランプ訪中以後の中国…
-
連載10291回 「マサカの時代」の行方 <3>
(昨日のつづき) 癌を告知された人の最初の反応は、「マサカ!」だろうと思う。「マサカ自分が癌に」というのが自然の反応だ。 最初は告げられた事実に実感がなく、ただ呆然と立ちすくむだけではあるまい…
-
連載10290回 「マサカの時代」の行方 <2>
(昨日のつづき) 人力が馬力に変り、蒸気機関が石油内燃機関に変って、いままた大きなエネルギーの変換期にさしかかっている。 電気エネルギーの時代は、すでに汽車が電車に変った時点ではじまっていた。…
-
連載10289回 「マサカの時代」の行方 <1>
東京の街を歩くたびに、なにか幻を見ているのではないか、と、ふと思うことがある。 右を見ても、左を見ても、巨大なビルが次々と建設中なのだ。 それも半端なビルではない。ガラスと軽金属張りの直線的…
-
連載10288回 「孤独のすすめ」補稿 <9>
(昨日のつづき) 震災のあと、絆という言葉がさかんに言われた。たしかに荒廃した社会に必要なのは、人びとの結びつきである。 相互扶助の精神こそ、新しい自立の要だったにちがいない。しかし、自立とい…
-
連載10287回 「孤独のすすめ」補稿 <8>
(昨日のつづき) 老人のユーモアというのは貴重なものである。それを発するほうにも、また受けるほうにも大きな価値があるのだ。 以前、沖縄にいったことがあった。そこで村の100歳ちかい長寿者をたず…
-
連載10286回 「孤独のすすめ」補稿 <7>
(昨日のつづき) 老いというのは、人間だれでも受け入れなければならない宿命である。 老いについて、最近さまざまな提言が目立ってきた。スーパー老人、などという言葉もマスコミで目にすることが多い。…
-
連載10285回 「孤独のすすめ」補稿 <6>
(昨日のつづき) モノはしょせんモノに過ぎない。 とはいうものの、そのモノにまつわる記憶は捨てがたい財産である。高齢者にとって絶対の資産は、はたして金銭だろうか。それとも不動産だろうか。 …
-
連載10284回 「孤独のすすめ」補稿 <5>
(昨日のつづき) <断捨離>という言葉が一時、大流行したことがあった。 要するに不要なものを捨てようというすすめである。これが大きな反響を呼んだのは、人びとがモノに埋没してウンザリしているからだ…
-
連載10283回 「孤独のすすめ」補稿 <4>
(昨日のつづき) 『孤独のすすめ』の終りのほうに、この小冊子には、いささかふさわしくない提言が二つ三つ述べてある。 そもそも政治や経済について全く無知な私が、国の将来について語ったりする資格はな…
-
連載10282回 「孤独のすすめ」補稿 <3>
(昨日のつづき) 新書『孤独のすすめ』の第1章に、「諦める」という文章がある。 ふつう「諦める」といえば、物事を放棄する、手放す、もう駄目だと考える、といった状況を言うようだ。しかし、辞書にも…