五木寛之 流されゆく日々
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連載11419回 言葉の持つ力について <4>
(昨日のつづき) アメリカを中心とする連合国軍と戦っているあいだ、国内で英語が忌避されたのは周知の通りである。 野球のボール、ストライクさえ日本語に直されたのだから、あとは推して知るべしだ。陸…
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連載11418回 言葉の持つ力について <3>
(昨日のつづき) 言葉には神秘的な力がある、と古くから日本人は考えてきた。 <言霊>というのがそれである。<言霊のさきわう国>などという文句もあった。 私は必ずしも古代の思想に共感する立場で…
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連載11417回 言葉の持つ力について <2>
(昨日のつづき) 文学賞の選評で<女流作家>という言葉をつかって注意されたのは、数年前のことだ。 『源氏物語』の昔から、女性の作家はめずらしくはない。あえて<女性>を強調する必要はないでしょう、…
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連載11416回 言葉の持つ力について <1>
安倍元首相が凶弾に倒れた報道の激震さめやらぬ中、数日前から発生したギックリ腰でトイレにも行けぬ有様。生まれてはじめて尿瓶というものの有難さを知った。 ベッドに寝たままテレビ各局をサーフィンする。…
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連載11415回 私の中の満州残影 <5>
(昨日のつづき) 私の机の上に、半ば錆びかかった1箇のペーパーウエイトがある。10センチほどの棒のような金属である。 よく見ると、それは<特急あじあ>号の機関車のミニチュアであることがわかる。…
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連載11414回 私の中の満州残影 <4>
(昨日のつづき) 満州に開拓民として入植したのは、日本人だけではない。ロシア人も多く満州に棲みついている。 数年前に岩波ホールで、満州に入植したロシア人たちの生活を記録映画のかたちで制作したも…
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連載11413回 私の中の満州残影 <3>
(昨日のつづき) 読みはじめてから1週間、まだ『満洲国グランドホテル』を読み終えていない。 そもそもこの本は、当世流行の速読、倍速読みなどはとうてい無理な一冊なのだ。丁寧に読んでいけばひと月か…
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連載11412回 私の中の満州残影 <2>
(昨日のつづき) 戦時中、私の叔父ふたりが満州にいた。一人は撫順、もう一人は大連だったと思う。ほとんど交流はなかったが、戦後、引揚げてきて東洋高圧に勤めたらしいから、その系統のコンツェルンだったの…
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連載11411回 私の中の満州残影 <1>
いま『満洲国グランドホテル』という本(平山周吉著/芸術新聞社刊)を読んでいる。 まだ3分の1ほど読み終えたところなので、まとまった感想は述べられないが、満州フェチの私にとっては久々に出会った面白…
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連載11410回 ボケの効用について <5>
(昨日のつづき) 以前、講演の途中で、引用しようとした人物の名前が急に思い出せなくなって困ったことがあった。 『青い鳥』の作者のメーテルリンクの名前である。生まれから育ち、そして生涯の経歴までく…
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連載11409回 ボケの効用について <4>
(昨日のつづき) 人は生まれた時からすでに認知症なのだ、というのが、私の人に言わない考え方である。 年をとって認知症になるのではない。成長するということは、何かを少しずつ失うことだ、と思う。 …
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連載11408回 ボケの効用について <3>
(昨日のつづき) 前にも書いたような気がするが、もういちど書く。私にとって、それだけ強く記憶に残っているエピソードだからだ。 私の知人の郷里に、老人ホームがあり、高齢の人たちが暮している。その…
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連載11407回 ボケの効用について <2>
(昨日のつづき) 『東大教授、若年性アルツハイマーになる』は、ご本人とその夫人が、ともにキリスト者であることが大きな影響をあたえていることを感じた。強い信仰というのではなく、敬虔な信仰が全編を通じて…
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連載11406回 ボケの効用について <1>
人間、高齢化がすすむと、当然のことながら、体が衰えてくる。 それとともに、いわゆる身体機能だけでなく、精神面での衰えもいちじるしい。俗にいうボケの始まりである。 <痴呆>とか<ボケ>という言い…
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連載11405回 高齢化時代の光と闇 <5>
(昨日のつづき) 先日、せまい階段を慎重に気づかいながら降りていたとき、最後の2、3段というところで足が滑って引っくり返ってしまった。 子供の頃から妙に転び方が上手な子だったので、高齢に達して…
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連載11404回 高齢化時代の光と闇 <4>
(昨日のつづき) <高齢化時代の光と闇>などというタイトルをつけながら、暗い話ばかりになってしまった。 しかし今の時代に高齢者として生きることに、どんな光があるのだろうか。 高齢者の大半は、…
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連載11403回 高齢化時代の光と闇 <3>
(昨日のつづき) かつて「3K」といえば、「キツい」「汚い」「危険」などという状況の頭文字だった。 いまや「3K」とは、「体」と「金」と「心」の3つだといわれる。 言いかえれば「健康」「経…
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連載11402回 高齢化時代の光と闇 <2>
(昨日のつづき) 毎朝の新聞で目につくのは、なんといっても巨大広告である。 昔は、紙面の下のほうの5段の広告でも目をみはったものだった。新刊が5段で告知されると、天下をとったような錯覚におちい…
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連載11401回 高齢化時代の光と闇 <1>
百歳人生だの、高齢化時代だのと簡単に言うが、実態は悲惨なものである。長生きするということは厄介なことなのだ。 夜、なんとなく胃がもたれると思ったら、突然、酸っぱいものが喉元からこみあげてきた。 …
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連載11400回 新聞落ち穂ひろい <5>
(昨日のつづき) 「落ち穂ひろい」とは、当然のことながら<収穫したあとの畠に残された落ち穂を拾い集める作業のこと>である。 転じて比喩的に<いったん選び残したものの中から、役立つものを拾い取るこ…