日雇い絵描きの愉しみ
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和風、中華風、南仏風…どう調理しても酒に合う鮭の白子
スーパーの魚売り場に、白くにぶい光を放つ、見たことのない細長いものが売られていた。売札には「鮭の白子」と書いてあり、3本で220円である。よく食べられているものなのだろうか。他の魚介に比べてずいぶん…
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大雨を降らす台風の日も七輪に火を起こして酒を飲む
庭で虫が鳴きはじめる頃、酒屋の店頭には全国のいろいろな酒蔵から届く、ひやおろしの酒が並ぶ。今年は金沢の福正宗と新潟の吉乃川を飲んだ。暑い夏の間、ひんやりとした酒蔵で寝かせられて熟成した酒は、まろやか…
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子供心に憧れ 長崎県東彼杵で「クジラの先生」と呼ばれて
なぜだか分からないが、子供の頃からクジラが好きで、家にあった百科事典は、世界中のクジラを載せた巻だけ手あかで真っ黒に汚れていた。見たこともない巨大な生き物が海を泳ぐ姿を、恐竜と重ねて、ただ憧れていた…
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盤に駒を置く音が好きで将棋盤「カルデラ」を作ってみた
少し前までは、通りでかけ将棋をやったり、居酒屋の小上がりで酒を飲みながら将棋を指したりしている人の姿をよく見かけたが、最近見なくなったのはさみしい。自分がまだ若造であった頃は、そういう大人の男たちの…
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よく通う居酒屋で覚えた「シメサバ」のおいしい食べ方
皮がぱりっと焼きあがった塩サバの、めくれた切れ目から白い身がのぞいたところに醤油をかけると、少しはじける。それを箸でつまんで、大根おろしと一緒に白い飯にのせてほおばると、思わず魚のなかでサバが一番好…
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子供がバッタを追うように…見たばかりの「夢」を捕まえる
夢は、本人だけの幻想的な世界だ。現実から逸脱しているが、夢判断とか心理学の研究対象に用いられたりする。そもそも、人間はなぜ夢を見るのだろう。僕は、絵を描くために、自分が見た夢を題材にすることがよくあ…
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極貧時代に生み出した自家製「極上ウーロンハイ」の味
これまで、最も貧乏しているときの1カ月の食費は2人で9000円だった。酒代も込みである。最近はなくなったが、当時は標準価格米というブレンド米があって、これが最も安かった。金がなければ知恵を使うしかな…
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味わいが増す「鶏胸肉の観音開き」でオススメのメニュー
鶏の胸肉は、もも肉よりもずいぶん安く売られている。もも肉に比べて、肉そのもののうま味と食感がないせいかもしれない。唐揚げでも鶏鍋でも、もも肉の方はじゅわっと肉汁があふれてくるようだが、胸肉の方はパサ…
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昔よく食べていた「魚肉ソーセージのナポリタン」の作り方
このあいだ、昔よく食べていたナポリタンスパゲティをずいぶん久しぶりに作ったが、なかなかうまかった。 まともなスパゲティの食べ方とは思えないが、子供の頃はこれにウスターソースをかけてめしのおか…
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喫茶店の副業を画策して「黒糖菓子」の屋号まで決めた
画家の仕事などというのは、いつでも不安定である。50代半ばまで、こうして生活をしてこられたのは不思議だが、暮らしの浮き沈みもあって、時々発作的に画業の傍ら何か副業を始めようとしたこともあった。 …
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高校時代3年間は水泳部 インターハイで種目を間違えて失格
高校時代3年間は水泳部に所属していた。夏にプールで泳いでいると、他の運動部の同級生から「おい、気持ちよさそうだな」などと声をかけられたが、競泳の練習は見た目ほど楽ではない。なかでもインターバルという…
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メキシコの「アボカド」を海苔とワサビ醤油で食べる不思議
野菜売り場のアボカドが並んだ箱のところに「指で押さないでください」と札が立っていた。アボカドは軽く指で皮を押して熟れ具合を確かめるのだが、強く押しすぎて中の身をつぶしてしまうお客がいるのだろう。 …
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野草の味を教えてくれた祖母 棕櫚の葉を束ね箒まで作った
野草の味を僕に教えてくれたのは、大正生まれの母方の祖母だった。子どもの頃には山へ行って、ワラビは茎の下の方から上の方へと指でつまみながら曲げていき、ポキンと折れるところで摘むのだと教わった。手を後ろ…
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雹が降った翌朝…羽がほとんどないアゲハ蝶が庭の隅に
今年の5月4日のこと。その日は朝から晴れていたが、午後になってにわかに冷たい風が吹き、空に黒い雲が垂れ込めてきた。やがて雷鳴がとどろいたかと思うと、屋根の上からトントントンという聞き慣れない音が聞こ…
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調理場のおばちゃんによく揚げの「かき揚げ」を頼むと…
どうにも、お昼にかき揚げ天うどんが食いたくなって、スーパーへうどん玉とかき揚げを買いに行く。ときどき、はっきりと食べたいものが思い浮かぶのだが、この日はつるつるした白いうどんの麺にかき揚げをのせて熱…
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スケッチ旅行の盛岡で打診された“わんこそば大会”への出場
5月のなかば、絵描き仲間たちと、恒例となっている年に一度のスケッチ旅行で盛岡へ行く。 盛岡は何度か訪れているが、数年前に地元で「てくり」という情報誌を制作している木村敦子さんや、「ひめくり」…
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とげぬき地蔵にお願いして「名もない店」に入れた幸運
先日、友人2人から誘われて巣鴨へ遊びに行った。ところがこの日は大型連休明けの日で、ほとんどの店が臨時休業していて、まるで冬の海水浴場のように閑散としていた。いつもは並ばないと拝めない「とげぬき地蔵」…
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祖母と父を真似た「糠漬け」 コンニャク、ゆで卵は肴にも
冬に沢庵を漬けた後の糠を使って、本格的に糠漬けを始めてみた。 小学生の頃、毎朝近所に住む祖母の家にキュウリやナスなどの糠漬けを取りに行くのが僕の仕事だった。糠床は気温が高くなるほど活発に発酵…
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92歳で亡くなった 祖母のビーフンがみんなの大好物だった
大正の生まれの母方の祖母は92歳で亡くなった。晩年まで元気だったが、それは食事のとり方が良かったからではないかと思う。家族と食事をするとき、自分が食べられる分だけ小皿に取ると、あとはどんなにすすめら…
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厚紙でくるんだ原画を「コルセット」のように巻き付けて…
新橋で飲んだ帰りに、わずか2駅先の東京駅で降りるつもりが座席で眠ってしまい、6駅先の上野駅で目が覚めた。しかし、時計を見ると、どうやら山手線を2周ばかりまわったようである。それであわてて東京駅へ折り…