鑑定士のナイショ話
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巨星・岸田劉生の悲しい末路…放蕩の揚げ句38歳で
岸田劉生は大正13年の雑誌「改造」に「海鯛先生の清玩論」を寄せた。主人公の「江賀海鯛」は、「絵が買いたい」のダジャレだ。 古画を買いたくて仕方がない自分を擁護しつつも自虐的に書いている。「吾…
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年24円の雑誌広告…岸田劉生は絵を売る才覚も優れていた
自分の絵を買ってもらうために、岸田劉生がいろいろと営業努力をしていたという話の続きだ。劉生は展覧会以外にも販売の活路を見いだした。それは雑誌広告だった。 大正6年7月「白樺」の巻末に「岸田劉…
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岸田劉生の絵の値段はパトロン次第だった
岸田劉生も初めから絵が売れたわけではない。大正4年、24歳の時に、草土社というグループ展を主催した。中川一政、椿貞雄らも参加し、美術史においては重要なイベントとされる。すでにゴッホやセザンヌから脱皮…
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岸田劉生は最初ゴッホのような絵を描いていた
有名画家の“知られざる一面”シリーズ。今回から岸田劉生(1891~1929年)を取り上げたい。何かとネタが尽きない作家でもある。 劉生といえば、読者はすぐさま《麗子像》を連想するだろう。しか…
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近代洋画の父・黒田清輝は法律家をめざしていた
日本近代洋画の父といえば、黒田清輝(1866~1924年)だが、初めは絵描きをめざしていなかった。父は、薩摩藩奉行役から明治政府の官僚になった人物で、黒田は英語と法律を学んでいた。明治17年にフラン…
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高橋由一作の油絵《鮭》は見せ物小屋に陳列されていた
高橋由一(1828~94年)の名前を知らなくても、高橋由一が描いた油絵《鮭》は教科書や切手などで、ご存じだと思う。半身を切り取られた新巻き鮭が、わら縄で吊るされた超リアルな描写が目に焼き付いているは…
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いい美術館には必ずいい学芸員がいる
日本の美術館の収蔵品が世界の収集家の垂ぜんの的になっていることは喜ばしいことだ。これは学芸員の力が大きいといえる。 もちろんそれらをつくったアーティストがいたということは前提だが、どんなに予…
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よい美術品とは何かを研鑽 学芸員の苦労をほめてやりたい
最初の話に戻る。日本の美術館には、高く売れそうな物があるから、それを換金すればいいじゃないかという「稼ぐ美術館」の発想が政府から出ている。 この発想は、美術館にある収蔵品(特に現代美術)の国…
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公立美術館の経営難…美術品の価格破壊が始まる危険性
公立美術館が経営維持のために、収蔵品を売り出す時代が迫っているという話をしてきた。同時に多くの弊害が出ることも指摘してきた。収蔵品は、その美術館に存在することで価値ある物になっているのに、それが市場…
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絵「6億円が100億円に」のケースは例外
2017年、ギャラリスト(R・MIURA)が書いた「絵(エッ)、6億円が100億円に―美術品の経済的価値を問う―」という本が出版された。 1995年、設立当時の東京都現代美術館が、リキテンス…
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日本に500館近くある美術館は「稼げ!」の時代に突入
ウィキペディアによると、現在、全国には公立美術館は263館くらいある。ちなみに私立美術館を合わせると約490館になる。 多くの美術館は、1980~90年代に建てられたが、2000年以降になる…
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公立美術館の絵が売られる日が来る?
このニュースを覚えている骨董好きも多いと思う。 2017年3月15日、クリスティーズ・オークションで、藤田美術館所蔵の中国美術品が総額300億円で売却された。1点で56億円付いた宋時代の巻物…
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「抽象画」はこう鑑賞するのが正解
「抽象画ってどうやって見たらいいの?」と聞かれることがよくあります。時には「そもそも抽象画で良い悪いなんてあるの?」「実はわかったフリして本当は適当なんじゃないの?」とも言われることも。これに答えるの…
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ネットオークションはほぼ全部が偽物 お宝は例外中の例外
ネットオークションでとんでもないお宝を見つけ出したいという欲望は、競馬で万馬券を当てたいという夢と似ているかもしれない。あるいは宝くじか。なせば成るなさねば成らぬ。しかし、なしても成らぬこともある。…
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ネットオークションでは価格が少し高くても買うのがコツ
前回に続いて、ネットオークションの活用法を伝えたい。 もし「◯◯が描いた油絵が欲しい」「××の花瓶が欲しい」となれば、まず図録などを購入して、その作家の特徴や変遷を押さえておくのが大切だ。同…
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ネットオークションで藤田嗣治が手に入る?
前回まではネットオークションの悪口のようになってしまったが、本物を売っているストアも数多くある。ヤフーオークションであれば、評価の高いストアはおおむね間違いはないし、ある程度は適正な価格で購入するこ…
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素人が首を突っ込むとケガを…ネットオークションの罠<2>
ネットオークションには多くの罠が仕掛けられている話の続きだ。 本物なら100万円以上するかもしれない美術品が、1円スタートの競りにかけられていたとしたら、初っぱなは心をくすぐられる。お宝を手…
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「三岸と読めます」に仕掛けられたネットオークションの罠
ネットオークションには多くの罠が仕掛けられている。例えば出品説明にこのようにあるとする。 「某旧家から出た代物だそうです。作者はわかりませんが、サインを見ると三岸と読めます。判断は落札者にお任…
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象牙製品がゴミになってしまう日
象牙は古くから武器や家具、文房具、楽器などに加工されてきた。耐久性が高く、コーティングされたような光沢の美しさなど重宝される理由はいくつもあった。江戸期の根付けや印籠などは装飾性も高く、身近なところ…
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おじいちゃんはなぜ骨董品を集めるのか
美術品の買い取りのためにお客さま宅に行くと、「なんでうちのおじいちゃんはこんなにたくさん骨董品を買ってしまったんだろう」と嘆く遺族の声をよく耳にする。「お金だけ残してくれればよかったのにね」という嘆…