あいつらの末路
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(106)私はH市一家殺害事件の生き残りです
睦代は、唇を震わせながらお冷やをがぶ飲みする草野百々子を、見つめた。 睦代は、間髪を容れずに、第二の矢を射る。 「草野先生は、H市一家殺害事件の生き残りなんですよね?」 睦代が…
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(105)先生もお母さまを殺害されてますよね?
『さっきも言ったけど、石塚孝道の除籍簿を見てみたら、草野百々子とかつて婚姻関係にあった。それで気になって、草野百々子の戸籍と除籍簿もとってみたら、とんでもないことがわかった』 なになに? …
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(104)まるで刑事ドラマを見ているよう
一方、田端睦代は途方に暮れていた。母親が突然、死んだ。殺されたのだ。殺したのは、ホームヘルパー。呆然と立ちすくむ睦代を横目に彼女は淡々と警察に電話し、「私、人を殺しました」とその場で自首。それから慌…
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(103)おばさんを騙した男ってこの人?
「あたし、やっぱり、家に帰る」 咲良ちゃんが、いきなりそんなことを言い出した。 「帰るって。今は深夜だよ。電車もないよ?」 「じゃ、タクシーで」 「お金は?」 「…………
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(102)終わった…私の人生、終わった
十一月十九日、深夜。 近田朝美は、その場にへたり込んだ。 咲良ちゃんって、ただの家出娘だったの? 全部、私の思い込み? 「なのに、私、咲良ちゃんを殺しちゃった?」朝美は、放心状…
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(101)愛はとてつもない快楽
【なぜ、人々はロマンスを求めるのか】 婚活サイト「Two-winged」が摘発された。主にシニアを対象にした出会い系サイトで、入会金0円を謳い、開始1ヶ月で1万人の会員を集めた。 「だっ…
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(100)お母さまがあまりにうるさいので
スズキさんのあとを追うと、彼女はそのままパチンコ屋に吸い込まれていった。 「は? パチンコ?」 なんで? どうして? しばらくそこで待っていたが、スズキさんはパチンコ屋から出てこない。…
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(99)この半年、溜まったマグマが爆発
再婚したなんて、聞いてないわよ! しかも、二十歳年下? 睦代は、イライラとした頭で、職場に戻った。久しぶりの再会で、ちょっとだけトキめいてしまった自分が、心底情けない。気を紛らわすためにも、…
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(98)タクシーの運転手もアリバイの証人
「本名がわかれば、戸籍謄本をとれるの? 資格もないのにどうやって?」 「まあ、それはさ。蛇の道は蛇って言うじゃん」 哲也は含み笑いを浮かべると、皿に残っていたホットドッグを頬張った。 …
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(97)なぜ八神隼人の名前を騙ったのか
「で、詐欺男の正体はわかったの?」 睦代はコーヒーを飲み干すと、身を乗り出した。 「うーん、やっぱりいいね。なんか、昔に戻ったようだよ。君が上司で僕が部下。君は筋金入りのパワハラ上司で、…
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(96)この名前、見覚えがあるんだけど
「うそ。草野百々子先生も担当しているの?」 「うん? 草野先生って?」 「今、私が編集長をしているウェブ誌で監修をお願いしているファイナンシャルプランナー。知らない? 割と有名なんだけど」…
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(95)あ、このジャケットとパンツ!
歳とったな。……でも、いい味が出てきた。久しぶりの哲也を見て、睦代は真っ先にそう思った。 地下鉄神保町駅近くのカフェ。いや、喫茶店といったほうがしっくりくる昔ながらの店には、案の定、同業者の…
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(94)請求書は相変わらずえげつない
ハワースの丘で起きた事件は、闇バイトがやったんではないか。 そんなネットの噂が、睦代の頭の中をぐるぐると巡っている。 闇バイト。警視庁のホームページによると、『SNSやインターネット…
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(93)ハワースの丘で男女が血まみれ?
目の奥がじんじんと痛い。時計を見ると、もう深夜二時になろうとしている。今日はとりあえず、もうおしまい。寝よう……とベッドにダイブしたところで、呼び鈴が鳴る。母が呼んでいる。たぶん、トイレに行きたいの…
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(92)生き残りの長女は当時18歳
哲也は、合点承知の助とばかりに、大量のOK絵文字を送ってきた。 うわ。まさに、おじさん構文! 『まずは、スタイリストの線から攻めてみるよ。スタイリストを探し出すのは、難しくないと思う』…
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(91)あいつも轟書房と名乗っていた
『考えられるとしたら、同じスタイリストがついていたという可能性だね』 同じスタイリスト? それなら納得だ。ときどきタレントや俳優のファッションがまるかぶりするという事故が起きるが、そういうとき…
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(90)あいよ、いつものチャーハンだね
「チャーハンは?」 母が、しきりにこちらを窺う。このまま後回しにしていたら、母は幼児のようにぐずり出すだろう。 検索をいったん棚上げすると、睦代は馴染みの街中華屋に電話を入れた。いつも…
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(89)母は完全に子供に戻っている
うるさい、うるさい、黙れ! 「え? なにか言ったかい?」車椅子の母が、きょとんとこちらを見ている。「そんなことより、あんた。お腹空いたよ、ご飯、まだ?」 シンクの中を見てみると、朝食で…
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(88)同じ男に騙されたってわけさ
めまいがするような暴言。でも、睦代はなにひとつ言い返せなかった。 その通りだ。今日会ったばかりの私のどこが気に入って、あの人は「婚約者」なんていう言葉を出したのだろう? 答えはひとつ…
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(87)結婚詐欺に決まってんだろうが
「あら、戻ったの? 早いじゃない」 母が、視線をテレビモニターに貼り付けたまま言った。 「今日は、予定変更になったから」 「また、ドタキャンしたの?」 ちょっ。なんてこと言…