五木寛之 流されゆく日々
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連載11934回 戦時中の夏の記憶 <1>
猛暑と豪雨が続いている。 ゲリラ気象というか、予想をこえた気象変動が報じられて、落着かない毎日だ。 私たち昭和ヒトケタ派の生き残りにとって、8月は何より戦争の記憶が色濃い。 新型爆弾と称…
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連載11933回 夏の夜には歌謡曲 <5>
(昨日のつづき) これまで何度も書いてきた話だが、戦後、北朝鮮で難民として抑留されていた時代のことだ。 中国などとちがって、なぜか北朝鮮では公的な引揚げ事業が行われなかったために、ピョンヤンな…
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連載11932回 夏の夜には歌謡曲 <4>
(昨日のつづき) むかし作曲家の遠藤実さんと対談をしたことがあった。 かぞえきれないほどのヒット曲を書いた人だが、風貌はどことなく実業家のような感じの作曲家だった。 左手の手首に数珠を掛け…
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連載11931回 夏の夜には歌謡曲 <3>
(昨日のつづき) 「むかし、こんな歌が流行っていてね」 と、若い人にうたって聞かせたら、いろいろ質問がでた。『白い花の咲く頃』である。 「白い花って、なんの花なんですか」 「さあね、要するに…
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連載11930回 夏の夜には歌謡曲 <2>
(昨日のつづき) ヒット曲でもツーコーラスの歌詞がうたわれることが意外に少ない、と書いたが、その逆もないではない。 昭和24年のヒット曲でロングセラーにもなった『長崎の鐘』。 〽こよなく晴れ…
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連載11929回 夏の夜には歌謡曲 <1>
古い歌謡曲や演歌の番組を視ていて残念なのは、3番まである歌詞のツーコーラスしか歌われないことだ。 ふつうは1番と3番をやって、2番目の歌詞をとばされることが多い。 放送時間の制限や、その他の…
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連載11928回 甲子園の民俗学 <4>
(昨日のつづき) 私たち昭和の子供は、戦争の時代に徹底的な軍事教育を受けた。ゲートルの巻き方から分列行進にいたるまで、少国民としての身体的訓練を体で学ばせられたのだ。 行進の際には堂々と胸を張…
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連載11927回 甲子園の民俗学 <3>
(昨日のつづき) この酷暑のなかで、甲子園の大球場は外野席上段までぎっしり埋まっている。 甲子園の高校野球は単なるスポーツではない。それが一種の祭祀であることは誰しも感じることだろう。応援のス…
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連載11926回 甲子園の民俗学 <2>
(昨日のつづき) なぜ甲子園の入場行進で、高校選手が膝を高くあげ、踏みおろす旧陸軍的な歩き方をするのか。 これまで何度も書いてきたのだが、重ねて書く。 「それ知ってるよ。前に読んだ」 と…
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連載11925回 甲子園の民俗学 <1>
甲子園の高校野球の入場行進を見るたびに、以前は常に大きな違和感をおぼえたものだった。 なんといっても選手たちの歩き方が昭和以前だったのだ。軍隊式の歩行スタイルなのである。 膝を高く前にあげる…
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連載11924回 『昭和百年』を前にして <5>
(昨日のつづき) 明治や大正とくらべると、昭和はどう考えても一筋縄ではいかない時代である。 直線でもなければ、ゆるやかな曲線でもない。3つに分断されて、それぞれが独自の時代相を示している。 …
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連載11923回 『昭和百年』を前にして <4>
(昨日のつづき) 戦後、満州、北朝鮮では邦人の引揚事業がなぜか進まず、多くの在留日本人が放置されて、さまざまな悲劇に見舞われた。 当時、平壌には多くの日本人が残留していたが、延吉方面経由で満州…
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連載11922回 『昭和百年』を前にして <3>
(昨日のつづき) <明治百年>というのは、ある意味でわかりやすい呼称である。 国民と国家が一体となって、<坂の上の雲>を夢見た時代だからだ。 しかし、これが<昭和百年>となると、いささか様相…
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連載11921回 『昭和百年』を前にして <2>
(昨日のつづき) <明治の偉人>などというのは、子供でも知っている。 上野にいけば犬をつれた西郷どんの銅像が立っているし、東郷元帥、乃木大将は外国でも有名だ。両方とも軍人である。 昭和となる…
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連載11920回 『昭和百年』を前にして <1>
以前、<明治百年>とやらで世の中がヒートアップした時代があった。 <国家と国民とが一体となって坂の上の雲をめざした時代>というのが当時の明治時代のイメージだった。 明治の印象は、きわめて鮮烈で…
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連載11919回 猛暑と冷夏の間には <5>
(昨日のつづき) 当時のアルバイト学生には、社会保障とか仕事上の契約もなく、近所の歯科医で応急手当てをしただけの事故だった。 不都合が生じるたびに、適当に処理して、ちゃんとした治療を受けたのは…
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連載11918回 猛暑と冷夏の間には <4>
(昨日のつづき) ゴマカシ、ゴマカシやってきた歯の具合いが、ついにゴマカシきれなくなってきた。 私はもともと歯は丈夫なほうである。子供の頃から成人するまで、歯医者にいったことがなかった。 …
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連載11917回 猛暑と冷夏の間には <3>
(昨日のつづき) 猛烈な暑さと苛烈な寒さのどちらが苦手かといえば、私は寒さのほうがイヤだ。 私たちの世代は、暖房などが発達していない時代に子供だったから、寒さは本当に身にこたえた。 冬にな…
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連載11916回 猛暑と冷夏の間には <2>
(昨日のつづき) 自慢にもいろいろあるが、聞かされて迷惑なのが健康自慢というやつだ。 ほかに自慢することがないのかよ、と心中つぶやきながら相い槌を打つ。 私自身も気をつけていないと、つい体…
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連載11915回 猛暑と冷夏の間には <1>
記録的な猛暑が続いている。 しかし、暑いだけの問題ではない。寒がりの私にとっては、建物の中は常に冷夏だ。 タクシーに乗っても、カフェにはいっても、どこもかしこもエアコンがフル稼動中。 食…