がんと向き合い生きていく
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「決まりなのでできません」抗がん剤を拒否され言葉を失った
Gさん(48歳=会社員)は、1カ月前から食欲がないことと、両足がむくんできて靴が履きにくくなり、心配になって近所の内科・消化器科のE医院に行きました。診察した医師からは「血圧と心電図は問題ありません…
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「経済毒性」がん治療による経済的な副作用も考えるべき
慢性骨髄性白血病は、かつては骨髄移植をしなければ助からない病気でした。それが分子標的薬の「イマチニブ」という特効薬が登場し、多くの患者は病気をコントロールすることができるようになりました。内服さえし…
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80歳の母親は助かる可能性があった胃がんの手術を受けず…
病院事務のAさん(50歳・女性)には弟がいますが、結婚して遠方に住んでおり、父親の死後、Aさんは母親と2人で暮らしていました。ある日の午後、Aさんが「先生、亡くなった母のことなのですけど、聞いていた…
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生後2カ月でお腹にがんができた女の子に思った「命の価値」
ある日、1歳になったばかりの意識がない女の子Tちゃんが、そっと運ばれてきました。丸くてぽっちゃりしたかわいい子供でした。小さなベッドに寝かされて、そっと、そっと運ばれてきました。頭を少し動かしただけ…
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がん治療をするか否かは「暦の年齢」で決めるものではない
親戚のSさん(79歳)がしばらくぶりに訪ねてきました。 話によると先日、消化器内科で胃の内視鏡検査を行ったところ、早期の胃がんかもしれないとのことで、その場所の組織生検をしたそうです。その時…
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携帯番号は教えていなくても医師は患者をいつも気にしている
ある市の市議会議員の奥さん(当時56歳=胆のうがんが肝臓転移)が、某病院から転院を希望されて来院されました。私が「当院でお引き受けいたしますが、他の患者さんと同じように対応させてください。特別扱いは…
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難治性の造血器腫瘍を克服した患者さんが訪ねてきてくれた
先日、「造血器腫瘍」(白血病や悪性リンパ腫など)の中でも最も難治と考えられるタイプのがんと闘い、悩み、苦しみ、大変な苦労を重ね、骨髄移植を受けた後にようやく蘇って元気になったAさん(40歳・主婦)が…
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“捕らわれの身”と感じている友人が息子の話になると笑顔に
私の友人だったRさん(58歳・男性=会社員)のお話です。 Aがん専門病院で胆のうがんの手術を受けたRさんは、その1年後、腹腔内にがんが再発し、抗がん剤治療のために短期間の入院を繰り返していま…
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丸山ワクチンは70年以上も「治験」という形で使われている
先日、ある病院でこんな場面に遭遇しました。入院される患者さんが「丸山ワクチン」を持参し、担当医に「入院中に注射をお願いします」と話しているのを聞いたのです。 「え! 今でも使っているの?」と正…
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認知症でがんになったら治療で命を延ばす意味はないのか
K医師は、ご近所に住むAさん(75歳・女性)の胃がんを診断し、病院に紹介しました。幸い手術でがんは全部取り切れましたがステージは3で、再発予防のためには内服抗がん剤が有効です。K医師もそれは分かって…
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「人生会議」の決定を逆転させるくらい医療は進歩している
厚生労働省のホームページにこうあります。 「『人生会議』とは、もしものときのために、あなたが望む医療やケアについて前もって考え、家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有する取組のことで…
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専門医なのに自分のこととなるとおたおたするだけだった
先日、大腸内視鏡検査を受けたときのお話です。 3週間ほど前から、便通が悪く、便が残っている感じがあって、すっきりしない状態が続いていました。便を軟らかくする薬を飲むと、今度は便が細くなってき…
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日本は米国の「自己決定権が最も重要」とされる医療とは違う
何よりも大切なもの、「いのち」――。それは当たり前でしょう? と言われそうです。 たしかにそうなのですが、最近は医療において「自分の意思」や「自己決定」が最も大切なもののように考えられている…
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患者は納得しても治療しないことに不安を感じる家族もいる
抗がん剤を内服しているAさん(65歳・男性)と担当医のお話です。 Aさんは4年前、下行結腸がんの手術を受けました。この時は肝臓に3個の転移がありましたが、切除できました。肝転移があったことか…
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透析の中止はがん終末期患者との治療法とは全く意味が違う
人工透析を受けている患者ががんになった時、「手術は可能かどうか」を含めて患者の状態を十分に検討し、安全を確認しながら行われます。 抗がん剤治療でも細心の注意が必要になります。抗がん剤の多くは…
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かつては日本版の「看取りのパス」が使われていた
少し前のことですが、ある複数の緩和病棟でとても気になることがありました。「標準化、効率化を最優先にしたのではないか」と思ったのです。 病院では「クリニカル・パス」(以下パス)というものが使わ…
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抗がん剤治療で数カ月長生きすることに意味があるのか?
Bさん(70歳・男性)は、この1カ月ほど少ない食事でもすぐに腹がいっぱいになり、へその上に何か瘤が触れる気がして、Aがん専門病院を受診しました。超音波検査の結果、進行した膵臓がんと診断され、手術は無…
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「心のう水」を抜くのは専門の循環器医でなければ難しい
肺がんや乳がんなどでがんが胸膜に進んだ場合、がん性胸膜炎を起こすことがあります。この場合、胸水といって胸膜に水がたまり、この水にはがん細胞がたくさん含まれています。 これと同じように、心臓を…
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家族が「最期の瞬間」に立ち会うことが難しい場合も多い
ご臨終に間に合った、間に合わなかった。死に目に会えた、会えなかった……。 「ほら、あなたが来るのを待っていたのよ」 「間に合ってよかったね。○○ちゃんだよ、お父さん」 血圧が下が…
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桜の下で幸せそうに喜ぶ患者さんを見て思わされたこと
桜が咲くと必ずAさん(当時34歳)という乳がんの患者さんを思い出します。 随分前のことになりますが、私が勤めていた病院の裏庭に桜の木が2本並んでありました。当時は毎年この時季になると、化学療…