かつては日本版の「看取りのパス」が使われていた
少し前のことですが、ある複数の緩和病棟でとても気になることがありました。「標準化、効率化を最優先にしたのではないか」と思ったのです。
病院では「クリニカル・パス」(以下パス)というものが使われています。たとえば、あるがんの手術で入院した場合、同じ病期なら、同じ検査をして、同じ手術が行われ、同じ日程で退院するようなスケジュールが組まれたものです。これによって検査などの漏れがなくなり、患者にとっては前もって予定が分かります。標準化や効率化として良い方法のひとつだと思います。
こうしたパスのひとつとして、イギリスでは2003年ごろから一般病院やナーシングホームなどで、死が近い患者に対して「看取りのパス」(リバプール・ケア・パスウエー)が使われました。慣れていないケアを行う人のために、すべてを同じチェック項目で同じ手順とすることで、ケアの質を上げるというものです。
驚いたことに、日本ではこれが複数の緩和病棟で日本版「看取りのパス」として使われました。論文発表では看取りのパスは終末期の緩和医療標準化ツールのひとつで、その理念は「よりよい生の終焉(good death)を迎えるために……その道程となる標準的手法を提示」とあります。