家族が「最期の瞬間」に立ち会うことが難しい場合も多い
ご臨終に間に合った、間に合わなかった。死に目に会えた、会えなかった……。
「ほら、あなたが来るのを待っていたのよ」
「間に合ってよかったね。○○ちゃんだよ、お父さん」
血圧が下がって意識がない患者さんに、ご家族は話しかけます。間に合ってホッとして、間もなくご臨終になり、皆さんは泣き崩れます。
これまで私は2000人以上の患者さんをみとりました。
「今、息子がこちらに向かってもうすぐ着くのです。間に合うでしょうか?」と言われたことは、何回も何回もありました。やっと病院にたどり着いて間に合った方、「先ほどまで息をしていたのに」と言われ愕然とされる方、白い布で覆われている姿を見て肩を落とされる方もいらっしゃいました。大急ぎで来られて、最期に間に合って、患者さんが分かってくれたり、何か話してくれるならよいのですが、最期の直前は昏睡状態が多いのです。意識がないのに、分かってももらえないのに、「間に合う」ということはそんなに大切なことなのかと考えることもありました。