役所広司論
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「50年後、100年後にも見てもらえるような映画に、一本でも多く出たい」
50代の半ばを越えても、役所広司は映画の主演作が途切れることなく続いた。ただ、その頃から俳優としてのスタンスに変化が出てきたように思える。例えば、沖田修一監督の「キツツキと雨」(2012年)では、映…
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「ラストサムライ」で渡辺謙が演じた役にはオーディションの最終選考まで残っていた
2005年、役所広司は初のハリウッド映画「SAYURI」に出演した。これはアーサー・ゴールデンの小説を原作に、1920~30年代の日本を背景にして、9歳で花街の置き屋に売られた少女が、一人前の芸者に…
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黒沢清「CURE」、青山真治「EUREKA」…2人の監督とのコンビで世界的評価を獲得した
黒沢清監督、役所広司主演の「CURE」は1997年12月27日公開されたが、それに先立って第10回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品され、役所は最優秀男優賞を受賞した。 物語はX字形…
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映画「失楽園」は自分に合わないと出演を断りに行ったが、森田芳光監督と雑談するうちに…
1996年に「Shall we ダンス?」などの3作品で、一躍映画スターとして脚光を浴びた役所広司。翌年にもその勢いは止まらず、森田芳光監督の「失楽園」(97年)と今村昌平監督の「うなぎ」(97年)…
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大人のドラマをやっていても、どこか青春の残り香が…彼の魅力の源泉とは
周防正行監督の「Shall we ダンス?」(1996年)は、役所広司を映画スターへと押し上げた大ヒットコメディーである。彼が演じたのは、妻と娘がいる真面目なサラリーマン・杉山正平。ある日杉山は、駅…
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「眠る男」(96年)の上村役で沈黙を表現に取り込んだ俳優へと進化
1996年、役所広司は細野辰興監督の「シャブ極道」、小栗康平監督の「眠る男」、周防正行監督の「Shall we ダンス?」と、3本の映画に主演した。「大阪極道戦争 しのいだれ」(94年)に続く細野監…
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『KAMIKAZE TAXI』はTVドラマで培ったきた演技を映画に持ち込んだ最初の成果で原点といえる
1994年は役所広司にとって、ひとつのターニングポイントとなった年である。彼は細野辰興監督の映画「大阪極道戦争 しのいだれ」(94年)に主演。バブル経済崩壊後の大阪を舞台に、せこいシノギで食いつなぐ…
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鶴橋康夫監督との出会いが役者としての大きな転機に
鶴橋康夫監督によるTVドラマ「愛の世界」(1990年・読売テレビ系)は文化庁芸術作品賞、放送文化基金賞優秀賞、ATP賞、ギャラクシー賞などの賞に輝いた。鶴橋監督は出演した役所広司に魅力を感じたようで…
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日ソ合作の大作「オーロラの下で」に主演するも映画俳優としての出世作にはならなかった
1990年、役所広司は後藤俊夫監督による日本とソ連の合作「オーロラの下で」に主演する。これは当時の東映、岡田茂社長が8年がかりでクランクインまでこぎつけた大作。1925年のアラスカで、1000キロ以…
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「三匹が斬る!」の“千石”が当たり役も時代劇に安住なかった
役所広司は、「親戚たち」(1985年・フジテレビ系)で初めて現代劇の連続ドラマに主演した。これは彼の故郷・長崎県諫早市を舞台にした群像劇で、脚本を書いたのは役所広司の兄と学校の同級生だったという同郷…
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遅刻癖を仲代達矢が一喝「おまえは時間通りじゃなく、1時間、2時間前に来ておけ」
仲代達矢が主宰する「無名塾」の塾生だった役所広司は、どんな俳優だったのか。塾では岸田国士の戯曲やシェークスピアの古典劇のレッスンがあり、あとは仲代や先輩俳優が演じている姿を見て学ぶ。ちなみに彼が入塾…
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『Shall we ダンス』映画賞総ナメは40歳で…遅咲きのスターはいかにして名優になりえたか
製作にも名を連ねた主演作「PERFECT DAYS」(2023年)で第76回カンヌ国際映画祭最優秀男優賞をはじめ、日本アカデミー賞やキネマ旬報ベスト・テンの主演男優賞にも輝き、10月25日公開の新作…