五木寛之 流されゆく日々
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連載11097回 「ハオじい」との日々好日 <4>
(昨日のつづき) 「ところで、えーと、あの人、ほら、なんだっけ。名前がどうしても出てこない。あー、年々、記憶力が低下してくるのは、これは仕方のない事なんですかね」 「ハオ。それが自然の理というもん…
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連載11096回 「ハオじい」との日々好日 <3>
(昨日のつづき) 「新聞は読みますが、政治や経済のニュースはあんまりね。主に寄稿文やインタービューなどを拾い読みしてます」 「もうちょっと生ぐさい情報に触れないと世捨て人になっちまうぞ。それはそう…
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連載11095回 「ハオじい」との日々好日 <2>
(昨日のつづき) 今朝も散歩の途中で「ハオじい」さんにつかまった。 できるだけ会わないようにと、日々コースを変えるのだが、それでも必ずどこかで遭遇するのはどういうことか。 坂道を上りきった…
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連載11094回 「ハオじい」との日々好日 <1>
私の古い友人に、まわりの人たちから「ハオじい」と呼ばれている人物がいる。 私と同じ九州の出身だが、昭和元年の生まれだというから、もうすぐ95歳になる年頃だろう。 長身痩躯、白い顎ひげを生やし…
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連載11093回 わが雑食性読書遍歴 <5>
(昨日のつづき) そういえば思い出したのが鶴見祐輔である。『母』とか、当時のベストセラーが何冊かあったが、本職は政治家だ。英雄偉人の伝記なども書いていて、『ヂスレリー伝』や、ほかに何冊か読んだ記憶…
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連載11092回 わが雑食性読書遍歴 <4>
(昨日のつづき) そんな乱読志向の少年だった私に、父親が買ってあたえてくれた本が何冊かあった。 当時、岩波書店から刊行されていた少国民科学入門シリーズのような一連の本である。 正確な題名は…
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連載11091回 わが雑食性読書遍歴 <3>
(昨日のつづき) 学校教師である父の蔵書は、必ずしも当時の私の好奇心を満足させてくれるものではなかった。 丸山真男のいう、当時の「亜インテリ」の知的水準は、まあ、そんなものだったのだろう。 …
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連載11090回 わが雑食性読書遍歴 <2>
(昨日のつづき) これは以前も何度も書いたことだが、昭和初期の少年たちにとっては、懐しい作家の名前が思い出される。いわゆる少年小説のたぐいだ。 武侠小説と呼ばれたりする山中峯太郎。いまでいうな…
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連載11089回 わが雑食性読書遍歴 <1>
小学生のころ、歳時記を愛読していた。 私はもともと雑食系の人間で、活字であればなんでも、というタイプである。子供の頃からそうだった。と、言うより読むものがなくなってしまうと、その辺にある適当な本…
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連載11088回 寛容と否定の狭間に <5>
(昨日のつづき) 米国がキリスト教にもとずく倫理感によって支えられていることは、森本あんり氏の言を待つまでもない。「神国米国」と私は以前から言い続けてきた。 今回のバイデン新大統領の就任の儀式…
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連載11087回 寛容と否定の狭間に <4>
(昨日のつづき) <相手に「寛容になれ」と要求して、寛容という価値を押しつけることは、それ自体が逆に不寛容にもなる> と森本氏は言う。それを「寛容のパラドックス」と呼ぶ。 森本氏がその著書『…
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連載11086回 寛容と否定の狭間に <3>
(昨日のつづき) 「男女間の差別」と無意識に書いて、あれ?と思った。なぜ「男」が先で「女」が後にくっつくのか。 「女男間の差別じゃ語呂が悪いだろ。そんな小さな事に目くじら立てる奴なんていないよ」 …
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連載11085回 寛容と否定の狭間に <2>
(昨日のつづき) 世間では一般に、この「本音」と「建前」が一致することを求める傾向がある。 しかし、誰かが不道徳で不法なことを心に抱いていたとする。しかし、それが心の中のことである限り、それを…
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連載11084回 寛容と否定の狭間に <1>
2月28日の産経新聞オピニオン欄に、森本あんり氏の文章が掲載されているのを興味ぶかく読んだ。 森本氏はアメリカの反知性主義についての論考や、近著『不寛容論――アメリカが生んだ「共存」の哲学』(新…
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連載11083回 最近気になること <4>
(昨日のつづき) きょう或る文学賞の選考会に出席した。これまで何十年も某料亭で行われていた選考会だが、今回はホテルでの開催である。 広々とした部屋にアクリル板で仕切った各選考委員の席がある。目…
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連載11082回 最近気になること <3>
(昨日のつづき) バイデン米大統領の先日のスピーチで、なんとなく気になるところがあった。 米国におけるコロナ死者の数が、ついに50万人を超えた、という報告である。第2次世界大戦の米国側の死者は…
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連載11081回 最近気になること <2>
(前回のつづき) 今朝の新聞に気になる記事がのっていた。(日経朝刊) <米軍ワクチン伸びなやみ>という見出しで、アメリカ兵士の3分の1がワクチンの接種を拒否しているという話である。 この記事…
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連載11080回 最近気になること <1>
私たちが何か意見をのべる際には、科学的、客観的な裏づけが必要だ。私はもともと感覚で物を言うタイプの人間なので、いつもそのことを自省しながら書いたり喋ったりしている。 科学的、客観的な裏づけといえ…
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連載11079回 40年ほど前の今ごろ <5>
(昨日のつづき) 京都へ移住したあと、龍谷大学の聴講生となって講義を受けるようになったのも、この頃である。 千葉乗隆先生の<国史学特殊講義>という授業で、<市廛の宗教>というテーマだった。<市…
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連載11078回 40年ほど前の今ごろ <4>
(昨日のつづき) いまから40年ほど前、自分は何をしていたのだろうかと振り返ってみる。昭和55年から57年にかけての時代だ。ちょうど私が40代から50歳に踏み込む時期だった。 昭和55年(19…