五木寛之 流されゆく日々
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連載11117回 コロナ下のマスターズ <4>
(昨日のつづき) これまで長いあいだ日本人選手はメジャーで勝てなかった。 「結局、ゴルフってのも向うさんのスポーツなんだよな。日本人は水泳とか柔道で勝つしかないんじゃないの」 などと誰もが諦…
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連載11116回 コロナ下のマスターズ <3>
(昨日のつづき) 先ごろ世を去った三好徹は、麻雀の仲間であると同時に、ゴルフの同期生でもあった。 講談社の大久保さんといえば、泣く子も黙るもと『群像』の編集長で、同時に丹羽学校の教頭として有名…
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連載11115回 コロナ下のマスターズ <2>
(昨日のつづき) この一年間、早寝早起きの生活が続いた。 夜は11時半頃ベッドにはいり、朝の7時半には目が覚める。 これまで60年あまりの深夜生活が、コロナの流行とともに一変したのだ。 …
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連載11114回 コロナ下のマスターズ <1>
朝、起きてテレビをつけたら、オーガスタの3日目、松山英樹選手がトップになっている。 これで彼はマスターズは10度目ぐらいの挑戦だろうか。毎回、肩すかしをくらうのが例なので、あまり期待していなかっ…
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連載11113回 話は人の為ならず <5>
(昨日のつづき) 徳川夢声は希代の話者だった。 もちろん天賦の才もあっただろう。しかし、それ以上に「話すこと」を研究し、鍛練した努力の人だったと思われる。 喋ることについて、彼は、 <自…
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連載11112回 話は人の為ならず <4>
(昨日のつづき) ふと、このコラムの通しナンバーを見たら、今回(4月7日発売)で11111回となる。1万回以上の連載になろうとは、執筆開始のときにも想像していなかった。たぶん1、2年で本紙がツブれ…
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連載11111回 話は人の為ならず <3>
(昨日のつづき) 三好徹さんが亡くなったことを新聞で知った。読売新聞の記事だが、他紙には出ていないのが不思議だった。彼は私より1つ年上の昭和6年の生れだが、麻雀仲間だったので「さん」はつけずに三好…
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連載11110回 話は人の為ならず <2>
(昨日のつづき) ひとりで喋りまくるのも良くないが、逆にほとんど発言しないというのも問題だ、と夢声は言う。 いわく「黙り石となるなかれ」 先輩に遠慮するのは当然だが、はじめから終りまで石の…
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連載11109回 話は人の為ならず <1>
会食が目のカタキにされている。黙食、単食がすすめられる昨今だ。 べつに一緒に食事をすることがいけないというわけではない。会食は会話をしながらの食事であるから、飛沫感染の可能性が高いということだろ…
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連載11108回 どこまでも続く泥濘ぞ <5>
(昨日のつづき) 香港では「愛国者」という言葉がしきりと使われているらしい。国を愛し、郷土を愛するのは良い事だ。それは人間の自ずからなる心理でもある。 ふだん気がつかないままに過ぎている祖国の…
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連載11107回 どこまでも続く泥濘ぞ <4>
(昨日のつづき) その日、私たちが駆けつけたときは、大きな衝突はすでに終ったあとだった。しかし、催涙ガスの匂いは有楽町、銀座にまで流れ、日比谷通りではアメ車が引っくり返されたり、黒煙をあげてくすぶ…
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連載11106回 どこまでも続く泥濘ぞ <3>
(昨日のつづき) ミャンマーの情況が激化している。世界がかたずを飲んで視ている、と言いたいところだが、欧米も日本をはじめとするアジア諸国も、自国のウイルスとの抗戦で大わらわで、ちょっとしたコメント…
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連載11105回 どこまでも続く泥濘ぞ <2>
(昨日のつづき) このところ、しきりに戦後まもなくの頃が思い出される。 七〇数年もたてば、すでに過去の歴史である。いまはただ年表でしか知る由もない過去のことだ。 先日、「浮浪児」という言葉…
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連載11104回 どこまでも続く泥濘ぞ <1>
一寸先は闇、とは昔から言われてきたことだ。明日のことはわからない。このところ関東圏でも妙な感じの揺れが続く。コロナの行先も予測はできない。豪華客船でウイルスによる感染が発生したとき、だれが現在の状況…
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連載11103回 遠眼鏡でみるU・S・A <5>
(昨日のつづき) あれはどれほど以前のことだっただろうか。『マウイ島の雪』という題の小説を書くことになって、念のために現地を訪れたことがあった。 前回にも書いたように、まだ観光開発の手がはいる…
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連載11102回 遠眼鏡でみるU・S・A <4>
(昨日のつづき) 米国でまたもや銃撃事件だ。 先日、ジョージア州でマッサージ店のアジア系女性らが射殺された事件のほとぼりも冷めぬうちに、こんどはコロラド州で銃撃事件がおきた。 なんでもスー…
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連載11101回 遠眼鏡でみるU・S・A <3>
(昨日のつづき) テレビ東京の番組『ワールドビジネスサテライト』(WBS)が、放送時間を1時間早めて、夜の10時スタートに変更するそうだ。 これで夜がまた少し早まってくる。ときどき視ている番組…
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連載11100回 遠眼鏡でみるU・S・A <2>
(昨日のつづき) このところ妙な地震が続く。なんとなく気になるのは私だけだろうか。 <泣きっ面に蜂>とか、<踏んだり蹴ったり>などといって悪い事は重なって起こることが多い。今年は多難な年になりそ…
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連載11099回 遠眼鏡でみるU・S・A <1>
日曜の新聞(朝刊)は、なんとなく活気がある。そのことを知人に言ったら、 「そうだよね、実はオレもそう感じてたところなんだ」 と、共鳴してくれる仲間が多かった。大きな記事でなくても、なにか気持ち…
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連載11098回 「ハオじい」との日々好日 <5>
(昨日のつづき) こちらはそろそろ引揚げたい頃合いなのだが、「ハオじい」はなかなか離してくれない。 「この公園の桜も、かなり咲いてきましたね。今年は花見も自粛ムードだけど」 「ハオ! 花なんて…