がんと向き合い生きていく
-
患者の多くは「腫瘍マーカー」の値に一喜一憂してしまう
Kさん(76歳・男性)は5年前、健診で前立腺がんの腫瘍マーカーPSA値(正常値4ng/ml以下)が「4・3」で異常を指摘されました。 某病院の泌尿器科を受診し生検で前立腺がんが見つかりました…
-
「治療には納得、でも通院が苦痛…」大腸がん患者の胸の内
以前、一緒に働いたことがあるT医師からメールが届きました。高校の同級生だったWさん(56歳・女性)の相談に乗って欲しいというのです。 メールはこのような内容でした。 「Wさんは、3年前にS大学…
-
がんは制圧できても住めない地球になれば人類は消滅する
近所に2人の天才児がいます。私も妻もかつてこんな天才児に出会ったことがありません。 Aちゃんは小学3年生の女の子で、幼稚園の頃から我が家に遊びに来ます。天才と思う特技は「動物と会話ができる」…
-
「コロナで死ぬのは嫌」気になる患者と初めて言葉を交わした
56歳で独身のGさん(男性)は、50歳のときに公務員を辞めて山里の古民家に移住し、畑仕事を始めました。山を眺めながら土をいじっているのが幸せで、時間を忘れて過ごしました。 ジャガイモやサツマ…
-
新型コロナに注意しながらがん治療をどう受ければいいのか
A病院内科のK医師からメールが届きました。 「がん治療中にコロナウイルス感染で肺炎となって入院された患者さんがおられます。肺炎がよくなって化学療法ができる状態まで回復するように頑張っています。…
-
家族にうつすと大変だから車中で寝る…医療者の疲弊が心配
「先生! 今、戦争です」 看護長は言います。 「周りの誰がコロナ感染者か分からない。病院では今、戦争が起こっています。コロナ戦争です」 相手は目に見えない存在。一番怖いのは院内感…
-
介護の現場でも新型コロナによる混乱と深刻な状況が続いている
新型コロナウイルスの感染拡大で、病院外来には発熱、咳、味やにおいがしないなどの症状を訴える患者がたくさん訪れるため、「発熱外来を別にした」、あるいは「再診の方は電話診療での処方も可能」となったところ…
-
共感を超え、重篤ながん患者にずっと付き添う看護婦がいた
小中学生の女の子が将来の夢として「看護師になりたい」と話すことがあります。祖母が病院で亡くなった時に、見舞いに行って優しい看護師さんに憧れたと話してくれる女の子もいます。 たしかに優しい心を…
-
ふさぎ込んでいた乳がん患者を前向きにさせた実家での出来事
会社員のSさん(43歳・女性)は、地方の女子高、首都圏にある短大の英語を学べる学科を卒業し、都内の商社に勤めました。それから数年でリストラに遭って辞め、新薬などの調査・統計を行っている小さな会社に再…
-
4月1日から施行される「改正健康増進法」について思うこと
多くのコンビニエンスストアでは、たばこを販売しています。行政機関の庁舎にはコンビニが入っているところが多く見られます。 4月1日から施行される「改正健康増進法」では、行政機関の庁舎の敷地内が…
-
今日は抗がん剤を打てるだろうか…がん患者の複雑な気持ち
造園業を営む一人暮らしのAさん(55歳・男性)は、進行した膵臓がんで手術はできず、抗がん剤治療を受けています。 Aさんの、ある一日です。朝6時に起きて、朝食は取らずに猫のタマちゃんに餌をあげ…
-
新型コロナの流行で胃がん手術を不安がる患者からの相談
70歳の女性からの相談です。 「胃がんと診断されました。手術は4月上旬予定と言われました。こんな新型コロナウイルスが騒がれている時に手術なんて……。延期した方がよろしいでしょうか?」 …
-
がんが発覚して診療できなくなった医師が見つけたもう一つの人生
外科医のRさん(65歳・男性)は25歳で医師になり、某総合病院の消化器外科に15年間勤務しました。特に胃がんの手術が上手と評判でしたが、40歳の時に病院を辞めて外科医院を開業しました。 Rさ…
-
“効く”という根拠がない治療を勧めるわけにはいかない
靴販売店員のCさん(43歳・女性)は、ある病院から診療情報提供書を出してもらって、セカンドオピニオンとして相談に来られました。肺がんの手術を受けた後、胸部X線写真やCT画像では両肺にたくさんの丸い転…
-
医師同士が気軽に相談できる環境が質の高い医療につながる
Bさん(43歳・男性)は「悪性リンパ腫」で2年前に再発したものの、幸い再度腫瘤は消失して、現在は落ち着いています。 Bさんはとても心配性で、外来診察に来るたびに「再発していないでしょうか?」…
-
絶望の中でも援助したい 終末期患者を看護するスタッフの思い
「命はいつ果てるか分からない。そこに命の神秘さがある」 どなたかが言った言葉があります。 だいぶ前のお話です。がん病棟には40人ほどの入院患者がいて、終末期となって重症で亡くなりそうな…
-
「私、食道がんと言われた」ケンカ別れした娘にメールを送った
ある地方の田舎で育ったDさん(56歳・女性)は、高校生の頃から「人間ってなんだろう」「命ってなんだろう」などと考えることが好きでした。そして、東京のある大学の哲学科に進学しました。 しかし、…
-
がんの「休眠療法」は有効性がいまだ科学的に証明されていない
「患者さんが、がんの『休眠療法』を受けると言っています。体にやさしい治療法らしいのです。この治療法、先生はどう思われますか?」 友人医師からこんな相談がありました。 私は「え? もう、…
-
「意思を尊重する」と言いながら既定路線は決まっている?
コンピューター会社に勤務していたAさん(77歳・男性)が、病院で外来診察を受けて午後になって再度来院されました。セカンドオピニオンのため、他院への診療情報提供書とCT検査の画像データが入ったCDを取…
-
DNAがつながる…患者の漏らした言葉が今になって身に染みる
私たちが緩和病棟を始めた20年前のことです。当時58歳で、大腸がんが肝臓、肺、骨に転移していたSさん(女性)は、手術を受けた外科病棟に数回入院された後、病状が悪化して治療法がなくなり、緩和病棟に入ら…