回帰 -警視庁強行犯係・樋口顕-
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連載小説<4> 自動車の爆発の原因は爆弾テロなのか
「そうか。ここ、係長の母校だったんだ……」 小椋が言った。 樋口は係員が集合している場所へ足を運びながらこたえた。 「ええ。そうです」 「たまげたな。顔色一つ変えないんだもんなあ」 「そ…
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連載小説<3> 爆死したもう一人の被害者は誰なのか
「死亡者の身元は?」 「一人は大学の警備員だ。もう一人は通行人のようだ。学生かもしれない。今調べている」 樋口は現場となった路上に眼をやった。長年刑事をやっているので、爆発の現場も何度か見たこと…
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連載小説<2> 大学前の爆発で二名の死亡が確認された
捜査員の声に樋口は思わず身を乗り出し、フロントガラスから前を見た。 現場に近づくにつれて、混乱が見て取れた。消防車が土手の脇の細い道に並んでいる。 救急車も見える。消火作業と被害者の救出作業…
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連載小説<1> 四谷の大学の門の近くで自転車が爆発した
携帯電話が振動した。樋口顕は、内ポケットから電話を取り出した。同時に、ほうぼうで携帯電話が振動する音が聞こえる。 ただごとではない。 樋口は咄嗟にそう思った。警視庁刑事部捜査一課。殺人や強盗…