保阪正康 日本史縦横無尽
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第2次大戦の真の勝利者、軍人が束になってもかなわないチャーチルの雄弁術
第2次世界大戦はつまるところルーズベルト、チャーチルの連合軍と、ナチス、日本軍国主義との戦いであったと言っていいだろう。連合国軍と枢軸体制の戦いとか、ファシズムとデモクラシーの対立といった構図が示さ…
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チャーチルは「わがままで悪い教育を受けた子供の観念」「戦争が大好き」
アメリカの軍事指導者の中には、ルーズベルトやチャーチルが第2次世界大戦の真の意味を理解せずに、スターリンに過剰な役割を与えてしまったことに不満を持つ者が多かった。特にチャーチルはルーズベルトを巧みに…
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第2次世界大戦の勝者はスターリンだけだった
アメリカの軍事指導部に位置する軍人は、共産主義をナチズムやファシズム、さらには日本の軍国主義に匹敵する「敵」とみていた。独ソ戦はあるところまで、アメリカやイギリスは傍観的であるべきだったというのであ…
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チャーチルから見れば日本の軍人たちは子供も同然だった
太平洋戦争のアメリカ側の目的はどこにあったのだろうか。生粋のアメリカ軍の軍人はどのような判断を持っていたのか。そのことを確認するために、私はあえてアメリカの戦略部門に関わっていた軍人(ここで紹介して…
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アメリカは戦争の原因を除去する大戦略に欠けていた
実は日本の真珠湾攻撃による対米英戦争は、新しい形の戦争論を生み出していたのだ。私たちはこの事実をこれまで一顧だにしてこなかった。戦争論というほど高度の理論というわけではないにせよ、新時代を予兆する戦…
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ルーズベルトの秘密計画は「シカゴ・トリビューン」紙によって意図的にスクープされた
アメリカの政治指導者と軍事指導者は、基本的にはモンロー主義の方向に立っていた。1939年9月から始まった第2次世界大戦に、アメリカの青年をヨーロッパまで送って戦闘に参加させることには及び腰であった。…
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欧米の戦略論にみる特徴 他国同士を戦わせた後に出兵した英国のピット首相
欧米の戦略論はある特徴を持っている。たとえ軍人であろうとも、戦争そのものをできれば避けるべきという考え方を土台にしていることだ。それは特に第1次世界大戦後の戦略論にうかがえる。戦争の残酷さ、あるいは…
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独ソが共倒れし、米英がヨーロッパの勢力図を確立するという密かな計画
ウェデマイヤーの回想録は、ルーズベルトやチャーチルを極めて辛辣に批判している。彼らの戦略には全体的な歴史観がないようだとの視点で、その戦争観を俎上に載せているのだ。 軍人として教育を受けたウ…
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プーチンのウクライナ侵攻と日本の「支那一撃論」の共通性
これまでプーチンのウクライナへの軍事侵略が20世紀の帝国主義的戦争の教訓に全く学んでいないという事実を指摘してきた。彼の頭にあるのは、スターリンのつくったソ連という社会主義体制の中心軸を再現して、ロ…
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「正義の兵士集団」の現実は…ウクライナ侵攻まで続く赤軍兵士の妄信
独ソ戦におけるソ連の赤軍は、確かに勇猛果敢に戦った。これは祖国をドイツに渡したくないという強い意志の故でもあったが、同時にナチスへの脅威のためでもあった。各種の書によると、赤軍兵士の中には命が惜しい…
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ナチスを打ち負かしたソ連の「イワン神話」祖国を守り、労働者階級解放に使命感を持つ
第2次世界大戦は国家総力戦でもあった。つまり国家の全ての機構、制度、財政、社会、文化、さらには国民の全てが戦争というシステムの中に組み込まれた。傍観者や戦争忌避者は徹底的に排除され、時には処刑された…
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独裁政治の果ては? プーチンは暗殺の恐怖に怯えながら生き続ける
政治指導者のプーチンがスターリンに抱いている尊敬と反発は、心理学分析がいうところのエディプスコンプレックスの枠組みに組み込むとわかりやすい。このコンプレックスをもっと砕いて説明するならば、「権力者の…
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ニクソン米国大統領が背負ったエディプスコンプレックス
エディプスコンプレックスは精神分析の土台をなすといわれる。人間関係の原点がこのエディプスコンプレックスにあるとの説さえあるのだ。男子は成長の過程で母親の愛情を自分一人のものにしたがるが父親がそれを邪…
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侵略が「祖国防衛大戦争」にすり替わる時 戦争の意味付けは後世で変わる
プーチンのウクライナ侵略作戦は、歴史上でどのような形の汚名を浴びることになるのか、今のところ明確な判断はできない。戦争の推移がどう変化するかによって、その汚名の質が変わることはありうる。単なる軍事的…
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孤立した指導者プーチンが西側諸国を敵視する「2つの理由」
第2次世界大戦時のソ連は、対ドイツ戦を国力の全てを捧げて戦った。1939年9月1日のナチスによるポーランド侵攻時は、実はスターリンとの野合とでもいうべきであったが、その1年10カ月後のヒトラーによる…
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プーチンはロシアの独裁者だと公言 敵対勢力の命を奪うスターリンの手法
これは私の推測になるのだが、戦後の西ドイツ、そして統一ドイツの指導者は、ソ連と敵対しないことを前提に、ヒトラーの時代への申し訳なさのような感情を抱いているのだろう。メルケルやショルツのような時代に入…
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プーチン説得はドイツの責務ではないか もっとも近い距離にいることは間違いない
メルケル元ドイツ首相のプーチン観はきわめてクールであった。 「プーチンが仕えていた警察国家に苦しめられた経験を持つメルケルは、プーチンの狡猾さや冷淡さを身をもって理解していた」(「メルケル」カ…
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プーチンにしゃべらせ「妄言だ」と説得、独メルケル元首相が担っていた役割
プーチンが国際会議などで外国首脳と話し合う際にしばしば用いたのが、自らの妄想からくる西側陣営の動きだったという。 彼には欧米の列強が寄ってたかってロシアを侮っているとの恐怖感が根強く残ってい…
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プーチン大統領も…KGB工作員が背負う“疑心暗鬼”という欠陥
今回のロシアによるウクライナへの軍事行動は、多分に最高指導者の個人的性格によるところが大きいというべきである。プーチンの性格がそのままこの軍事行動に表れているとも言えるのだが、それだけに戦況が次第に…
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ロシアのウクライナ侵略で迫られる「21世紀の指導者像」の再検討
人間社会は時代とともに暴力的な対立を避ける方向に向かっている、というのがこの種の研究によって裏付けられているそうだ。社会や国家をつくり得ていない時代には、殺戮、闘争死などは際限なく繰り返された。生き…