演劇えんま帳
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新たな伝説となった80年代演劇の金字塔「ビニールの城」
1985年に石橋蓮司、緑魔子が主宰する「劇団第七病棟」によって浅草の廃映画館「常盤座」で初演され伝説となった唐十郎作品の再演。5月に逝去した蜷川幸雄が演出を手掛ける予定だったが、金守珍(新宿梁山泊主…
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劇団俳優座「狙撃兵」 主人公はあの女性候補にソックリ
カナダ演劇界の鬼才ジョージ・F・ウォーカーの日本初演作。 舞台はカナダのとある町。アフガニスタン戦線に従軍し優秀な狙撃兵としてタリバンを掃討したディーン(仙名翔一)は帰還したはいいが、人殺し…
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井上ひさし作「紙屋町さくらホテル」問う 戦争責任の所在
1997年に新国立劇場のこけら落とし作品として井上ひさしが書き下ろし、以降、こまつ座で再演を重ね今回で4演目。今回はキャストを一新しての上演だ。演出は鵜山仁。ピアノ演奏は神崎亜子。 舞台は1…
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浅草レビュー「虎姫一座」懐かしの60年代を突っ走れ!
レビュー発祥の地・浅草六区で、日本のエンターテインメント業界ではほとんど例のない超ロングラン公演を続けているのが「虎姫一座」。 タイトル通り、60年代ポップスや昭和の歌謡曲を中心に、若い女性…
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2組の夫婦に見る運命…人間の幸、不幸は誰が決めるのか
自衛権を行使し「国際協力隊」を立ち上げた総理大臣の娘が某国で捕らわれた。さて総理は……(15年「稚拙で猥雑な戦争劇場」)、殺処分を待つ犬が突然人間の言葉を話し始め……(15年「イヌジニ」)といった社…
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哀惜に満ちた傑作喜劇 劇団道学先生「丸茂芸能社の落日」
舞台は大阪万博(1970年)が終わった頃、宮崎県のある港町。かつては南九州随一の隆盛を誇った「丸茂芸能社」自慢の映画館「丸劇」も今は高度経済成長に乗り遅れ、さびれた繁華街で最後の一軒となってしまい、…
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戦後民主主義の原点を問う 俳優座「反応工程」の信念
大正アナキストたちの青春群像を描いた「美しきものの伝説」、足尾鉱毒問題に生涯を捧げた田中正造を主人公にした「明治の柩」など日本近代史の裏面を骨太に描く劇作家・宮本研(88年没)が1957年に書き下ろ…
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演劇への愛に満ちた犯罪コメディー「フォーカード」
「スティング」「ペーパームーン」など、詐欺師映画の名作をほうふつとさせながら、ヒューマンな笑いに満ちた傑作コメディーだ。 二十数年前、新劇系劇団「新流」の俳優養成所で将来を嘱望されたものの、あ…
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3.11後の日本の狂騒そのもの「マハゴニー市の興亡」
舞台はアメリカ。警察に追われ北の金鉱地帯に向かう怪しげな一団、ベグビック(柴崎美納)、ヴィリー(田中悟)、三位一体のモーゼ(酒井宗親)の3人。彼らが荒野でおこした都市「マハゴニー」は全世界の欲望を吸…
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てがみ座「対岸の永遠」 重厚な翻訳劇のような卓抜な愛憎劇
「蜜柑とユウウツ~茨木のり子異聞~」で鶴屋南北賞を受賞した脚本家・長田育恵の新作。 舞台は1999年のロシア、サンクトペテルブルク。旧ソ連時代にはレニングラードと呼ばれた都市。古びた共同住宅に…
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トラッシュマスターズ「猥り現(みだりうつつ)」
東京近郊のさびれた商店街のスナック。経営者は敬虔なムスリム(イスラム教徒)であるハサン(高橋洋介)。この店に集うのは、ハサンの同胞のシングルマザー・未来(岡本有紀)、店の大家でもある不動産屋・御手洗…
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ほど良くスパイスきいた人情喜劇の傑作「星屑の町 完結編」
売れないムード歌謡コーラスグループを主人公にした人情喜劇。22年前にスタートした人気シリーズも回を重ね、今回は8年ぶりの新作公演だ。 舞台は函館のグランドキャバレー「海峡」。ここで、散り散り…
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二兎社「書く女」 陰影に富む女優・黒木華の圧倒的な演技力
主人公は樋口一葉。井上ひさしの作品に、家族制度に縛られた一葉の不遇な生涯を笑いで包みながら明治という時代と切り結んだ「頭痛肩こり樋口一葉」という評伝劇があるが、永井愛(作・演出)の「書く女」は、自立…
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劇団チョコレートケーキwithパンダ・ラ・コンチャン「ライン(国境)の向こう」
キナ臭い世相を反映した作品だ。 舞台は第2次世界大戦後の日本。日本は降伏し敗戦を迎えたが、その結果、北と南に分断されている。東北・北海道はソ連陣営の「日本人民共和国」、関東以南は米英陣営の「…
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加藤健一事務所「女学生とムッシュ・アンリ」
フランスで大ヒットし、映画化された作品の日本初演。 舞台は妻に先立たれ、独り暮らしをする元会計士の老人アンリ(加藤健一)の部屋。ある日、コンスタンスと名乗る女子大生(瀬戸早妃)が訪れる。アン…