五木寛之 流されゆく日々
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連載11696回 「君たちはどうボケるか」 (1)
先日、こんな川柳が新聞の投稿欄にのっていた。 「ボケてやる 化けてやるより効き目あり」(児玉暢夫・作) 「化けて出てやる、この怨み果たさずにはおくものか」 というのは定番のセリフだ。化けて出…
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連載11695回 暑中「怠談」申し上げます <5>
(昨日のつづき) 「話は変りますが」 と、Q青年、ちょっと改まった口調で、 「例の<チャットGPT>の問題、五木さんはどう思われますか」 「チャット? ああ、あれか<生成AI>とか、その手の…
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連載11694回 暑中「怠談」申し上げます <4>
(昨日のつづき) 私の父親の名前は「信蔵」である。 なんとなく古くさい名前だ。法名は「釋浄信」。 若くして亡くなった弟の名前は、邦之だった。したがって法名は<釋浄邦>。 「それじゃイツキ…
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連載11693回 暑中「怠談」申し上げます <3>
(昨日のつづき) Q青年との雑談は、だらだらと、とりとめもなく続く。 「イツキさんは子供の頃、どんな本を読んでたんですか」 「子供の頃って、いくつぐらいの時の話だい」 「まあ、小学生の頃とか…
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連載11692回 暑中「怠談」申し上げます <2>
(昨日のつづき) 「ぼくは体重を計ったことないんですよ」 と、若い編集者、Q君は自慢気にいう。 「そのかわり、腹囲は気をつけているんです。スラックスのベルトの目が、いつも一定になるように――」…
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連載11691回 暑中「怠談」申し上げます <1>
90歳の壁をこえて、ほぼ1年が過ぎた。来月末には91歳である。 同年の石原慎太郎氏や、大島渚、小田実の諸氏もすでに世を去って、「孤影残照」といった感じ。 目下、杖をついてトボトボ歩いているの…
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連載11690回 「ベ平連」と「ウ平連」 <5>
(昨日のつづき) なぜ『ウ平連』が登場しないのか、という私の疑問に対して、友人の老ジャーナリストが言った。 「それは理由がある」 「小田実がいないってことかね」 「ちがう。錯覚しちゃいけない…
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連載11689回 「ベ平連」と「ウ平連」 <4>
(昨日のつづき) ウクライナ戦争について、コメントを求められることがしばしばある。 そんなとき、思わず口ごもってしまうのは、私の側に、現在の国際政治についての常識というか、基礎的な知識が欠けて…
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連載11688回 「ベ平連」と「ウ平連」 <3>
(昨日のつづき) 私の周辺にも、テレビで脱出する難民の姿を見て、眠れなかったという人が沢山いた。 ベトナム戦争のときは、特別に関心のある人は別として、一般の日本人はそれほど強い精神的ショックは…
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連載11687回 「ベ平連」と「ウ平連」 <2>
(昨日のつづき) 「ベヘーレン? なんですか、それ」 と、聞き返されて、とっさに返事ができないのは、意表を突かれた反応だったからである。 「ベ平連、って、聞いたことない?」 「ないです。いつ…
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連載11686回 「ベ平連」と「ウ平連」 <1>
私は政治と経済のことについては、ほとんど基礎的な知識がない。 政治音痴、経済音痴という言葉をつかおうとして、あわててブレーキをかけた。<音痴>という表現を差別的に用いているのではないかと気になっ…
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連載11685回 我流の養生法の限界 <5>
(昨日のつづき) このところ台風や豪雨のせいか、どうも体調がよろしくない。 喉に違和感があり、咽頭ガンかな、とふと不安に思ったりする。 なぜ病院にいって調べてもらわないんだ、と、自分を叱る…
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連載11684回 我流の養生法の限界 <4>
(昨日のつづき) いずれにせよ、矛盾だらけの人間世界で、私たちは寿命がつきるまでは生きなければならない。 高齢者が激増しつつあるのは、日本国だけではないのである。 かつては「人生五十年」と…
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連載11683回 我流の養生法の限界 <3>
(昨日のつづき) この数日、ひどく天候が不安定だったわりには、人出が多かった。 行楽地はもちろん、いろんな所に旅行者が押しかけているようだ。インバウンドのお客さんが多いのは納得がいく。円安のせ…
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連載11682回 我流の養生法の限界 <2>
(昨日のつづき) 今夜のテレビは、台風7号接近のニュースばかり。 これほど気象関係のニュースの多い国は世界でも少いのではあるまいか。明日(15日)の朝にかけて相当な雨が降るという。空の便は70…
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連載11681回 我流の養生法の限界 <1>
なんだかひどくコンビニが混んでると思ってたら、台風と大雨の接近のせいらしい。 どことなく頭皮がピリピリしている感じがする。丸坊主にしたので、気圧の変化に、いっそう敏感になったのかもしれない。 …
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連載11680回 髪は抜けても舌は <4>
(昨日のつづき) 故・松永伍一さんとは、何度やったかわからないくらいに対談をした。何冊かのシリーズ本として刊行されている。 対談集は、何冊だしたか憶えていないくらいに出してきた。 はじめて…
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連載11679回 髪は抜けても舌は <3>
(昨日のつづき) 横山剣さんは都会っ子だから、こっちが何を言っても適当に受けてくれて、話は快調にすすんだ。 対談を終えて、そのまますぐに引揚げる。以前なら食事でもご一緒して、飲めない酒の1、2…
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連載11678回 髪は抜けても舌は <2>
(昨日のつづき) 私はずいぶん長く横浜に住んでいる。 金沢にしばらく暮らして、地元の空気にもやっとなじんだ頃、不意に生活を変えたくなった。 幼い頃から転勤続きの家庭に育ったせいで、長く一カ…
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連載11677回 髪は抜けても舌は <1>
メジャーリーグの大谷選手の足もとにもおよばないが、先週から今週にかけて対談と講演の3連チャンである。 まず、<クレイジーケンバンド>の横山剣さんと、3度目の対談。 シリーズ連続対談として『小…