孤独のキネマ
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「遥かなる山の呼び声」去って行く男とすがりつく女の物語
ふらりと現れたガンマンが悪党を退治する映画「シェーン」。本作はその主題曲「遥かなる山の呼び声」をタイトルにした。「幸福の黄色いハンカチ」(1977年)に続く山田洋次監督と高倉健、倍賞千恵子の作品であ…
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「地獄の黙示録」ウィラードは1945年のマッカーサーか
カンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞。原案はJ・コンラッドの小説「闇の奥」だ。 1969年夏、ウィラード大尉(マーティン・シーン)は情報司令部に呼ばれ、元作戦将校カーツ大佐(マーロン・ブラン…
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「激動の昭和史 沖縄決戦」沖縄の悲劇を弁証法的に考える
監督は「日本のいちばん長い日」の岡本喜八、脚本は新藤兼人が担当。1945年3~6月の沖縄の死闘を描く。 44年7月、米軍はサイパン島を陥落させ、日本の喉元に匕首(あいくち)を突きつけた。大本…
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「レイルウェイ 運命の旅路」拷問を描いた“反日”映画か?
第2次大戦中、日本軍の捕虜になった英国人の苦悩を描く。主人公のE・ローマクスの実体験を映画化した。 1988年、退役軍人のローマクス(コリン・ファース)は看護師のパティ(ニコール・キッドマン…
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「東京裁判」4時間37分に凝縮された日本人全員の“十字架”
第35回ベルリン国際映画祭国際評論家連盟賞を受賞。渋谷「ユーロスペース」で上映中だ。先日デジタルリマスター版BD&DVDが発売された。 内容はご存じのとおり。1946年5月から48年11月ま…
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「TATTOO[刺青]あり」環境のせいか、それとも殺人鬼か
高橋伴明監督の出世作。本作がきっかけで関根恵子(高橋恵子)と結婚した。1979年1月に起きた三菱銀行人質事件の犯人・梅川昭美がモデルだ。先日BDとDVDが発売された。 竹田明夫(宇崎竜童)は…
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「十三人の刺客」続く残酷描写 長すぎる35分間の斬り合い
1963年の工藤栄一版をリメーク。稲垣吾郎目当てで封切りを見に行き、グロな残酷描写に絶句した女性もいた。 江戸時代後期。将軍の異母弟である明石藩主・松平斉韶(なりつぐ=稲垣)は残虐行為を繰り…
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「フラガール」炭鉱町で女たちはフラダンスに人生を賭けた
蒼井優と山里亮太が結婚した。この「フラガール」で蒼井と共演した山崎静代から山里が紹介を受けたというから、人間どこにチャンスがあるか分からない。本作は常磐ハワイアンセンター(現・スパリゾートハワイアン…
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「少年H」水谷豊演じる主人公の父が子に諭す戦争の愚かさ
先日亡くなった降旗康男監督(享年84)の代表作のひとつ。戦中・戦後の世相を描いた。 1941年、神戸に住む小学生のH(吉岡竜輝)は仕立屋の父・盛夫(水谷豊)と家族4人で暮らしている。世間は戦…
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「アマデウス」神は下劣な若造を天才に選んだ
アカデミー賞作品賞など8部門を受賞。先日、BD&DVDのセットが発売された。 モーツァルト(トム・ハルス)の死から32年、宮廷作曲家のサリエリ(F・マーリー・エイブラハム)が「彼を殺したのは…
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艶やかな「地獄門」故・京マチ子さんが演じる悲しき献身愛
京マチ子が亡くなった(享年95)。出演作の「羅生門」(1950年)、「雨月物語」(53年)が国際的な映画賞を獲得、本作はカンヌ国際映画祭グランプリに輝いた。「鍵」(59年)では白い柔肌を、「他人の顔…
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「フェリーニのローマ」戦車と裸馬が駆ける狂乱の環状道路
フェリーニがローマへの愛を捧げた作品。ストーリーはなく、荒唐無稽な映像が続く。「世にも怪奇な物語」(1968年)の「悪魔の首飾り」が好きな人は必見だ。 1930年代、ひとりの若者がローマのア…
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「早春」サラリーマンの悲哀で味つけしたある夫婦の危機
夫婦の危機を描いた作品。 東京・丸ビルの会社に勤める杉山(池部良)は妻の昌子(淡島千景)と結婚8年。通勤仲間の行楽グループに入っている。ある夜、メンバーの千代(岸恵子)と食事し、誘惑に勝てず…
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「やくざの墓場 くちなしの花」極道と警官が癒着するワケ
警察と暴力団の癒着を描く。国立映画アーカイブ(京橋)で開催中の「映画監督 深作欣二」で5月3、16日に上映される。「県警対組織暴力」(75年)の姉妹編のような内容だ。 関西の大都市。巨大組織…
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「水のないプール」昏睡レイプ魔役は内田裕也の原点か
先日亡くなった内田裕也が本格的な映画出演を果たした作品。実際の事件をドラマ化した。中村れい子の美乳とくびれたウエスト、肉厚の唇が素晴らしい。 地下鉄職員の男(内田)は夜の公園でじゅん(MIE…
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「サンセット大通り」が描く愛と栄光を求めた女優の末路
サンセット大通りといってもパレードの映画やミュージカルではない。ハリウッドの大通りの屋敷で起きた事件を描いた作品。アカデミー賞の11部門にノミネートされ、3部門で受賞した。 ある邸宅のプール…
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「曽我兄弟 富士の夜襲」に見る仇討ちと特攻隊の相似形
日本の3大仇討ちは「赤穂浪士の討ち入り」と「荒木又右衛門の鍵屋の辻の決闘」、それに曽我兄弟だ。本作は東千代之介、中村錦之助らのオールスター共演。今月27日~4月2日にラピュタ阿佐ケ谷で上映される。 …
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「流転の王妃」愛新覚羅浩が乗り越えた政略結婚の生き地獄
女優の田中絹代は映画監督としても作品を残した。本作はその一本。満州国皇帝・愛新覚羅溥儀の弟・溥傑に嫁いだ嵯峨侯爵家の娘・浩(ひろ)がモデルだ。先日、DVDが発売された。 1936年、菅原家の…
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「桜田門外ノ変」どこか喜劇じみた大老・伊井直弼の最期
先週に続いて佐藤純彌監督の作品を紹介。 安政7(1860)年2月、水戸藩士・関鉄之介(大沢たかお)は妻子と別れて江戸に向かった。目的は大老・井伊直弼(伊武雅刀)の暗殺だ。3月3日、関をリーダ…
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「未完の対局」侵略戦争に翻弄される父と子の悲劇
佐藤純彌監督が死去した(享年86)。彼が戦後初の日中合作映画として世に送り出したのがこの作品だ。観賞に囲碁の知識は必要ない。 1924年、囲碁の名棋士・松波(三国連太郎)は中国の棋王と呼ばれ…