孤独のキネマ
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「少年H」水谷豊演じる主人公の父が子に諭す戦争の愚かさ
先日亡くなった降旗康男監督(享年84)の代表作のひとつ。戦中・戦後の世相を描いた。 1941年、神戸に住む小学生のH(吉岡竜輝)は仕立屋の父・盛夫(水谷豊)と家族4人で暮らしている。世間は戦…
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「アマデウス」神は下劣な若造を天才に選んだ
アカデミー賞作品賞など8部門を受賞。先日、BD&DVDのセットが発売された。 モーツァルト(トム・ハルス)の死から32年、宮廷作曲家のサリエリ(F・マーリー・エイブラハム)が「彼を殺したのは…
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艶やかな「地獄門」故・京マチ子さんが演じる悲しき献身愛
京マチ子が亡くなった(享年95)。出演作の「羅生門」(1950年)、「雨月物語」(53年)が国際的な映画賞を獲得、本作はカンヌ国際映画祭グランプリに輝いた。「鍵」(59年)では白い柔肌を、「他人の顔…
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「フェリーニのローマ」戦車と裸馬が駆ける狂乱の環状道路
フェリーニがローマへの愛を捧げた作品。ストーリーはなく、荒唐無稽な映像が続く。「世にも怪奇な物語」(1968年)の「悪魔の首飾り」が好きな人は必見だ。 1930年代、ひとりの若者がローマのア…
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「早春」サラリーマンの悲哀で味つけしたある夫婦の危機
夫婦の危機を描いた作品。 東京・丸ビルの会社に勤める杉山(池部良)は妻の昌子(淡島千景)と結婚8年。通勤仲間の行楽グループに入っている。ある夜、メンバーの千代(岸恵子)と食事し、誘惑に勝てず…
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「やくざの墓場 くちなしの花」極道と警官が癒着するワケ
警察と暴力団の癒着を描く。国立映画アーカイブ(京橋)で開催中の「映画監督 深作欣二」で5月3、16日に上映される。「県警対組織暴力」(75年)の姉妹編のような内容だ。 関西の大都市。巨大組織…
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「水のないプール」昏睡レイプ魔役は内田裕也の原点か
先日亡くなった内田裕也が本格的な映画出演を果たした作品。実際の事件をドラマ化した。中村れい子の美乳とくびれたウエスト、肉厚の唇が素晴らしい。 地下鉄職員の男(内田)は夜の公園でじゅん(MIE…
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「サンセット大通り」が描く愛と栄光を求めた女優の末路
サンセット大通りといってもパレードの映画やミュージカルではない。ハリウッドの大通りの屋敷で起きた事件を描いた作品。アカデミー賞の11部門にノミネートされ、3部門で受賞した。 ある邸宅のプール…
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「曽我兄弟 富士の夜襲」に見る仇討ちと特攻隊の相似形
日本の3大仇討ちは「赤穂浪士の討ち入り」と「荒木又右衛門の鍵屋の辻の決闘」、それに曽我兄弟だ。本作は東千代之介、中村錦之助らのオールスター共演。今月27日~4月2日にラピュタ阿佐ケ谷で上映される。 …
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「流転の王妃」愛新覚羅浩が乗り越えた政略結婚の生き地獄
女優の田中絹代は映画監督としても作品を残した。本作はその一本。満州国皇帝・愛新覚羅溥儀の弟・溥傑に嫁いだ嵯峨侯爵家の娘・浩(ひろ)がモデルだ。先日、DVDが発売された。 1936年、菅原家の…
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「桜田門外ノ変」どこか喜劇じみた大老・伊井直弼の最期
先週に続いて佐藤純彌監督の作品を紹介。 安政7(1860)年2月、水戸藩士・関鉄之介(大沢たかお)は妻子と別れて江戸に向かった。目的は大老・井伊直弼(伊武雅刀)の暗殺だ。3月3日、関をリーダ…
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「未完の対局」侵略戦争に翻弄される父と子の悲劇
佐藤純彌監督が死去した(享年86)。彼が戦後初の日中合作映画として世に送り出したのがこの作品だ。観賞に囲碁の知識は必要ない。 1924年、囲碁の名棋士・松波(三国連太郎)は中国の棋王と呼ばれ…
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「実録外伝 大阪電撃作戦」陸軍に学んだ山口組の侵略戦争
1960年に大阪で起きた明友会事件を映画化。タイトルの「電撃作戦」は山口組がわずか2週間で明友会を壊滅させたことを意味する。 ヤクザ組織が群立する大阪に1000人の勢力を自称する愚連隊組織の…
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「恐怖のメロディ」じわじわ迫るストーカー女の“狂人化”
クリント・イーストウッド(88)が65歳下の女性と交際中と報じられた。女性はミック・ジャガーの元カノだとか。“イーストウッドと女”で思い出したのが本作。彼の初監督作品だ。 ラジオのDJを務め…
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「尼僧ヨアンナ」尼僧院の悪魔払いで描く愛欲と狂気の相克
カンヌ国際映画祭審査員特別賞を受賞。尼僧院での悪魔払いを描いた。 17世紀のポーランドの寒村にスリン神父(ミェチスワフ・ヴォイト)が到着した。彼の使命はこの地の尼僧長を務めるヨアンナ(ルツィ…
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「ゴッドファーザー PARTⅡ」戦国時代と被るマフィア抗争
「ゴッドファーザー」(1972年)の続編でロバート・デ・ニーロの出世作。「PART Ⅱ」という言葉は本作から広まった。続編も高評価を受けた映画はこれが初めてといっていい。 前作で父ビトー・コル…
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「夜行列車」揺れ動く女の情念とうなだれた後ろ姿が見もの
「尼僧ヨアンナ」(1961年)でカンヌ国際映画祭審査員特別賞を受賞したカヴァレロヴィッチ監督の代表作のひとつ。ポーランド版女性映画だ。 ポーランド中心部からバルト海に向かう夜行列車に人々が乗り…
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密閉空間で襲いかかる「エイリアン」は最強のモンスター
公開から40年。誰もが一度は見たことがあるだろう。 西暦2122年、宇宙貨物船が知的生命体からの信号を感知して3人のクルーが未知の惑星を調査、宇宙人の化石を発見する。生命体の卵を調べていたケ…
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「女が愛して憎むとき」若尾文子と田村二郎にみる男女の業
「女が階段を上る時」(60年、成瀬巳喜男監督)で銀座の女を描いた脚本家の菊島隆三が舞台を大阪に移した作品。 北新地でバーを営む敏子(若尾文子)は美人ママとして評判を呼び、客は敏子に男がいるので…
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「山桜」にみる“運命の出会いまで結婚は繰り返す”の教訓
藤沢周平の時代小説を映画化。 北国の小藩に暮らす野江(田中麗奈)は夫に先立たれ、今は磯村という武家に嫁いでいる。この家の義父は貸金を営んで苛烈な取り立てをする上に、重臣の諏訪に取り入って私腹…