デス・マーチ
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(37)4時間後には記者会見が
いまにも殴りかからんばかりに、佐久間の両拳が握り締められた。 だが、正木は平然とつづけた。 「あなたは自分の手柄のためなら他人を踏みにじってもいいと思っている」 鼻を鳴らし、佐…
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(36)わたしに説教するつもりか
足早に改札を抜け、トライアングルクロックの下で佐久間が出てくるのを待ち構えた。通勤時間だったが、待ち合わせをしている者が何人かいる。 一分もせずに、佐久間が改札を出てきた。こちらに気づくと、…
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(35)コインロッカーに1枚の写真
京急品川駅から、いったんJRの構内に入った。 新幹線の改札口前にある朝からやっているカフェで軽くホットサンドとコーヒーを腹に入れる。昨夜からなにも食べていなかったのを、やっと思い出したのだ。…
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(34)永山の言葉が頭から離れない
ひと晩じゅう正木はまんじりともせず、夜が明ける前に京急三崎口駅まで歩き、始発で東京に戻った。寒さに震えつつ、まだ暗い道をたどっていき、駅の照明が見えたときにはほっとしたものだった。ほかにもサラリーマ…
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(33)部長、まずいことになりました
正木は驚いて永山の顔をまじまじと見た。 明日の正午に記者会見をするということは、会社側としてはそれまでに何とかしなくてはならないということだ。 試されている。 たかがMRとは…
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(32)忠実なふりをしているだけ
失踪を偽装し、金子製薬の不正を訴える。 永山たちの計画は、わかった。それが「必要悪」かもしれないのも理解できる。 しかし、いったい正木にどうしろというのか。 問うつもりで永山…
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(31)入管を使って無関係の者を人質に
長椅子から立ち、近づいてきた永山に、正木は視線を向けた。 「このことを、きみは佐久間部長に報告するかね」 さんざん種明かしをされたが、それを正木がどう扱うのかと尋ねているのだ。 …
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(30)いったいあんたらは何者なんだ
「来たようですね」 秋元が永山の方を振り返った。 「十一時半か」 永山が腕時計に目を落としてつぶやいた。 「どうします」 「待ってもらうしかないな」 「いったい…
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(29)ただ暴露するだけじゃ潰される
正木は、まじまじと秋元の顔を見た。 この男は、いったい何者だ。 金子製薬の開発部長と東京出入国管理局の局長が高校時代の先輩後輩だということまで調べ上げ、隠し撮りまでやっている。 …
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(28)写真に東京出入国管理局の男が
永山が隣にいた娘の朱里に身体を向け、突然頭を下げた。 「すまない。テインタンのことは、すべてわたしのせいだった」 「どういうこと、それ」 唐突なふるまいに戸惑った朱里が、薄気味悪…
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(27)金子製薬に軍事研究の助成金
傷や炎症の回復がいままでより何倍も速くなる。 それは怪我をした者の回復を助ける画期的な医薬品に違いない。痛みも緩和できるというのだから、医学界は大いに歓迎するはずだ。 だが、それが戦…
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(26)医薬品には善も悪もない
「なにがどうなっているのか、まるでわかりません。最初から説明お願いします」 正木は永山と向き合うように椅子に座り直した。 「よかろう。わたしが金子製薬に招かれたのは、三年前だ。武蔵小杉研…
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(25)あんたは疑われているんだ
振り返ろうとしたが、後頭部の痛みで満足に振り返れなかった。 回り込んできた姿が目に入り、正木は目をしばたたいた。 「この前はどうも」 ホスト風の男と見て取ったのは間違いだったか…
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(24)殺せと命じられたんじゃないのか
意識を取り戻すと、まず後頭部の痛みに飛び上がりかかった。 だが、身体が思うように動かない。そのはずで、椅子に縛りつけられていた。椅子の背もたれに後ろ手に縛られ、その上両足も括られている。 …
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(23)金儲けより驚かせたい気持ち
京急三崎口駅から荒崎までは、少し距離がある。 夏なら海水浴客で賑わうのだろうが、冬の夜にやってくる者はほとんどいない。海からの風が吹きつけてくるが、都心より緯度が低いからか、さほど寒さは感じ…
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(22)永山は三浦半島の荒崎に
あわただしくコートを着込みだした朱里に、正木は尋ねた。 「先生はおひとりでしたか、それとも」 朱里の動きが止まり、あらためて正木に目を向けてきた。 重ねて訊いた。 「誰か…
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(21)この男に見覚えはありませんか
「ご主人はミャンマーでなにか」 まずいことでもやっていたのかと尋ねかけ、正木は口を濁した。 「夫は学者です。民主的なミャンマーを支持しているだけです」 朱里はきっぱりとこたえた。…
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(20)夫の難民申請が突如却下に
正木が不意をついて尋ねた言葉に、朱里は明らかに反応した。 「出入国管理局。きのう口にされたニュウカンというのは、そのことですよね」 どう返事をすればよいのか、朱里は迷っている。唇を舐め…
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(19)ニュウカンとは何ですか
「月に二度こちらにいらっしゃる以外に電話などで連絡は」 「たまにするくらいです」 嘘は言っていないと感じる。だが、正木には朱里の口調があくまで冷静なのが気にかかった。 「先生が新丸…
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(18)警護しないと身の危険があると
「永山先生の居場所をご存じありませんか」 朱里は意味がわからないというように首をかしげた。その表情からは、なにも読み取れない。 「平日ですから、研究所に行っているはずですけれど」 …