医療だけでは幸せになれない
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マスク着用の効果の検討で「コクランレビュー」を取り上げなかった理由
今回はこれまでの議論をいったん休憩して、これまで紹介してこなかった論文について取り上げたい。医学研究をまず探しに行く際、「システマティックレビュー」(注1)と呼ばれる複数の論文をもれなく検索し、批判…
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医療の中でのギャップ…「診療所」と「病院」のコロナ重症者の確率の違い
ここまでは論文と個別のギャップについて取り上げてきたが、今回は「現場の違い」によるギャップについて検討したい。 「マスク着用を継続すべきだ」という意見は病院医師から発せられることが多く、「マ…
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マスクを常に着用する場合の「害」の検討はなぜ難しいのか
引き続き、学校現場でのマスク着用についてである。「マスクの着用を求めない」というガイドラインの(注1)記述は、学校という場所においては、マスクをしてもしなくてもよいというよりは「しないほうがよい」と…
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いまだに学校の感染対策に医学研究の成果が考慮されないのはなぜか
引き続き、学校でのマスクの扱いについて取り上げていきたい。学校での感染対策に関して、文部科学省が2023年5月に「学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル」を公表している。それ…
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インフルとコロナ感染拡大…学校関係者はマスクに関する科学的研究成果を知るべきだ
学校でのマスク着用効果の続きである。前回紹介したのはマスク着用前後でのコロナ感染の増加を見た介入研究であったが、前後比較にはその時々の流行に左右されるという決定的な問題がある。そこで今回は同時期にマ…
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繰り返される学級閉鎖 …いまこそマスク着用の有用性についての科学的検証を行うべき
コロナとインフルエンザの季節外れの流行が重なり、学級閉鎖が全国で急増している。厚労省が公表している「インフルエンザ様疾患発生報告(学校欠席者数)」2023/24シーズン第5報(10月2日~8日)によ…
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論文と現実のギャップ…「サブグループ分析」で目の前の個人に近い人で解析
前回と同じ「論文結果と個人のギャップ」についてである。両者のギャップは埋めがたい。目の前の個人にぴったりする情報があることはまれである。ギャップがあるから論文に意味はないというのは簡単だ。しかし、意…
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論文世界と現実とのギャップを考える…人種より個々のばらつき
今回はバングラディッシュで行われたランダム化比較試験を例に、論文世界と現実のギャップについて具体的に検討したい。 この場合、いくつかの問題がある。決定的なのは論文の参加者と論文を元に実際の判…
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研究結果と個人の実感の差「予防のパラドックス」はなぜ起きるのか
引き続き、研究結果と個人のギャップについて取り上げていこう。マスクの問題に戻れば、「マスクが感染予防に有効」という論文であっても、その実情は、マスクを着けて感染しなかった人、マスクを着けずに感染した…
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「情報の当てはまり」について改めて考える…動物とヒトとの距離は遠い
「情報そのものの正しさ」と「当てはまりの正しさ」を区別して考える。そのことについて引き続き考えていきたい。 以前、試験管内の実験や動物実験による病態生理、メカニズムは仮説に過ぎないということを…
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人種差を問題にしつつ「動物データ」に納得する不思議さ
これまで「情報の正しさ」という問題を繰り返し取り上げてきた。その中でマスクについての情報を「ランダム化比較試験」「メタ分析」と呼ばれる研究結果で見てきた。情報そのものの正しさを最もよく保証するからだ…
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わからないことを受け入れる「ネガティブ・ケイパビリティー」こそが大切
今回はこれまでの議論を一度整理してまとめてみたい。内容的にはかなり専門的であるし、統計学的な考え方が基礎にないと理解が困難だろう。ただ問題は専門的な知識でもなく、統計学的な考え方でもない。それらを武…
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なぜ、感染症と高血圧の治療効果を同一に語ってはいけないのか
ここまで、情報そのものの正しさの問題を取り上げてきたが、その情報の正しさは常にある一定の集団についての結果であって、個別に起こることとの間には大きなギャップが存在する。これまで取り上げてきたマスクの…
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「一言主義」で失われる正しい情報…わかりやすい真実なんてない
「マスクは個人の判断で」という今、その判断に少しでもお役に立てれば、そんなつもりで書いている。しかし読者の中には一向にお役に立てていないというのが現実かもしれない。 実際の研究結果が示すものは…
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効果を示すさまざまな指標…「正しい指標」があるわけではない
これまでマスクの効果を検討した論文をいくつか紹介してきたが、その効果は主に「相対危険」という指標で報告されている。しかし、相対危険は数ある指標のうちのひとつに過ぎない。相対危険は、治療群と対照群の発…
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「メタ分析」の情報の氾濫はむしろ判断を混乱させる
前回、メタ分析の2つのバイアス、「出版バイアス」と「異質性バイアス」について説明した。今回は、その続きである。 メタ分析のためには、徹底的な漏れのない情報検索で候補となる研究を同定し、その中…
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「メタ分析」が最良のエビデンスとは限らない…出版バイアスと異質性バイアス
前回、「メタ分析」は多くのバイアスの影響を受けやすいという点を指摘した。それについて、実際の論文をもとにもう少し詳しく見ていこう。 まずは「出版バイアス」を取り上げよう。一般に研究結果は、効…
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マスクの効果を検討した「メタ分析」…1つの論文で多くの論文情報が手に入る
マスクの着用を勧めることによる感染予防効果をデンマークとバングラデシュで行われた2つの研究を通して検討してきた。こうして一つ一つの論文を検討するには、探すのも大変だし、さらにそれを読むのにも手間がか…
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マスクの予防効果を検討…もうひとつのランダム化比較試験「バングラデシュの研究」
これまで取り上げてきたことを一度まとめておこう。 情報の表すものは「真実」「バイアス」「偶然」であって、バイアスには「情報バイアス」「選択バイアス」「交絡因子」がある。そのうち交絡因子をコン…
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「検定」の危うさと「推定」のあいまいさ…医者も理解しているとは限らない
「検定」と「推定」の続きである。統計学的な考え方は、身近であるようで、数学的に正確に理解しようとすると途端に難しくなる。実際、多くの医者も統計学を苦手にしている。統計学は多くの医学部で必修科目である。…