医療だけでは幸せになれない
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統計医学的検討…「有意差なし」は必ずしも「効果なし」の意味ではない
情報を基に医療を考えるには、統計学的な手法を知る必要がある。その統計学的検討には前回取り上げたさまざまな指標と、さらに「推定」と「検定」という2つの方法がある。情報を表す3つの「真実・バイアス・偶然…
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「統計学的検討」の指標はさまざま 何が起きているかをどう表現するか
前回、デンマークのマスク推奨の効果を検討したランダム化比較試験について書いた。今回もその続きである。1カ月間のコロナ感染症が、マスク推奨群で1.8%、非推奨群で2.1%という結果であったが、この結果…
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マスクの効果を評価したランダム化比較試験 0.3ポイントでも条件が変われば…
今回はマスクの効果を評価したランダム化比較試験について紹介しよう。ようやく、やっとのことでというか、あるいはすでに読むのをやめてしまった人が多いかもしれないが、やめてしまった人がまた戻ってきてくれる…
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選択バイアス、情報バイアス、交絡因子…コントロールできるバイアスと、できないもの
情報を得て、考えて、判断に至るまでの距離について書いているのだが、その隔たりは意外に長い。情報そのものの問題をまず考慮しないといけないのだが、そこにはバイアスが避けられない。バイアスについて知らずに…
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「正しい情報」のあいまいさ…バイアスが情報をゆがめる
「統計学的に正しい情報」から、「薬を飲むこの人にとって正しい情報」までの距離を考えるといっても丸腰ではどう考えていいのか見当がつかないだろう。ここでは考えるためのさまざまな武器について、しばらく取り上…
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統計学的に「正しい」が薬を飲む「正しさ」にはつながらない
インターネットの普及は、何か調べたいと思えば、だれでも調べられる世界を実現した。その半面、情報が多すぎてどうにもならない状況も生み出した。情報がないよりはましかもしれないが、まったく正反対の情報がど…
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「原因」と「結果」で考える社会の落とし穴…マスクの効果における病態生理と統計学的事実
今回は非感染者のマスクの効果について、同じように病態生理と疫学的事実で考えてみる。新型コロナ感染症はエアロゾル感染によって広がるということがわかっている。エアロゾルとは空気中を漂うウイルスを含んだ粒…
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コレラをめぐる「病態生理」と「疫学的事実」の対立…コッホとペッテンコーフェル
前回、病態生理学的に正しい情報と疫学的、統計学的に正しい情報について説明したが、前者は個別の患者の体で起きていることを説明しやすいし、後者は集団で何が起きているかを示している。この2つの正しさは時に…
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医学的に正しい情報とは…「病態生理学的正しさ」と「疫学的正しさ」の違い
医療は凄まじい勢いで変化しているかに見える。半面、人間は一向に変わっていない。1990年にスタートした「ヒトゲノム計画」を端緒に「ゲノムサイエンス」が進み、それを土台とした「ゲノム情報」を基にした患…
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コロナと「EBM=根拠に基づく医療」の実践 高血圧の治療がきっかけ
判断や行動より考えることを重視することは、私自身が常々考えてきたことだが、そのきっかけとなったのは、根拠に基づく医療「Evidence-Based Medicine:EBM」を実践する中で、論文を読…
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マスク着用に関する「個別」の考えと「一般的」な考え
先日、医者を対象とした臨床研究コースの研究発表会に参加したときのことである。複数の発表者が、「個人的な疑問としては」という言葉を枕にして自身の発表をしたのだが、そのあとに続く発表内容が、個人的どころ…
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コロナとマスク着用 「判断する」と「考え続ける」は相反する部分がある
国は3月13日以降、「個人の主体的な選択を尊重し、着用は個人の判断に委ねる」という判断を発表した。「自粛」と同じ流れである。ただその半面、<着用が効果的な場面>として、以下の状況ではマスク着用を推奨…
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対話型AIに聞いてみた ロックダウンと自粛の「倫理」
「ロックダウンと自粛の倫理」について考えてみたい。「倫理」というのはなかなか難しい。日常的にはほとんど使われない言葉だ。ただ身近なところでは、「不倫」というのがある。これは「倫理的でない恋愛」というこ…
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コロナはまだ未知なもの…いまは判断、行動にとらわれず、自由に思考すべき
新型コロナ感染症をネタに書き始めたものの、話題は別な方向へとそれていく。そもそもコロナは考えるための材料に過ぎない。コロナについて書きたい人はたくさんいるし、私自身コロナについて書きたいわけではない…
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迷うようなことはだいたいどっちでもいい…考え続けることが重要
本連載の2回目の記事がネットニュースに掲載され、複数のコメントが付いたが、読まれ方はいろいろだ。ある人は私を「コロナ=かぜ派」と読み、ある人は「かぜでない派」と読む。また別の人は、知りたいのは実態や…
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欧米の「ロックダウン」と日本の「外出自粛」…個人と全体の問題を考える
多くの個人にとって風邪に過ぎないコロナが、全体としては多くの重症者や死者をもたらし、医療機関に過大な負荷をかけ続けている。その相反する状況の中、日本や世界がどのように感染対策してきたかを振り返りなが…
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「コロナは風邪」論争の不毛 昔から解決できない問題に出口なし
「コロナは風邪である」といっても、「風邪でない」といっても、どちらにしても多くの反対があるだろう。コロナには、風邪としての側面と、風邪とは違う側面の両方があるといえば、多くの人が納得するかもしれない。…
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感染症の流行に終わりなし…不要不急の外出禁止がもたらした矛盾
2019年12月に原因不明の重症肺炎が中国で報告されてから、丸3年以上が経過した。この間、いろいろなことがあった。「あった」というのは正確な表現ではない。いまだ現在進行中である。日々、さまざまなこと…