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細田昌志ノンフィクション作家

1971年、岡山市生まれ、鳥取市育ち。CS放送「サムライTV」キャスターから放送作家としてラジオ、テレビの制作に携わり、ノンフィクション作家に。7月に「沢村忠に真空を飛ばせた男 昭和のプロモーター・野口修評伝」(新潮社)が、第43回講談社本田靖春ノンフィクション賞を受賞。

山口洋子は「波瀾万丈の3冠王」 権藤博は弔辞でそう述べた

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 洋子が相手の男の名前を尋ねると、ホステスはよもや婚約者と思わず《易々と名前を口にした》とある。《もしかして、私とのことは知らないのか、おそらくそうだ》と、彼女に害意がなかったことも示唆するが、そんなことは、もはやどうでもよかったはずだ。

 洋子は苦しんだ。権藤のにおいが残る自宅のベッドルームでは、《眠るどころか、物をとりにいくのも躊躇われた》というから当然かもしれない。

 こののち洋子が取った行動は、驚くべきものだった。権藤に対し婚約不履行の訴えを起こし、せしめた和解金500万円で「姫」を再開させたのである。

《いっそのことひどい悪女を演じぬかなければ、未練も断てない。男の前でいままで虫も殺さぬ可愛い女が、がらりと豹変してみせたのだ》(同)

 かくして泥沼の破局劇を演じながら、後年は関係を修復させ、よき友人となり、文芸誌で対談まで行っている。常人では想像もつかない行動規範である。「プロ市民」や「プロ彼女」という言葉があるように、山口洋子とは「プロ人間」かもしれない。

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