「あんぱん」「かくかくしかじか」で注目の芸大・美大のリアル…学費・入試難易度・就職率は?
東京藝大を目指す学生の予備校費はいくらかかる?驚きの金額
さらに、芸大・美大進学を難しくしている要因が学費の問題だ。
「国立、公立芸大の学費は年間100万円以下で、一般大学とそれほど変わりませんが、遅くても、高校から美術系予備校に通わないと、ほぼ合格できないといわています。例えば、東京藝大を目指す場合、年間の予備校授業料は、現役生で50万円ほど。浪人生だと受講時間が増えるので最低でも100万円以上はかかります。一般的には、合格するには2浪以上と言われており、大学入学までにかかる予備校費だけでも、300万円前後はかかると思っていいでしょう」(前出の講師)
東京には、いわゆる「東京五美大」と呼ばれる私立美術大学(多摩美術大学、武蔵野美術大学、東京造形大学、女子美術大学、日本大学藝術学部)があるが、例えば多摩美術大学の学費は1年間200万円程度だ。画材費などを加えると、さらに50万円ほどかかり、4年間で1000万円になる。医学部ほどではないが、学費は決して安くはない。
これだけの費用をかけて難関試験を何とか潜り抜けた先に受験者に明るい将来は待っているのだろうか。つまり、学費を払う親の立場からすると、「元は取れるのか?」「就職率はどうなるのか?」といったことがも気掛かりになる。
■“美大卒の就職先は美術教師”は昔の話
「数十年前までは、『美大なんて出ても就職できない』『アーティストになれるのは夢のまた夢』『学校の美術の先生が最も安定した就職先』なんて言われていました。しかし、今は、その概念は全く違うと言っていいと思います。確かに今も、最難関の東京藝大卒生ですら、アーティストとして世に名前で出てくる人は、数年に一人いるか、いないか。いわゆる絵だけを描いて食べていける人はめったにいません。しかし、就職という観点で見た場合、今の時代、『美大卒は就職できない』ということは全くありません」(美大関係者)
例えば、私立美術大学の「早慶」と言われる武蔵野美術大学と多摩美術大学の就職率を見てみると、23年度(24年3月卒業)の就職率は、武蔵美が93%。多摩美は、89%となっている。
「武蔵美はプロダクトデザイン、多摩美はグラフィックデザイン部門が非常に強いと言われており、しっかり大学で学び、普通に就職活動をすれば、大手企業に普通に就職できます。自動車からお菓子のパッケージまで、商品デザインはこういった美大出の人たちが大半です。日本画デザインなども、外資系企業が人材を探していたりと、アートは国境がありませんから、選択肢はより広がると言っても過言ではありません」(前出の美大関係者)
テクノロジーの進歩と共に美大生が学ぶ内容も随分と変わってきているという。映画『かくかくしかじか』や朝ドラ『あんぱん』に影響されて、来年度の入試はさらに倍率が高まりそうだ。