週末オススメ本ミシュラン
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「ドストエフスキー 黒い言葉」亀山郁夫著/集英社新書
今年はロシアの文豪ドストエフスキーの生誕200年にあたる特別の年だ。わが国におけるドストエフスキー研究と翻訳の第一人者である亀山郁夫氏(名古屋外国語大学学長)が素晴らしい作品を上梓した。 亀…
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「完全解説 ウルトラマン不滅の10大決戦」 古谷敏/やくみつる/佐々木徹著/集英社新書
テレビ番組の放送から半世紀以上経つというのに、ウルトラマンの人気は衰えない。それどころか、世代を超えてファン層を広げている。なぜそこまでウルトラマンが人気なのか。その謎を解くために、これまで数多くの…
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「さよならテレビ」阿武野勝彦著/平凡社新書
東海テレビのドキュメンタリーにはハッとさせられてきた。たとえば「死刑弁護人」であり、「ヤクザと憲法」である。ドキッとさせられたと言ってもいい。そのプロデューサー欄には、いつも、阿武野の名前があった。…
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「ミャンマー危機 選択を迫られる日本」永杉豊著/扶桑社新書
今年2月にクーデターを起こし、以後反対のデモを行う市民への弾圧をするミャンマー軍。多数の死者が出ているが、一体なぜこのような事態に陥ったのか。そして、実は日本にもミャンマーのクーデターは大きな影響を…
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「霞が関のリアル」NHK取材班/岩波書店
日本の若手エリートの質が悪くなっていることが、NHK取材班の意図とは異なる面で見えてくる。例えば、東大法学部から国家公務員試験総合職(区分は不明)にトップで合格した青年の話だ。 <官僚は最初の…
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「気がつけば警備員になっていた。」堀田孝之著/笠倉出版社
本書は、著者自身の警備員経験を描くドキュメントだ。警備員はよく目にする仕事だが、勤務実態はあまり知られていない。私もそうだったから、25時間連続勤務、1日の歩行距離が10キロといったこと自体に驚いた…
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「歌集 滑走路」萩原慎一郎著/角川文庫
「サンデー毎日」の6月27日号で、小沢一郎が地元の岩手の県議会選挙のことを語っている。 「達増拓也知事は選挙では共産も含め、与党の県議を全員応援した。自民党はカッカしていたが、与党県議は皆喜んだ…
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「安いニッポン」中藤玲著/日経プレミアシリーズ
まったく救いのない本である。今の日本のどうしようもない状況が事細かにデータとともに書かれている。本書の内容をざっくりと表現するとこうなる。 「コスパと安さばかり重視した結果日本の物価は上がらず…
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「つながり続けるこども食堂」湯浅誠著/中央公論新社
社会活動家の湯浅誠氏(東京大学先端科学技術研究センター特任教授)によるこども食堂の現状報告だ。 本書を読むと、こども食堂がさまざまな事情により食べられないこどもたちに食事を提供する場所という…
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「東京を捨てる コロナ移住のリアル」澤田晃宏著/中公新書ラクレ
本書は、コロナをきっかけに東京から淡路島に移住したルポライターの著者が、コロナ移住の実態を客観的に描いたものだ。移住体験を紹介する書籍はたくさんあるが、物書きのプロが書いたものは、段違いに読みやすい…
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「憲法を生きる人びと」 田中伸尚著/緑風出版
先日、韓流ドラマの「明成皇后」を見終えた。124話に及ぶ大作である。日本では、「朝鮮王朝末期の国母」の閔妃として知られる彼女は1895年に日本人の手によって虐殺された。首謀者の公使、三浦梧楼は「これ…
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「菅政権 東大話法とやってる感政治」宇佐美典也著/星海社新書
東大経由経産省キャリア官僚から抜け出した著者による一冊。菅政権及び、日本のエラい人による「何言ってるんだよ、こいつ……」と呆れる一言がいかにして生まれ、それがどうして現在の政治でまかり通っているのか…
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「サラ金の歴史」小島庸平著/中公新書
消費者金融(いわゆるサラ金)の歴史と現状に関するユニークな研究書だ。小島庸平氏(東京大学大学院経済学研究科准教授)は、とりあえず善悪の価値判断を留保して、現象としての消費者金融を客観的に解明しようと…
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「チャイナ・アセアンの衝撃」邉見伸弘著/日経BP
今から10年も経たないうちに中国のGDPが世界一になるだろう。そう言うと、「中国の統計は信用できないから、意味がない」という人がたくさんいる。日本人には、中国を見下している人が多いようだ。私自身は、…
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「コロナ時代のパンセ」辺見庸著/毎日新聞出版
コロナ禍で消毒を求められる。それを拒否するほどの“勇気”もないから、手指を洗い、うがいをする。 しかし、本来は毒というものは生きていく上で必要なものではないのか。それを消してしまって、あるい…
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喧嘩の流儀 菅義偉、知られざる履歴書読売新聞政治部著/新潮社/1650円
表紙にドカーンと菅氏が出ており、このタイトルと合わせると菅氏がこれまでにいかにして喧嘩をしまくって相手を屈服させ続けて総理にまで上り詰めたのか、といったことが書かれていると思うかもしれない。 …
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「特務 日本のインテリジェンス・コミュニティの歴史」リチャード・J・サミュエルズ著/日本経済新聞出版
稀に見るお粗末な本だ。本書を翻訳した小谷賢氏(日本大学危機管理学部教授)の名誉のために述べておくが、翻訳は正確で読みやすい。しかし、内容が酷い。 本書を読んで、太平洋戦争敗北以前の日本のイン…
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「いちばんたいせつなもの」斎藤貴男著/おとないちあき・イラスト 新日本出版社
斎藤貴男氏は、私が最も敬愛するジャーナリストだ。膨大な資料を読み漁り、インタビューを重ねることで、隠された真実を暴き、権力者を真っ向から批判する。テレビから干されても、裁判で訴えられても、彼のスタン…
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「新宗教の現在」いのうえせつこ著/花伝社
もちろん、だましたヤツが悪いのである。しかし、だまされた側がそう言っているだけでは、また、だまされてしまう。 信じるということは、相手に自分を預けてしまうことだと私は思っている。「信じること…
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「宇宙の奇跡を科学する」本間希樹著/扶桑社新書/860円+税
史上初のブラックホールの撮影に成功した国立天文台教授が宇宙・ブラックホール・撮影に至るまでを描く。理系の頭良過ぎる人の書く文章を読み続けるのは久しぶりだったが、妙な感覚に襲われた。 哲学書を…