週末オススメ本ミシュラン
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巷にあふれる定年後指南書をメッタ切り
高齢者が田舎に移住し、そこでいかに楽しくイキイキと生きているかを描く「人生の楽園」(テレビ朝日系)が高視聴率を獲得している。それだけ「豊かな第二の人生」に憧れている人が多いということだろう。 …
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勇ましいことを言うことが国益に適うのか再認識させられる
著者の藤田直央氏は、朝日新聞政治部の外交・安保・憲法担当記者で、ていねいな取材で定評がある。評者も外交官時代に藤田氏の取材を何度も受けたが、よく調査した上で質問をしてくるので手ごわい記者だった。 …
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醍醐味は報道に至る経緯が詳述されている点だ
パラダイス文書の分析に基づく報道が、世界一斉に解禁されたのは、昨年11月のことだった。パラダイス文書というのは、タックスへイブンであるケイマン諸島やバミューダ諸島に設立された法人や組合に関する流出文…
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誰が五輪やリニアを必要としているのか
菱は山口組の代紋を指すが、「六代目山口組分裂の病理と任侠山口組の革命」というこの本を読んでいって、第5章の「五輪とリニアは極道の米櫃」に、なるほどと思った。 今、リニア新幹線の建設工事をめぐ…
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若き頃の活躍と死の直前インタビューの格差
最近では「サザエさん」のスポンサー降板など、東芝をめぐっては暗いニュースがもう何年も続いている。東芝といえば、新社長就任の発表の席で会長(西田厚聰氏)と社長(佐々木則夫氏)が罵り合う姿を新社長である…
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人間のやっていた仕事が近未来になくなる現実を先取り
恐竜ロボットがフロント係を務めることで有名な「変なホテル」をつくった経営者・澤田秀雄氏の経営観が縦横無尽に語られている。「変なホテル」の基本概念は、ロボットを用いることによる徹底的な合理化だ。 <…
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20年間泡沫候補を追った迫真の現場報告
泡沫候補というのは、何なのだろうと私が思ったきっかけは、小池百合子東京都知事が圧勝した昨年の都知事選挙だった。 この選挙には上杉隆氏が立候補していたのだが、選挙報道では上杉氏も泡沫候補のひと…
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「エビデンス?ねーよそんなもん」
何年前のことになるのか、新聞労連に呼ばれて記者たちに話をしたことがある。 いささか挑発的に、「新聞記者は上品な仕事ではない。その起こりから言っても、ユスリ、タカリ、強盗の類いなのだ」と扇動し…
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性被害に対してとことん緩い男性の感覚
「総理に最も食い込む男」と呼ばれたジャーナリスト・山口敬之氏からのレイプ被害を実名で訴えた女性による書。性被害が女性に与える心身への苦痛と、課題が残る法律、いかんともしがたい警察の捜査手法の現状を実体…
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欧米やキリスト教の強い国で働くビジネスパーソンの必読書
一冊で日本と世界のキリスト教の歴史と教義がわかる、とても便利な本だ。初刷が1979年、2刷りが1986年に出た。その後、絶版になっていたが、古本市場では1万円以上の値段がつくこともあった。著者の藤代…
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医学界が反論できなければ近藤理論を認めたことになる
著者の近藤誠氏は、独自のがんに対する考え方で有名になった医師だ。著者の主張では、がんと呼ばれているものには2種類あり、ひとつは転移をしないがんもどき、もうひとつは転移をする本物のがんだ。がんもどきは…
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どこかに詩人の心を潜ませている
日々、仕事というものに忙殺されているに違いないビジネスマンに、ふと立ち止まってこの本を手に取ってもらいたい。ある山里の人々の暮らしを描いたこの“つくりものでない童話”に「豊かさとは何か」「生きるとは…
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椎名誠を思い出させたたけしの小説
「たけしがたどりついた“究極の愛”。凶暴なまでに純粋な、書下ろし恋愛小説」とうたわれた本書だが、普段の「オネエチャンとコーマン」的なイメージのビートたけし氏とは趣を異にする。 メール、LINE…
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民主主義だから読書が真価を発揮する
読書の必要性について、理論と実践の両面から考察した良書だ。橋爪大三郎氏は、教養を付けるためには読書が効果的と考えている。 <教養こそは、組織のトップのような、意思決定をする立場になるとよくわかりま…
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あの話術は、その場のひらめきだけではなかった
本書は、「ニュースステーション」でニュース界に革命を起こした久米宏の自伝だ。ただ、単なる回顧録ではなく、有用なコミュニケーションの教科書の意味合いもある。 私は、2000年から04年の最終回…
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張学良が突きつけた日本人への問い
1936年12月12日に「西安事件」は起こった。その8年前に中国東北部の軍閥の長だった父、張作霖を日本軍によって爆死させられていた張学良は、国民党を率いていた蒋介石に、中国共産党と戦わずに日本軍と戦…
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合理的な常識人が書いた幸せになれる行動様式
とにかく今の人生がイヤだったり、苦痛を強いられる人生を送っている人の中には本書の内容がピンとくるかもしれない。著者は7年間商社マンをやっていたが、「転勤の辞令が来たら会社を辞める」と決め、実際に会社…
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動物も人も群れをつくることには意味がある
講談社ブルーバックスには、理科系の専門教育を受けていない人でも最新の自然科学や技術を理解できるように説明している優れた本が多い。本書もそのひとつだ。高校の生物教科書では知ることができない進化に関する…
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誰でも親を抱えている限り認知症と戦わないといけない
本書は、認知症を患った母親の介護を行った男性の迫真のドキュメンタリーだ。こうした本は、これまでほとんどなかった。介護は、善し悪しは別として、女性に押し付けられることが多いし、仮に男性が介護をしたとし…
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日航123便墜落に自衛隊・米軍の影
群馬県上野村の御巣鷹の尾根に日航ジャンボ機が墜落してから32年。くしくも33回忌の今年、衝撃的な本が出た。著者は、自分もあの123便に乗っていたかもしれない元客室乗務員である。先輩や同僚の無念を背負…