人間のやっていた仕事が近未来になくなる現実を先取り
「変な経営論 澤田秀雄インタビュー」聞き手=桐山秀樹、丸本忠之/講談社現代新書
恐竜ロボットがフロント係を務めることで有名な「変なホテル」をつくった経営者・澤田秀雄氏の経営観が縦横無尽に語られている。「変なホテル」の基本概念は、ロボットを用いることによる徹底的な合理化だ。
<そもそもロボットホテルを作ろうと思ったわけではなく、「ロボットを使えば、少しは人件費を減らせるかな」ぐらいの感覚だった。だから、オープン時のロボットは6種類82体にすぎなかった。/ところが、ロボットの部分で注目されたので、そこからは意図的にロボットを増やすようにした。2017年8月現在、27種類233体ものロボットが働いている。ロボットホテルと呼ぶにふさわしい陣容になった。/すると何が起こったか? 開業時は30人もいたスタッフが、7人に激減したのだ(その間、2期棟が完成して、部屋数は72室から144室へ倍増しているにもかかわらずだ)。休日や、朝・昼・夜・夜間のシフトがあるから7人在籍しているだけで、ある時間帯に詰めているのは1~2人である>
ちなみに恐竜ロボットを使ったのは、奇をてらってのことではなく既存のロボットでは恐竜ロボットがいちばん丈夫だったからだ。ロボットの導入には1台500万~800万円かかるが、これならば年額の人件費で相殺できる。もっとも現状ではホテルの完全なロボット化は無理だ。
<ここまで人を減らせた理由は、掃除ロボットの導入だろう。床掃除や窓拭き、芝刈りといった作業をロボットがやってくれるようになり、人間の仕事はかなり減った。/掃除ロボットの性能もどんどん上がっているが、現時点で任せられないのは、浴室やトイレの掃除、ベッドメイキングなどだ。思ったより技術的ハードルが高く、まだしばらくはロボット化できそうにない。まあ、すべてをロボットがやる必要はない。30人を7人に減らせただけで、驚くほどの生産性向上なのだから>
AI(人工頭脳)が発達すれば、浴室やトイレの掃除、ベッドメイキングもロボットによって行うことができるようになるであろう。「変なホテル」は、従来、人間が行っていた仕事が近未来になくなる現実を先取りしている。★★★(選者・佐藤優)