大高宏雄の「日本映画界」最前線
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映画史に名を刻む…思想でなく役柄で生きた俳優・津川雅彦
津川雅彦さんの訃報に触れて最初に思い浮かべたのは若かりし頃、そしてトシをとってからの顔や表情の数々だった。若いときの飛び抜けた美男子ぶりが、人生の年輪を重ねるごとに相応の渋さを刻む風貌になっていく。…
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政治や社会意識が薄れる今こそ戦争名画をみて考えてみる
敗戦の日という言い方もできるが、まもなく、終戦の日がやって来る。この時期になると、戦争映画や社会派の問題作を連続して上映する映画館が都内にある。名画座の新文芸坐(豊島区東池袋)だ。今年も8月5日から…
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偉大な脚本家「橋本忍」の名をもっと広く知ってもらいたい
やはり脚本家の評価は一般的には低いのだろうか――。7月19日に亡くなった日本映画界を代表する脚本家・橋本忍氏(享年100)の訃報で、そう思った。新聞の大きな扱いと比べ、テレビではそれほどでもなかった…
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菅田将暉主演 映画「アルキメデスの大戦」に期待する理由
戦艦大和を題材にした戦争映画「アルキメデスの大戦」(監督・山崎貴/出演・菅田将暉=写真)が来年夏、東宝他製作・配給で公開されるという。この一報に筆者は震えた。往年の戦争映画の金字塔である「8・15シ…
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追悼・加藤剛さん 70年代に憂いた正統派の二枚目俳優
俳優の加藤剛さんが6月18日に亡くなった。享年80。正統的な二枚目俳優として、映画界でも確固とした地位を確立された方だった。とはいえ、俳優、とくに映画俳優としての加藤さんは不遇だった気がしないでもな…
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実力派俳優・名和宏を追悼 娯楽映画を彩った芸風の幅広さ
療養中だった俳優の名和宏さんが6月26日、亡くなった。享年85。訃報は出たが追悼文や記事をあまり見ないのが寂しい。筆者は彼の密かなファンだった。こわもての中にときに弱さとおかしみがあり、芸風の幅の広…
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“超低予算”ゾンビ映画「カメラを止めるな!」が夢の快進撃
先週、映画界に激震が走った。製作費がたった300万円ほどの超低予算映画「カメラを止めるな!」が大ヒットとなったのである。上映館は、都内・新宿のK’s cinema。座席数80ちょっとのミニシアターだ…
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「空飛ぶタイヤ」で好演 ディーン・フジオカの新たな魅力
ロシアW杯のコロンビア戦終了後、DFの長友佑都は「(これは)みんなで勝ち取った勝利」と語っていた。当たり前のコメントに聞こえるが、そうではない。あの試合はまさに総合力の産物だった。筆者はすぐに、映画…
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興収10億円を突破…是枝監督「万引き家族」が提示したもの
カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞した「万引き家族」が大ヒットのスタートを切っている。12日には早くも興収10億円を突破した。邦画の実写作品としては今年最高の出だしだ。社会現象の一歩手前ま…
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アニメ作品好調も“邦画実写”は低迷…若者が離れた原因は?
6月に入って上半期も終盤に差し掛かったが、どうも映画興行が芳しくない。先週末2日間限定で行われた「万引き家族」の先行上映が興行収入1億9000万円の盛況となったが、1月から5月は毎月前年割れの興収と…
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山崎努と樹木希林が夫婦役「モリのいる場所」ヒットの理由
映画館にスッ飛んでいった。筆者が慌てて劇場に足を運ぶときは、意外なヒット作が生まれている場合が多い。今回もそうだ。山崎努と樹木希林が夫婦を演じた「モリのいる場所」である。平日昼の12時台の回、シネス…
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「万引き家族」パルムドール受賞が導く邦画実写作品の未来
大快挙だ。是枝裕和監督の「万引き家族」が、第71回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞したことである。アジア映画としても画期的で、2000年以降では「ブンミおじさんの森」(タイ)に次いで2回…
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“我慢の人”三船敏郎さんを描いたドキュメンタリーが泣ける
亡き三船敏郎さんの映画が公開されているのをご存じか。ドキュメンタリー映画だが、これがやけに泣けるのである。タイトルは「MIFUNE:THE LAST SAMURAI」だ。 2年以上前に製作さ…
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故井上堯之氏は映画史上屈指の名曲を遺した“異端の音楽家”
グループサウンズの代表的なバンドであったスパイダースの元メンバーにしてミュージシャンの井上堯之さんが2日、亡くなった。享年77。筆者はグループサウンズの大ファンで、10代の前半から彼らのサウンドをむ…
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大女優・江波杏子「娼年」で松坂桃李相手に“スゴ技”の衝撃
松坂桃李が主演している「娼年」が全国70スクリーン規模の限定公開ながらヒットしている。かつての成人映画である〈R18+〉指定のセックスを題材にした作品だ。早速、メイン館の都内・TOHOシネマズ新宿に…
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宮崎監督との違い明瞭…高畑勲監督が貫いた独自の創作姿勢
高畑勲監督が亡くなり、改めて思ったことがある。作品の少なさと、ひとつの定型、枠に収まらない表現への貪欲極まる強い意志である。両者は相互に絡み合っている。なかでも筆者が注目したのが、最も映画の本数が多…
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若松プロ新作「止められるか、俺たちを」のカギは2人の女
2012年に亡くなった若松孝二監督の遺志を継ぐ映画が完成した。監督の拠点、若松プロが主体になって製作した「止められるか、俺たちを」である。1960年代から70年代、監督の全盛期ともいえる時代を背景に…
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TOHOシネマズ日比谷は「日本最高峰のシネコン」になるか
その名にふさわしく、新しいタウン=街が都内・日比谷の一角にできた印象である。29日からグランドオープンした「東京ミッドタウン日比谷」のことだ。シネコンやレストランをはじめとする多様な店の構えが、まる…
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渋谷と吉祥寺に増床 ミニシアター冬の時代に攻めのパルコ
都内のミニシアターの動きが活発になってきた。まず、今年7月に「渋谷のシネクイント(2スクリーン)」が“復活”する。もともと、渋谷のパルコPART3内で営業していたシネクイントは、同パルコ建て替えに伴…
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たけし独立&社長離脱でどうなる「世界の北野映画」の今後
ビートたけしが、所属のオフィス北野を離れ独立すると報じられた件。背景にはいろいろな理由があり、芸能界への影響は計り知れないが、筆者が第一に感じたのは映画のことだ。周知のように、彼はこれまで北野武名義…