政治や社会意識が薄れる今こそ戦争名画をみて考えてみる
敗戦の日という言い方もできるが、まもなく、終戦の日がやって来る。この時期になると、戦争映画や社会派の問題作を連続して上映する映画館が都内にある。名画座の新文芸坐(豊島区東池袋)だ。今年も8月5日からスタートするが、この上映の催しが始まったのは1978年。節目の40年目を迎える。
戦争、軍隊、原爆、冤罪などを描く映画を通して、歴史や社会を考えようというのが上映の趣旨だ。今回は「日本戦歿学生の手記 きけ、わだつみの声」(50年)、「真空地帯」(52年)、「真昼の暗黒」(56年)、「帝銀事件 死刑囚」(64年)、「日本のいちばん長い日」(67年)、「軍旗はためく下に」(72年)など映画史上の名作群が並んだ。
なかでも吉永小百合主演の「キューポラのある街」(62年=写真)が、彼女のトークショー付きで上映されるから勧めたい(10日)。吉永扮する少女ジュンが、鋳物の街・川口で貧困と向き合っていくけなげでハツラツとした姿がとても感動的な作品だが、こんなシーンに打ちのめされた記憶がある。ジュンが工場を解雇され、家でぶらぶらしながら「戦争がまた起これば、景気は良くなる」などとうそぶく父(東野英治郎)に猛然と歯向かうのだ。ジュンの態度は太平洋戦争を支えた父世代が、何の反省もなく戦後をだらだらと生きていることへの痛烈な一撃でもあって、忘れがたいのである。
「キューポラ――」はじめ、一度は見たことのある作品が多いだろうが、政治や社会意識が薄れている今だからこそ、突き刺さってくる側面も確実にある。災害の問題も身近だ。
改めて、映画を通して政治や社会を考えるひと夏にしてみたらどうだろうか。