「万引き家族」パルムドール受賞が導く邦画実写作品の未来
大快挙だ。是枝裕和監督の「万引き家族」が、第71回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞したことである。アジア映画としても画期的で、2000年以降では「ブンミおじさんの森」(タイ)に次いで2回目。中国や韓国の作品は1本もない。受賞はアジア圏全体が誇っていいことだ。
家族がテーマだと聞いて思い出した監督が2人いた。小津安二郎と大島渚だ。2人は家族を描くのに両極端だった。小津監督は日本の家族そのものの姿を独特の様式美を通して描き続けた。大島監督は家族にこだわってきたわけではないが、社会との関係性を生々しく描いた傑作「少年」(1969年)を作った。
重要なのは、是枝監督がどちらの系譜にくみするのかといった話ではない。受賞作だけではない是枝監督の独自な作風が、世界視野の最高の境地に立ち至ったことだ。彼が描く日本の家族像が普遍的な共感の度合いを強め、そこで提出された問題意識の共有にもつながった。それが凄いと思うのだ。
大島の「少年」は、賠償金狙いの当たり屋家族を描いた。この作品も国内外で高く評価された。ひょっとして、「万引き家族」は「少年」からインスパイアされたのかもしれない。そんなつながりを考えるだけで、わくわくしてくるものがある。
今回のパルムドール受賞は、邦画の実写作品に計り知れない影響を与えるだろう。五輪で金メダルを取ったようなものだから、同じように目指す若者が増えるとみる。裾野が広がってこそ映画の活力も増す。アニメーションに若者が群がる時代だ。実写作品で世界を制した意味の大きさを強く思う。