週間読書日記
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大竹昭子(作家)
10月×日 姪が台湾に留学していたときの友人が日本にやってきた。色白の涼しい目をした女の子で、いまの日本にはこういう子はいないなあ、と思いながら、どんなとこに行きたいの? と訊くと、リストを取りだして…
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絲山秋子(作家)
10月×日 県内の友人宅に行く途中で立ち寄った道の駅に、パン屋が店を出していた。ハンバーガーもサンドウィッチもびっくりするほどおいしくてユニークで、その上しゃれている。街道沿いのそれほど遠くない場所に…
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柚木麻子(作家)
9月×日 「田辺聖子さん お別れの会」に。展示してある田辺さんの写真を眺めて、直木賞選考会でも男性陣の中でポンと一人赤いセーター姿でいらっしゃるような、そのビビッドなお洒落に感動する。手をとりあって一…
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太田肇(経営学者・同志社大学教授)
10月×日 朝の授業に遅れまいと地下鉄の階段を急ぎ足で降りていたら、左膝に激痛が走った。目の前に停まっている電車に乗ることもできない。昨年から小康状態を保っていた関節痛が再発したのだ。それ以来、片足を…
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奥野修司(作家)
10月×日 今年の春から「食と病」について調べているが、取材のほとんどが研究者とあって、論文読みに明け暮れている。その合間に読むなら軽めのノンフィクションがいいだろうと、デイヴィッド・ハワード著「詐欺…
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天笠啓祐(科学ジャーナスリスト)
9月×日 今年は残暑が長い。冷房は体調を崩すため、氷枕をしながら寝ているが、面白い本に出会うと、その氷の存在を忘れて寝不足になる。そのような1冊がドノヴァン・ホーン著「モービー・ダック」(こぶし書房 …
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岡崎武志(書評家)
8月×日 酷暑の夏。じたばたせず、ほとんど家に閉じこもって本を読む日々だった。8月は日本にとって死と鎮魂の月でもあり、気を引き締めるような本を読むことにしている。 「プリーモ・レーヴィ全詩集」(…
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飯田哲也(環境エネルギー政策研究所所長)
8月×日 京都アニメーション放火大量殺人事件は、今なお痛ましさが生々しい。その犯人を「下級国民のテロリズム」と断じた橘玲は、近著「上級国民/下級国民」(小学館 820円+税)の中で、日本や世界で進む知…
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森達也(映画監督)
8月×日 今撮影を進めているドキュメンタリー映画は新聞記者が被写体だ。彼女が所属する東京新聞社には何度も行って撮影している。旧知の記者も多い。社会部の瀬口晴義はその1人。でも彼は撮影を嫌がる。カメラを…
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朝暮三文(作家)
7月×日 自著「おつまミステリー」が好評。なのでハヤカワ文庫、ハーラン・エリスン編「危険なヴィジョン2」(浅倉久志他訳 1200円)と既刊の1を読む。10数年前、「闇の展覧会」が20年ぶりで復刊された…
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萩原浩(作家)
7月×日 どうやら梅雨が開けて、さあ夏です。 夏の私は忙しい。仕事がなくても忙しい。自宅のささやかな庭で野菜を育てているからだ。スイカとメロンの人工受粉。キュウリとナスとゴーヤとインゲンマメの…
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大石芳野(写真家)
7月×日 雨にけぶる樹木が池を囲むように鬱蒼としている光景のなか、ツバメが飛び交う。窓越しのその美しくも素早い飛び方に目を奪われながら視線を追う。書棚から取り出した1冊の、かなり黄ばんで書き込みなどを…
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朱野帰子(作家)
6月×日 私の小説が原作のテレビドラマ「わたし、定時で帰ります。」がニューヨークタイムズ紙で紹介された。記事のコメント欄には日本の長時間労働の実態への驚きがつづられていた。一方で、「アメリカにだって同…
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稲葉稔(作家)
6月×日 仕事が進まず悶々。朝から根を詰めているがはかどらない。 ゴルフの練習に行こうかと考えるが、表は真夏の暑さなのでやめる。 ならば、愛犬の散歩をしようと思い立ち、連れ出そうとする…
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本城雅人(作家)
6月×日 ひどい腰痛に悩まされ、ブロック注射を受けたことがある。「車で来ないでね」と言う医者に、「自転車は?」ときいたら、「無理に決まってるでしょ。麻酔で歩けないかもしれないのに」と叱られた。ところが…
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吉田敏浩(ジャーナリスト)
6月×日 梅雨に入った。今日も何かと原稿を書いている。雨音が耳に届く。 「ジャングルで隠れている間は、枯れ葉で屋根を作るんだけど、あっという間にびしょびしょになっちゃう。だからこんな雨の日は、村…
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鎌田慧(ルポライター)
6月×日 妻を連れて病院にいった。風邪気味ですと言うと、ついでに診てあげましょう、と女医さん。診察券を急拵えしてレントゲンをかけると、肺炎という。入院はしないで抗生物質。 6月×日 抗生物質で快…
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大森望(書評家・翻訳家)
6月×日 急に暑くなってきたので、上半身はTシャツに衣替え。アイドル現場用のオタクTシャツを別にすると、ワードローブの中心は各種SF系Tシャツ。ヴォネガット「チャンピオンたちの朝食」とか、バージェス「…
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安藤祐介(作家)
5月×日 平成の終わりと令和の始まりをまたぐ大型連休を経て、朱野帰子さんの「わたし、定時で帰ります。ハイパー」(新潮社 1400円)を読了。同作は1年前に第1弾が刊行されて大きな反響を呼び、私もこの「…
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中島恵(ジャーナリスト)
5月×日 講演で京都に行ってきた。駅を降りてびっくり。平日だというのに、タクシー乗り場に100メートル以上と思われるほど多くの観光客が並んでいるではないか。運転手さんによると、タクシー乗り場の数が減っ…