五木寛之 流されゆく日々
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連載10558回 早くこいこい、お正月 <2>
(昨日のつづき) 人が人生を変える転機になる精神的体験を回心という。仏教とキリスト教では読み方がちがうようだが、どちらも心が新しい方向へむかう瞬間のことだろう。 横田師は10歳に満たない幼い頃…
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連載10557回 早くこいこい、お正月 <1>
先週はめちゃ忙しかった。1週間のあいだに対談を3つ、インターヴューを2件、打ち合わせは――数は忘れたが、かなりの数をやっている。 それに加えて近刊予定の本のゲラ直しと、原稿書きと、講演が重なった…
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連載10556回 風邪は師走の大掃除 <3>
(昨日のつづき) このところ気温の変化が激しい。それに対応して、厚着をしたり薄着をしたりと、環境に適応するのもひと仕事である。 呆れるのは、こんな季節になっても冷房を入れているレストランやホテ…
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連載10555回 風邪は師走の大掃除 <2>
(昨日のつづき) 風邪の2日目。鼻水がとまらない。ポケットのティッシュペーパーが足りなくなると、レストランのナプキンで代用。みっともないが仕方がない。 熱はないようだ。セキが出るので、のど飴を…
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連載10554回 風邪は師走の大掃除 <1>
めずらしく風邪を引きかけた。 いや、引いてしまったと言うべきかもしれない。しきりに鼻水がでて、せきも止まらない。熱はないものの体の節々が痛む。 野口晴哉は、風邪と下痢は体の大掃除だと言ってい…
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連載10553回 見えない明日への言葉 <2>
(昨日のつづき) 私はこれまで様々な意見をのべてきました。文章もあり、講演や放送の発言もあります。しかし、五十余年にわたってずっと同じ言葉を発してきたわけではありません。 ときには右と言い、と…
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連載10552回 見えない明日への言葉 <1>
明日が見えない。これは国際政治とか経済の問題だけではありません。人生に対する考え方そのものが、揺らいでいる。これまで常識として感じられてきた考え方が、どこでも、いつでも通用するとはいえなくなってきた…
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連載10551回 師走の街に風が吹く <5>
(昨日のつづき) 正午に起床。2日間、金沢行きで早起きしたため、早く目覚める悪癖がついたらしい。ちょっと喉がいがらっぽいのは風邪の前兆か。 どうやら今日は全国的に気温がさがっている様子。締切り…
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連載10550 師走の街に風が吹く <4>
(昨日のつづき) 残念ながら午前9時に目が覚めた。11時までは眠るつもりだったのだ。昨日、午前中に起床したことが影響しているのだろう。 ホテルの窓から内灘海岸と日本海が見える。いかにも北陸らし…
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連載10549回 師走の街に風が吹く <3>
(昨日のつづき) 決死の覚悟で午前10時に起きた。 昨夜というか、早朝6時にベッドインしたので、3、4時間しか寝ていない。 北陸新幹線で金沢まで2時間半ちょっとというのは、有難いような、残…
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連載10548回 師走の街に風が吹く <2>
(昨日のつづき) 今日は午後、『週刊現代』の取材。 昔は週刊誌のスタッフといえば、荒くれ男というか、ちょっとアウトロー的な男たちが多かったが、今は昔、最近では様変りして若い女性編集者と大人のラ…
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連載10547回 師走の街に風が吹く <1>
すでに12月だ。一年が早く過ぎる、というのは高齢者の感慨かと思っていたら、そうでもないらしい。 スターバックスの店で、高校生とおぼしき少女たちが、 「一年たつのが早いよねえ」 「マジ早い。ど…
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連載10546回 歴史は信じられるか <5>
(昨日のつづき) 今回のノーベル賞の先生が、「教科書をも疑え」と、いいことを言っている。 すべての学問は日進月歩である。3年前の医学の教科書は役に立たない、と断言する医師もいた。 これは科…
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連載10545回 歴史は信じられるか <4>
(昨日のつづき) 後になって定説となる同時代史に大きな違和感をおぼえることを書いた。それが明治時代や江戸時代ともなれば、その誤差はかなり大きなものとなるのではあるまいか。 現実社会に「表」と「…
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連載10544回 歴史は信じられるか <3>
(昨日のつづき) 歴史がちがう、というのは現在、書かれて常識となっているものと実感がずれているということだ。 卑近な例をあげると、テレビなどで<懐しのメロディー>みたいな番組がある。いくつもの…
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連載10543回 歴史は信じられるか <2>
(昨日のつづき) この「事件」「事変」「出兵」などと、「戦争」という表現とは、どうちがうのだろうか。「支那事変」が「日中戦争」と呼ばれるようになったのは、いつ頃からのことだろうか。のちに「大東亜戦…
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連載10542回 歴史は信じられるか <1>
過去について書かれた本を読むたびに、心をかすめる黒い影がある。 <それは本当だろうか?> と、いう疑問である。 ことに近過去というか、明治以降の歴史について、そう感じることが多い。 い…
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連載10541回 世を嘆くということ <4>
(昨日のつづき) 人間は愚かしい存在だ。自分のことを考慮に入れなくても、つくづくそう思う。 戦争と平和。 それ一つとってみても、人間は戦争をする動物だと感じる。もちろん、戦争は人類最大の悲…
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連載10540回 世を嘆くということ <3>
(昨日のつづき) 昔、中国に屈原という男がいた。大変な秀才であったらしく、当時の楚の国政にも参加し、王にも深く信頼された。 しかし、その才をねたむ連中に讒言されて、地位を追われる。 よくあ…
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連載10539回 世を嘆くということ <2>
(昨日のつづき) 苦労した人間は、ふた通りの生き方をする。 一つは、世を怨み、世間にすねて暮すタイプである。 もう一つは、どんなときにも不平を言わず、つとめて明るく生きようとする人たちであ…