保阪正康 日本史縦横無尽
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天皇を欺いて「死んでもらわなければ困る」という立場に
万朶隊の隊員に陸軍伍長の佐々木友次がいた。昭和19年11月12日の攻撃に佐々木は4番機で出撃することになっていた。九九式双発軽爆撃機の操縦には4人が必要とされたが、佐々木は800キロもの爆弾を積み、…
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海軍と張り合うために陸軍は大げさなウソを発表した
陸軍の特別攻撃隊「万朶隊」は11月12日にレイテ湾のアメリカ艦船に体当たり攻撃を行った。陸軍初の特攻作戦だったが、実際は艦船に突っ込んでいなかった。うまく対象になる空母を見つけられなかったせいもあり…
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陸軍で最初の特攻隊「万朶隊」20代前半の搭乗員が選ばれた
体当たり攻撃という戦術が組織的な決定事項となったのは、実は海軍よりも陸軍の方が早かった。これまで見てきたように航空総監と航空本部長に就任した後宮淳は軍政、軍令の権力を握っていた東條英機と意を通じてい…
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「体当たりは日本陸軍の真の精神」に誰も反論できなかった
高木俊朗が陸軍特別攻撃隊を詳細に調べて著した一連の書は、今では基本的な文献である。高木は陸軍航空本部の報道班員として特攻隊員の苦悩を見た人物だけに、戦後になり、どのような形でこの戦術がとられたかを怒…
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東條英機のような上等兵止まりの輩が戦争を指導していた
これから何回か、陸海軍の特別攻撃隊にふれる。餓死、玉砕、特攻という形の戦争は昭和という時代を特徴づけている。戦争という手段が良いとか、悪いとか言う前に、なぜこういう戦争になったかを近代日本史の流れの…
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国民には「ビラを読むな」と脅し家族は避難させた警察官
国民の退嬰的空気は戦争が進むにつれ、より一層強まった。やがてそれは庶民にとっても生きるか死ぬかの分かれ目になった。サイパンが落ちてからしばらく後に、B29が連日、日本本土に爆撃を加えるようになった。…
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アメリカ軍に居場所を知られないよう幼児を海に投げ込む
太平洋戦争が始まって8カ月余、ガダルカナル戦で兵士たちの餓死が始まった。以来、戦闘地域の大半で餓死は日常化していった。1年6カ月余でアッツ島の玉砕が始まる。それからはマキン、タラワ、クエゼリン環礁、…
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横井庄一さん「恥ずかしながら帰ってきました」の意味は…
横井庄一さんは1972年1月24日にグアムのジャングルで現地の2人の漁民に発見された。28年間、洞窟の中で自給自足の生活をしていたのである。日本社会はこの事実に驚き、横井さんの姿に日本の軍事の亡霊を…
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グアム島では横井庄一さんが戦後27年、山で命を永らえた
サイパン島の占領を宣言した後、日を置かずしてアメリカ軍はグアム島への攻略を明らかにした。この島はアメリカの領土であったが、昭和16年12月10日に日本軍の攻略部隊が占領していた。 その奪回作…
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言論人と学者、国防婦人会が流した「女は強姦」というデマ
サイパン島の守備隊がしだいに北部に追い詰められ、最終的に玉砕か降伏かとなったとき、守備隊の陸海軍合同の司令部は玉砕と決めた。この攻撃は昭和19年7月7日の午前3時をめどに行われた。言うところのバンザ…
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玉砕命令に武器も持たず「天皇陛下バンザイ」を叫び突撃
マリアナ諸島のひとつ、サイパン島は絶対国防圏の要であった。B29の航続距離から考えて、この地を落とせば日本本土への爆撃は日常化するだろうと思われた。そこで大本営の参謀たちは勝敗の分かれ目と考え、「サ…
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約2万人の民間人が戦場に取り残されたサイパン島の実態
特攻作戦、玉砕命令、そして補給なき餓死――。軍官僚の戦争はいかに国民の命をないがしろにしたのか、そのことを歴史上の教訓として知っておく必要がある。玉砕命令そのものの残酷性について今一度確認しておかね…
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兵力差23対1で玉砕 ギルバート諸島マキンの日本海軍守備隊
玉砕についてもうすこし触れておこう。 アッツ島に続く玉砕はギルバート諸島のタラワ、マキン両島の戦いだった。ギルバート諸島というだけあって、タラワは10を超える環礁からなっている。その中で中心…
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日本兵の捕虜は国民の命を救うためにアメリカ側に自白した
日本人兵士は、戦時期の捕虜がどのような扱いをされるかという教育を受けていない。軍事指導者は「捕虜にはなるな。死ね」と言うのだから、兵士を人間として見てはいない。まさに戦備品であった。だからアメリカ側…
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アメリカは“殺せ”と喚く日本人捕虜に新しい戸籍を用意した
アッツ島の玉砕では全員が戦死したわけではなく、本隊から外れて最後のバンザイ突撃に参加できなかった兵士も存在した。結局アメリカ軍に捕虜となった兵士は、わずか29人だとされている。2500人の中の29人…
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暴言の丸山代議士は戦争容認を主張する政党をつくるべきだ
「戦争で失ったものは戦争で取り返せ」発言の丸山穂高代議士は、幾つもの錯誤を犯している。そのうちの2つについて私は本欄で指摘している。 ひとつはこの政治家が戦間期の思想の虜になっているということ…
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暴言の丸山穂高氏が持つ“戦間期の思想”とヒトラーの復讐戦
今日と明日の2回はテーマを変えて、現職代議士の呆れ返る発言を批判したい。 日本維新の会(その後、除名)の丸山穂高氏が今月11日に北方領土のビザなし訪問団に参加した折、団長らに「戦争で取られた…
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飢餓状態も…アッツ島の日本軍はなぜ降伏できなかったのか
アッツ島守備隊の玉砕には大本営に見捨てられたという意味もある。増援を送ろうにも、軍部にはそれだけの兵力がなかった。東南アジア全域に兵士を送り込んだことのツケが回ってきたのである。山崎守備隊長は「自分…
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大本営に見捨てられ最初の玉砕を命じられたアッツ島の戦い
太平洋戦争での軍事指導者の責任は、戦争を自らの栄達や充足感のために利用したことであった。戦闘で犠牲になるのは兵士たちだった。「戦陣訓」で捕虜になるな、家門の恥だ、と言って退路を断ち、食料の補給もせず…
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軍官僚の手柄のための戦争 勲章のための大本営発表だった
ガダルカナルの戦いは、太平洋戦争の開始から8カ月ほど後のことだった。日本軍はすでにこの段階で、アメリカ軍との物量の差を見せつけられていた。従って3年8カ月にわたって続いたこの戦争の残り3年は、ひとつ…