がんと向き合い生きていく
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原因不明だった白血病 治療法が進歩して治癒も期待できる
かつて、「九州の沿岸地方の風土病」といわれた白血病があります。 四十数年前、私が国立がんセンター(当時)で研修をしていた頃、鹿児島から勉強に来た若い医師に「私たちの病院では病名がはっきり分か…
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分子標的薬の登場が慢性骨髄性白血病の治療を劇的に変えた
K君と私は同郷で、2人とも医学部に進学しました。黙っていてもお互い通じる仲で、彼はずる賢いところが全くない、実直で「誠」を貫く男でした。 K君は「医師になって病人を救う」という目的をしっかり…
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大きな病院から捨てられた…そんな思いを抱く患者もいる
ある地方を旅行した時のことです。この地域の中核となるZ病院が新しくできたと聞いて、宿泊した旅館の従業員に話しかけてみました。 「大きくて立派な病院ができて良かったですね」 しかし、その…
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「2週間の命」と告げることで安らかな死を迎えられるのか
Aさん(68歳・男性)は膵臓がんで抗がん剤治療が効かなくなり、B病院からCホスピスに転院。その3日後、ホスピスの主治医である若い女医さんが、奥さまにこんな話をしたそうです。 「Aさんはまだまだ…
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がん治療が終わってから子供をつくる患者はたくさんいる
若い世代の代表的ながんは、白血病、悪性リンパ腫、脳腫瘍、甲状腺がん、卵巣がん、子宮頚がん、乳がん、精巣がん、骨軟部肉腫などが挙げられます。これらのがんを克服して、完治される方が多くなった現代において…
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余命6カ月の宣告に頭が真っ白 治療を希望しないことに…
Mさん(56歳・男性)は8年前、奥さまを乳がんで亡くした後に会社を辞め、ある山村の古民家を購入して移住しました。 日中は畑を耕し、夜は星を観測するなど、文字通り晴耕雨読の生活を謳歌していまし…
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ネット社会で納得した治療を受けるためには信じて任せる
花屋を営むWさん(48歳・男性)は下痢と腹痛があり、A内科医院を受診しました。その医院は自宅のすぐそばにあり、Wさんは長年、なんでも相談し、最も信頼していました。 腹部超音波検査を受けている…
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一緒に悩み頑張ってください それが医師の私の生き甲斐です
膵臓がんで、抗がん剤治療を受けているAさんの独り言です。 抗がん剤治療での定期の3日間の入院です。採血、エックス線写真を撮ると、明日の抗がん剤の点滴まで何もすることがなくなりました。 …
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「がん細胞があるかどうか」を確認する検査は最も重要
がんの「確定診断」は、生検や手術によって切除された組織の病理診断によって行われます。つまり、専門の病理医は提出された検体を、顕微鏡でがん組織を確認して、がんという診断をつけるのです。必要な時は標本の…
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劇的な効果例も 「免疫療法」でがん治療の時代は変わった
月に1度、ある病院に出向き、腫瘍内科医からがん患者の治療について相談を受けています。その中で、衝撃的な相談例がありました。 電子カルテを見ると、患者は40歳の男性で、進行した肺がんで右肺全摘…
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妻を亡くした知人は「闘わない」と決めていたのだろうか
友人Oさんの弟Mさん(当時55歳)と、その奥さまUさん(当時53歳)のお話です。ずいぶん前のことですが、それでもその頃の「がん告知」は、患者自身にすべてを告げるようになっていました。 ある時…
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X線を一から教えてくれた先輩をがんで亡くして考えたこと
私が尊敬するM医師が肺がんで亡くなりました。消化管のエックス線・内視鏡の診断技術、医師としての生き方、さらにはお酒など、何かとご指導いただいた恩師です。 20年ほど前に医院を開業され、地域の…
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患者にとって「がん」という言葉は計り知れないほど重い
私が担当している内科外来診察室でのことです。元商社マンのBさん(80歳)は高血圧で通院治療をしていますが、今回は予定を早めて来院されました。声がかすれるため自宅近くの耳鼻科で鼻からの内視鏡検査を受け…
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お年寄りにも優しく簡便ながん検診の進歩に期待したい
最近、ある町を旅した時のことです。町の役場に勤める50代の課長さんと、人口減少、空き家の増加、町の診療所や介護施設などについて話していたところ、「今の高齢者は何が一番幸せか?」という話題になりました…
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とにかくお話を聞く…それだけで患者は笑顔を見せてくれる
「あなたはたくさんのがん患者を診てこられた。実はK先生が末期の肝臓がんで、もう治療法はないらしい。いま、心の助けが必要だと思う。本人に伝えておくから、一度、自宅に見舞ってやってくれないか」 少…
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抗がん剤は効くか? 治療法の選択は「正しい情報」から判断
公務員のKさん(41歳・男性)は1年前に手術した胃がんが再発し、不安になって相談に来ました。 「担当医から抗がん剤治療を勧められました。科学的根拠のある標準治療だというのです。効くという根拠は…
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いま死ぬことがすべての終わりではない
34歳のFさん(女性)は子宮筋肉腫で肺と肝臓にも転移がありました。友人である医師からの依頼でC病院のホスピス病棟にいるFさんを訪問して3回目の時のことです。 「先生、聞いてくれますか?」 …
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「心の中で一緒に生きている」若くして子供を亡くした親はそう心に決めて生きていく
同じ「死」でも、若い人と老人では悲しみや無念さが違います。若い患者さんの死は、これからたくさんの人生が残っていたはずです。なんとか生きたい。周りの人も医療者も、なんとしても生かしたい。 白血…
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「心の悩み」が身体にがん症状を起こす場合がある
22歳のAさん(男性)は微熱、リンパ節腫大、咽頭痛を訴えて私の外来を訪れました。表情は硬く、不安そうなAさんは「ボクは悪性リンパ腫です」とおっしゃいます。 診察してみると、頚部に1センチにも満たない…
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「大自然に生かされている命の喜び」患者の言葉を実感した
先日、ある県の里山に3日ほど滞在しました。夕方になると、山々が赤く染まり、そしてカエルの大合唱でした。こんな小さなカエルが、たくさん集まったとしても、どうして天まで届くほどの大声になるのか不思議です…