「大自然に生かされている命の喜び」患者の言葉を実感した
先日、ある県の里山に3日ほど滞在しました。夕方になると、山々が赤く染まり、そしてカエルの大合唱でした。こんな小さなカエルが、たくさん集まったとしても、どうして天まで届くほどの大声になるのか不思議です。
目の前の畑で友人が摘んできたアスパラガスのおいしさは格別でした。ふと、20年ほど前に「大自然に生かされている命の喜びを知っていただきたい」とおっしゃっていた卵巣がんのGさん(当時54歳)を思い出しました。
Gさんは他院で卵巣がんの手術を受けてから1年後に再発し、私が担当医となりました。
診察のため、下着を脱いだGさんの上半身を見た私は正直驚きました。右乳腺の上に横径約10センチ、縦15センチほどの盛り上がった大きな腫瘤、右上腹部にも約12センチ四方の腫瘤が赤紫色に光っていました。卵巣がんの転移でした。痛みはそれほどでもなかったようですが、Gさんは皮膚がいつ破れて出血しないか、そして、これからの短い命を予想されて、とても不安そうでした。
入院後、点滴による抗がん剤治療が始まりました。1回目の治療後から腫瘤は明らかに縮小し、3回目終了の頃には瘢痕程度になって、そして5回目の頃には全く分からなくなりました。