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佐々木常雄東京都立駒込病院名誉院長

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

抗がん剤は効くか? 治療法の選択は「正しい情報」から判断

公開日: 更新日:

 公務員のKさん(41歳・男性)は1年前に手術した胃がんが再発し、不安になって相談に来ました。

「担当医から抗がん剤治療を勧められました。科学的根拠のある標準治療だというのです。効くという根拠はあるのでしょうか? 『抗がん剤は効かない』というタイトルの本には、抗がん剤は全く無意味、つらい副作用と寿命を縮める作用しかないと書いてあったのですが……」

 私は次のように答えました。

「『効く』イコール『治る』ではありません。でも、抗がん剤が『効く』ということは、『治る』を含めて『延命効果がある』ということを意味しています。抗がん剤治療がすべての患者さんに効けば問題はないのですが、実際には一人一人に治療してみないと分からないのです」

 かつて、胃がんに対して抗がん剤治療は延命効果があるのかどうかを統計上で科学的に明らかにするための臨床試験が行われました。手術ができないほど進行した胃がんで、それでもまだ体の一般的状態は悪くなく(全く症状がないか、あってもベッドにいるのが一日の半分以下の状態)、抗がん剤治療の経験がなく、抗がん剤治療ができると判断された患者に対して、くじ引きで「抗がん剤治療をする群」と「しない群」とに分け、どちらが長く生きられるかを比較したのです。

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