北上次郎のこれが面白極上本だ!
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「暗殺者の反撃(上・下)」マーク・グリーニー著、伏見威蕃訳
コート・ジェントリーを主人公にしたシリーズの第5作だが、「見つけ次第射殺」というCIA指令はなぜ出されたのか、その謎がついに解明される長編である。 このジェントリー・シリーズは、1作ずつ独立…
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「徳は孤ならず」木村元彦著
「日本サッカーの育将 今西和男」という副題のついたノンフィクションである。Jリーグに発展していく日本サッカー界の激動期に多くの人材を育てた今西和男の半生を描く書だが、読み始めるとやめられなくなる。 …
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「僕が愛したすべての君へ」乙野四方字著
いくら探しても見つからない、なんてことがありませんか。間違いなくここに置いたはずなのに、いざという時に、ないのだ。おかしいなあと首をひねった経験のある方は多いと思う。そういうことはこの仮説ですべて説…
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「娘と嫁と孫とわたし」藤堂志津子著
タイトルは軽いが、中身は濃い。家族小説をお好きな読者に、自信をもってすすめる傑作小説だ。 帯の惹句がうまい。「いじのわる~い、しかもケチな実の娘」「血のつながりはないけど、けなげでやさしい息…
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「ささやかな手記」サンドリーヌ・コレット著 加藤かおり訳
山中を歩いていたら、銃を持った老人が現れ、コーヒーでも飲んでいくかと声をかけられる。石造りの家に入ると背後から頭を殴られ、そして目が覚めると、鎖につながれて監禁されていた――本書はここから始まり、悪…
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「疾れ、新蔵」志水辰夫著
シミタツの新作を読むことができるとはうれしい。江戸から越後までの急ぎ旅を描く長編である。巡礼の親子に扮したのは、新蔵と志保姫。何かあったときには10歳の姫を連れて故郷に逃げろ、と新蔵は以前から命じら…
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「翻訳出版編集後記」常盤新平著
常盤新平は1987年に「遠いアメリカ」で直木賞を受賞した作家で、2013年に亡くなっているが、若いころは早川書房に勤めた編集者であった。1959年に入社し、その10年後に退社して翻訳家となったが、本…
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「総選挙ホテル」桂望実著
「お仕事小説」がはやっているのは、どんな仕事であっても当事者以外にその実態はわからないことが少なくないので、のぞき見趣味が満たされること、発見があること。さらに、大半の「お仕事小説」が最終的に元気を与…
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「半席」青山文平著
文化6年といえば1809年、江戸幕府開府から200年経っているが、その時代、80歳以上で御公儀の御役目に就いている旗本は20人。一番上は98歳の腰物奉行、というから驚く。江戸時代といえば、もっと若い…
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「パンドラの少女」M・R・ケアリー著、茂木健訳
いやあ、面白いぞ。読み始めたらやめられず、一気読みは必至という面白さだ。 全世界に奇病がまん延し、文明社会が崩壊した未来が舞台の長編である。その奇病とは、キノコが脳に寄生すると人間としての精…
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「大統領の冒険」キャンディス・ミラドー著 カズヨ・フリードランダー訳
第26代アメリカ大統領セオドア・ルーズベルトは1912年の3期目の大統領選に負け、その翌年、アマゾンの奥地に旅立つ。本書は、1600キロにもわたるアマゾンの支流を南米の地図に記入することになる、その…
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「ささやかで大きな嘘」(上・下)リアーン・モリアーティ著、和爾桃子訳
保育園を舞台にしたママ友小説だが、一気読みの面白さだ。保護者懇親会の日に何かがあったことは最初から明らかにされている。どうやら誰かが亡くなったらしい。しかし、誰が亡くなったのか、子供なのか大人なのか…
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「暗幕のゲルニカ」原田マハ著
ニューヨーク近代美術館の絵画・彫刻部門のキュレーター八神瑤子は「ピカソの戦争」展を企画するが、それには反戦絵画の傑作といわれている「ゲルニカ」の展示は欠かせない。ピカソの「ゲルニカ」は1937年、パ…
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「うつけ者の値打ち」辻堂魁著
風の市兵衛シリーズの第17作である。シリーズの途中から読むのは無理、と言わずにぜひとも読まれたい。続いているわけではないので、どこから読んでも大丈夫。これが面白ければ遡ればいい。 主人公の唐…
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「天下一の軽口男」木下昌輝著
上方落語の始祖にして、日本初のお笑い芸人である米沢彦八の波乱に富んだ半生を描く長編小説である。 江戸時代中期に、首にかけた台の上で人形芝居をする傀儡師(くぐつし)、穴の開いた籠を横にして飛び…
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「フィフス・ウェイブ」リック・ヤンシー著 安野玲訳
エイリアンによって地球が侵略される物語はこれまでたくさん書かれてきた。しかしその姿をここまで隠し続ける小説も珍しい。彼らがいったいどういう姿をしているのか、いっさい描かないのである。 地球か…
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「拳の先」角田光代著
2012年の秋に、角田光代がボクシング小説「空の拳」を書いたときには驚いた。ボクシング雑誌に配属された新米編集者・那波田空也の目を通して描かれるので、試合を見に行っても、パンチが見えないのだ。 …
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「漆黒の象」海野碧著
久々の登場だ。2010年11月刊の「篝火草」以来だから約5年ぶりか。すぐに読み始めた。 元警視庁捜査1課の刑事、井出亮二は渋谷・道玄坂で軽食喫茶を経営しているが、副業で私立探偵の真似事をして…
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「死体泥棒」パトリーシア・メロ著 猪股和夫訳
ブラジル産のミステリーとは珍しい。著者はブラジルの人気作家だが、その作品は本国だけにとどまらず、英語圏をはじめ、フランス語版、ドイツ語版など、各国で翻訳されているという。そのパトリーシア・メロの作品…
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「蓮の数式」遠田潤子著
不妊治療をしている主婦がいる。安西千穂35歳。大学教授の夫も義母も、子供が生まれないことを彼女の責任であるかのように責めてくる。千穂はそういう日々にいる。本書は、自分たちの都合しか考えない安西家から…