著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「暗幕のゲルニカ」原田マハ著

公開日: 更新日:

 ニューヨーク近代美術館の絵画・彫刻部門のキュレーター八神瑤子は「ピカソの戦争」展を企画するが、それには反戦絵画の傑作といわれている「ゲルニカ」の展示は欠かせない。ピカソの「ゲルニカ」は1937年、パリ万博のスペイン館のために制作されたもので、内戦真っただ中のゲルニカを、フランコ将軍に味方するナチス・ドイツの航空部隊が空爆。その惨状を知ったピカソが反乱軍と戦う共和国政府を支援しようと絵筆を執った作品である。かくて八神瑤子は「ゲルニカ」の貸し出しをお願いするためにスペインに渡っていく。

 その「ゲルニカ」が、1981年にスペインに返却されるまで42年間もニューヨーク近代美術館に展示されていたこと。返却後は「ゲルニカ」のタペストリーがピカソ監修のもとに作られ、国連ロビーに置かれたこと。ところが2003年、イラクへの武力行使が国連で決議されたとき、記者発表が行われたロビーのタペストリーには暗幕がかけられていたこと。さらにその「ゲルニカ」がどうやって制作されたのかということまで、八神瑤子とスペイン政府の交渉の間隙を縫うようにいくつもの挿話が挿入されていく。

 はたして八神瑤子の交渉は実るのか。なぜスペイン政府は貸し出しを拒否するのか。「ゲルニカ」はふたたびアメリカにやってくるのか。一気読みの絵画サスペンスをたっぷりと堪能されたい。(新潮社 1600円+税)


【連載】北上次郎のこれが面白極上本だ!

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    都知事選2位の石丸伸二氏に熱狂する若者たちの姿。学ばないなあ、我々は…

  2. 2

    悠仁さまの筑波大付属高での成績は? 進学塾に寄せられた情報を総合すると…

  3. 3

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 4

    竹内涼真“完全復活”の裏に元カノ吉谷彩子の幸せな新婚生活…「ブラックペアン2」でも存在感

  5. 5

    竹内涼真の“元カノ”が本格復帰 2人をつなぐ大物Pの存在が

  1. 6

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  2. 7

    二宮和也&山田涼介「身長活かした演技」大好評…その一方で木村拓哉“サバ読み疑惑”再燃

  3. 8

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  4. 9

    小池都知事が3選早々まさかの「失職」危機…元側近・若狭勝弁護士が指摘する“刑事責任”とは

  5. 10

    岩永洋昭の「純烈」脱退は苛烈スケジュールにあり “不仲”ではないと言い切れる