汚職問題に揺れたバレー協会は川合俊一氏 タレントOBが連盟トップに次々就任するお寒い現実
日本バレーボール協会が元五輪代表のタレント・川合俊一氏(59)を新会長とする人事を発表した。同協会は嶋岡健治前会長が診断書偽造問題で解任されたばかりだが、信頼回復を託されたのは「タレントOB」だった。
バレー協会は近年、知名度重視の人選が目立つ。自国開催の東京五輪に向け、1984年ロス五輪銅メダル獲得に貢献した名セッター、中田久美(56)を女子代表監督に選任。男子代表監督には、「ガイチ」の愛称で人気を誇った中垣内祐一(54)を選んだ。が、東京五輪で女子は25年ぶりの1次リーグ敗退。男子は29年ぶりのベスト8に入るも、中垣内が監督就任直後に人身事故を起こし出はなをくじかれた。
知名度を優先した要職起用は他競技でも散見される。日本水泳連盟は2013~15年に会長を務め、20年にスポーツ庁長官を退任した鈴木大地(55)が会長に復帰。日本フェンシング協会は競技経験のないタレントの武井壮(48)が会長になった。
スポーツライターの小林信也氏はこう言う。
「スポーツ界では今、『話題になれば勝ち』という傾向が強い。いい試合をする、いいチームをつくる、ということよりも話題になることがそのスポーツの評価基準になっています。それはSNSのせいでもあり、世の中全体が商業主義的になっているせいでもある。しかし、このやり方には危険が潜む。今回のバレー協会のように、自らが抱える問題を隠すために明るい話題を提供する、ということ。問題を起こした組織ほど、明るい話題を提供したがるというのが新たな手法として定着しつつあります」
広告代理店の操り人形になるだけ
バレー協会の場合、川合会長を除く理事17人は留任。トップをすげ替えただけではという批判もある。
「川合さんは解説者として競技普及に携わってきた方なので期待はしていますが、協会自体が本気で組織を変えようとしていない可能性があります。ただタレントをトップに起用しても本質的なスポーツの普及にはつながらない。組織のトップとしてビジョンを描き、マネジメントやスポーツマーケティングを勉強している人が本当に少ないからです。そうなると結局は周り、今なら広告代理店に操られるだけ。テレビでは制作者の意図に沿う人は何度も呼ばれ、歯向かう人は二度と呼ばれない。タレントはスタッフが描いたイメージ通りに演じることに慣れているのです」(前出の小林氏)
川合は会長就任会見で、「関係者からは火中の栗を拾うようなものだと言われていた」と就任要請を3度も断っていたことを明かした上で、「火中の栗は3つも4つもあった。前任者からの引き継ぎもなく、相当力を入れないといけない」と力こぶをつくったが、協会の操り人形になるようじゃ困る。