週末オススメ本ミシュラン
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「ルポ『断絶』の日韓なぜここまで分かり合えないのか」牧野愛博著/朝日新書/2019年
日韓関係が悪化している背景にある構造を深く取材した優れたノンフィクションだ。特に韓国海軍に深刻な問題があるようだ。 <韓国海軍は(中略)「大洋艦隊」「大洋海軍」へのあこがれを示してきた。公式に…
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「父が娘に語る経済の話。」ヤニス・バルファキス著/ダイヤモンド社
著者は、最近世界で注目を集める「反緊縮」運動の旗手だ。2015年にギリシャの財務大臣に就任し、財政緊縮化を求めるEUの要求を敢然と拒否して、大幅な債務の棒引きを要求したことで名を馳せた。その著者が、…
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「豆腐屋の四季」松下竜一著/講談社文芸文庫
“時の人”の滝川クリステルが「おもてなし」とスピーチする映像が繰り返し流れる。 それを“表なし”なら“裏ばかり”じゃないかと痛烈に皮肉ったのはお笑い芸人の松元ヒロだった。権力といちゃつかないホ…
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「ヒトラーの正体」舛添要一著/小学館新書/840円+税
ヒトラーといえば、誰もが知っている人物なのだが、多くの人が彼について語る場合は「史上最悪の独裁者」「演説が上手」「ユダヤ人を迫害した」「親衛隊」「ゲッベルスという部下がいた」「愛人と一緒に自殺」「ハ…
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「50歳からのむなしさの心理学」榎本博明著/朝日新書/2019年
榎本博明「50歳からのむなしさの心理学」は、仕事中心に生きていた中年サラリーマンの実態を見事に描いている。 <50歳の声を聞くと、仕事をすることで自分が習熟していく感じがなくなるばかりか、ビジ…
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「グラビアアイドルの仕事論」倉持由香著/星海社新書
私は、ラジオ番組で共演するまで、著者のことをまったく知らなかった。「普通のグラビアアイドルだな」というのが、第一印象だった。もちろん、一般人と比べたらきれいなのだが、売れっ子のグラビアアイドルは、人…
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「殿山泰司ベスト・エッセイ」大庭萱朗編/ちくま文庫
脇役俳優として、いぶし銀のオーラを放っていた殿山泰司は、また、独特の文体をもつ名エッセイストでもあった。通称トノさんの「三文役者あなあきい伝」は私は自伝の傑作として三本指に入ると思っているが、残念な…
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「つみびと」山田詠美著 中央公論新社/1600円+税
2010年の「大阪2児置き去り死事件」に着想を得た小説だ。なぜ若い母親(蓮音)は子供たち2人を置き去りにして遊びまわった揚げ句、2人を餓死させるに至ったのかを蓮音とその母、琴音の視点から描く。また、…
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「データサイエンス入門」 竹村彰通著/岩波新書/2018年
ビジネスパーソンから「データサイエンスについて知りたいので、入門レベルの良い本を紹介してほしい」と尋ねられることがよくある。「いろいろ読んでみたけれど、竹村彰通先生の『データサイエンス入門』が専門的…
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「なぜリベラルは敗け続けるのか」岡田憲治著/集英社インターナショナル
アベノミクスで景気は拡大したというけれど、実質賃金は大きく下がり、消費税は2度も上がることになった。さらに賃金統計の不正調査問題は解決されていないし、老後の不安も拡大している。投票権の大部分は庶民が…
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「『安倍晋三』大研究」望月衣塑子著/KKベストセラーズ
「きちんとした回答をいただけていると思わないので、繰り返し聞いています」 官房長官の菅義偉にこう食い下がる望月の姿は、彼女をモデルとした映画「新聞記者」にも出てくる。スクラムを組んで力強く望月…
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「黒いマヨネーズ」吉田敬(ブラックマヨネーズ)著 幻冬舎/1300円+税
最近私は女性向け恋愛情報サイトで連載をしているが、書いていることは基本的には「男の考えていること」に加え「男はいかにバカか」である。著者と私は同年生まれで同様に大酒飲み。何度も「なに、この人、一緒に…
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「おとなの教養2私たちはいま、どこにいるのか?」 池上彰著/NHK出版新書/2019年
池上彰氏は、教養を二分節化した上で、本書の狙いについてこう記す。 <教養を学ぶことには、二つの側面があります。ひとつは、時代が動いても古びない、普遍的な考え方を身につけること。もうひとつは、ニ…
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「すごい90歳」奥村正子著/ダイヤモンド社/1300円+税
本書は、世界マスターズベンチプレス選手権で4回優勝し、いまなお現役選手を続ける90歳女性の健康法だ。 私は、楽で簡単な健康法というのを信用していない。特に、「これを食べるだけで簡単に痩せられ…
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「評伝 孫基禎」寺島善一著/社会評論社
2000年のシドニー・オリンピックの女子マラソンで高橋尚子が優勝した時、日本人選手としてマラソンでは64年ぶりの金メダルと報じられた。しかし、その64年前のベルリン・オリンピックの男子マラソンで優勝…
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「『いつでも転職できる』を武器にする」松本利明著/KADOKAWA/1400円+税
人事・戦略コンサルタントの書いた本である。タイトルだけ見るといわゆる「自己啓発書」の類いかと思われるかもしれないが、そんなことはない。自己啓発書は、前向きになれるような美辞麗句が並ぶが、本書は身もふ…
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「平成の終焉 退位と天皇・皇后」原武史著/岩波書店/2019年
21世紀になって天皇神話が強化されていることを記述した興味深い作品だ。1948年の坂口安吾の天皇論を切り口にして論じている。かなり挑発的な議論だ。 <作家の坂口安吾(一九○六~一九五五)は、一九四…
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「ライザップ式接客術」幕田純著/講談社
あらかじめお断りしておくと、今回の書評には、多分に私情が入っている。それは、本書の著者が、私がライザップでダイエットに成功したときのトレーナーだからだ。 当時から、私は彼が天才だと思ってきた…
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「志らくの言いたい放題」立川志らく著/PHP文庫
スクープしたわけでもないのに「読売」だけでなく「朝日」までが元号決定の号外を出したのには呆れた。これでは「官報」だろう。のちに自民党総裁となり病に倒れるまでのわずかな期間、首相をやった石橋湛山は戦後…
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「ヒルビリー・エレジー」J.D.ヴァンス著 関根光宏・山田文訳光文社
ドナルド・トランプ氏の米大統領選挙勝利の背景に、同書に登場する「ヒルビリー」(田舎者)の存在があったと分析された。アメリカの繁栄から取り残されたラストベルト(さびついた工業地帯)の白人の生態を示す同…