「ひと喰い介護」安田依央著
妻に死なれ、72歳で一人暮らしになった武田清がいちばん困ったのは食事だった。「株式会社ゆたかな心」という宅配の手作り弁当のチラシがあったので、1食1200円と高いのが気に入り、ためしに注文したら、うまい。配達担当者が味噌汁をサービスしてくれたのを機に、月契約にした。 担当者から武田がかつては一流会社の社員だったということを聞いた責任者の新海房子は、担当者の失言のおわびを口実に武田に会い、介護業界に新風を吹き込もうとしている自社の社長を紹介する。そして、武田が骨折したとき、選ばれた人たちのためのクラブ・グレーシアに一時的な転居を勧めた。
一見、理想的に見える介護施設を舞台にしたサスペンス。
(集英社 1700円+税)