著者のコラム一覧
堀田秀吾明治大学教授、言語学者

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

「記憶」は想像以上に曖昧…容易に真実と塗り替えられる

公開日: 更新日:

 また、アメリカの認知心理学者であるエリザベス・ロフタスは、長年、変わってしまう偽りの記憶(虚偽記憶)の生成について研究しています。一例を挙げて説明します。

 まず被験者に、交差点に進入した自動車が別の自動車に接触し、玉突き事故を起こしてしまった映像を見せます。その後、「車Aは一時停止標識を通り過ぎたとき、どれくらいの速さで走っていましたか?」と質問しました。

 実は、映像には一時停止標識はなかったのですが、意図的に質問内容に入れることで、被験者の反応を調べたのです。興味深いことに、「一時停止標識は見ましたか」と被験者に尋ねると、なんと半分以上の人が見ているはずがない一時停止標識を「見た」と答えた。まさに、虚偽記憶を生成したというわけです。

 私たちの記憶は、思っている以上に曖昧です。かつて、故・志村けんさんが「亡くなった」というウワサが流れたことがありました。海外でも似たケースがあり、1994年から1999年まで南アフリカ共和国の大統領を務め、2013年に95歳で死去したネルソン・マンデラさんが、「1980年代に獄中死した」という誤った記憶を多くの人が持っていたという事実もあるほどです。こうした単なる記憶違いではなく、多数の人が共通した虚偽の記憶を持つ現象を「マンデラ効果」と呼ぶのですが、インターネットスラングとしてこの言葉は拡散された背景を持ちます。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    広島新井監督がブチギレた阪神藤川監督の“無思慮”…視線合わせて握手も遺恨は消えず

  2. 2

    ヤクルト村上宗隆「メジャー430億円契約報道」の笑止…せいぜい「5分の1程度」と専門家

  3. 3

    1年ぶりNHKレギュラー復活「ブラタモリ」が好調も…心配な観光番組化、案内役とのやり取りにも無理が

  4. 4

    回復しない日本人の海外旅行…出入国数はGWもふるわず、コロナ禍前の半分に

  5. 5

    故・川田亜子さんトラブル判明した「謎の最期」から16年…TBS安住紳一郎アナが“あの曲”を再び

  1. 6

    「リースバック」で騙される高齢者続出の深刻…家を追い出されるケースも

  2. 7

    眞子さん極秘出産で小室圭さんついにパパに…秋篠宮ご夫妻に初孫誕生で注目される「第一子の性別」

  3. 8

    田中圭にくすぶり続ける「離婚危機」の噂…妻さくらの“監視下”で6月も舞台にドラマと主演が続くが

  4. 9

    千葉工大が近大を抑えて全国トップに 「志願者数増加」人気大学ランキング50

  5. 10

    三山凌輝活動休止への遅すぎた対応…SKY-HIがJYパークになれない理由