井岡一翔が世界4階級制覇 負ければ即引退の開き直りが奏功
陣営の作戦勝ちだった。WBO世界スーパーフライ級2位の井岡一翔(30)と同級1位のアストン・パリクテ(28=フィリピン)の一戦は、井岡が10RTKO勝ち。2017年4月以来、約2年2カ月ぶりの国内リングで日本人初の世界4階級制覇を達成した。
相手は身長で4センチ(169・5センチ)、リーチも6センチ(175・5センチ)長いハードパンチャーだが、井岡陣営はパリクテが7R以降はスタミナ切れで動きが鈍くなることを読んでいた。その7Rの激しい攻撃をしのぎ、体力を消耗した相手を10Rの猛攻で倒した。
17年末に電撃引退。同年5月に結婚した歌手の谷村奈南とは翌年11月にスピード離婚。太い絆で結ばれていたジムの会長である父とは不仲となり、昨年、新たなチームで現役復帰した。4階級制覇を狙った大晦日のドニー・ニエテス戦に1―2で判定負け。今回は背水の陣で臨んだ一戦だった。ボクシングに関する著書の多いノンフィクションライターの織田淳太郎氏がこう言う。
「井岡のボクシングは攻防一体でKOを狙うスタイルではない。プロとして魅せることより、打っては守り、判定で勝てばいいという戦い方です。この日は負ければ引退という試合。終盤に積極的に前に出たのは、相手のスタミナ切れと負ければ終わりという気持ちからでしょう。勝負以外で気になったのは、スプレーか何かで隠していた左腕の入れ墨です。8Rぐらいからうっすら見えてきた。日本ボクシングコミッションは日本人の入れ墨をリング上では認めていない。プロ意識に欠けると言わざるを得ない。日本人初の4階級制覇といっても、素直に拍手を送る気にはなれません」
次戦以降は海外でのビッグマッチを考えているようだが、米国では軽量級は低人気。井岡の「負けないボクシング」がどれだけウケるか……。