えほんやるすばんばんするかいしゃ(高円寺)築80年の建物、ガラス戸の向こうはまるで「絵本ラボ」
築80年の建物。ガラガラとガラス戸を開けると、絵本がずらりと並んでいる。カラフルではあるが、キラキラはしていないものが多そう。長新太「みんな びっくり」、土方久功「ぶたぶたくんのおかいもの」、まついのりこ「じどうしゃ くるるん」……。
飄々とした感じで店内にいらした店主、荒木健太さん(46)の話が、面白いのなんのって。ユニークな店名は「絶版になった絵本」のタイトルだそうだが、「その絵本がお好きだから?」と聞くと、「いや。店を始めるまで、読まないでおこうと決めてたし」。それはなんで?
「すでに好きなことは、やがて絶対に飽きる性格なので。“これから好きになる予感”がすることを仕事にしようとしたんです」
ほー。で、いつから?
「この近くで、古本の絵本屋でスタートしたのが22年前で、4年してここへ移って。ええっと、新刊を置き出したのは5年ほど前。そのタイミングで店を奥まで広げて、海外の絵本も置く部屋を造りました」
「扱う絵本はロングセラー、そして古本、海外ものです」
その間のことを1時間くらい説明してくれて、それを超短くすると「家事でもなんでもすごく時間がかかるタイプなので、22年間は、実質3年くらい」となる。何しろ、最初の店舗を借りたとき、表に「絵本買い取ります」の貼り紙をしただけで6カ月経ってしまったほど。
だからこそ、絵本についてああだこうだと考えてきた。「絵本は映画的。基本は絵描きが物語も考え、しかし大勢で着地させる」とも、「絵本にはSABCDEの6等級があって、お客さんと一緒に、価格的にも合うCとDを見つけ出してきた」とも、「新刊を扱い出したのは、古本にすべての役割を押しつけちゃダメと思うようになったから」とも。
「ここは、絵本ラボ──研究所ですね」と同行カメラマンが呟いた。
置くのは、新刊ではなく、選りすぐりのロングセラー。「1冊売れたら、1冊補充するので、代わり映えしないです(笑)」
例外は、昨年刊行のきくちちき「くびが にゅーと のびました」(理論社)。実はこの店は版元でもあり、他の版元では「手間と制作経費かかり過ぎ」となりそうな(筆者の感想)絵本を15年前から多数出版しており、きくちさんの手刷り木版の「いち にの さん」も出しているからだ。
うちの推し本
「きつねやまのよめいり」わかやまけん著
きつねやまに住む5匹の娘ぎつねが順に嫁いでいく。その通り道となる山々は高速道路やスキー場ができたりして、人間によって自然破壊されていく--という内容。5歳~小学校低学年対象。
「こぐま社の強い意志を感じる1冊です。初版は、こぐま社の創立間もない1968年の発行で、初めのうちは値段が高かったのですが、10年ほど前からこの値段に。ずっと、版を重ねているんです」
(こぐま社 2310円)